↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/30

026 責任感大爆発ブッコロ

 翌日、金曜日。

 大学を終えて家に帰ると、リビングでニーチャが茶を点てていた。

 俺はコイツの茶道に対する強烈な熱意と情熱を感じたので、昨晩、佐竹さんに茶道関連の店を教えてもらい、さくっと二つだけ抹茶碗を購入しておいた。

 これで、佐竹さんに貰ったのも合わせて抹茶碗は三つになる。

 国に帰った時、ニーチャとアメリアさんの分と、予備にもう一個あれば十分だろうからな。


【ヲヲ、帰ったかシロー。いま丁度茶をいれた所だ。一杯どうだ?】

「お砂糖マシマシにしとくナ」


 ニーチャにも俺にも無断で砂糖を大さじ四杯入れるボケナスおいコラ。


【レジェンド貴様アアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!】

「アヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァアアアア~ッ!?」


 ニーチャがブッコロの胸倉つかんで滅茶苦茶に身体を揺らした。

 そりゃそうなるわな。


【ニーチャ、冷蔵庫に抹茶アイスあるけど――ほら、食ってみ?】


 ワンチャンだが、ニーチャの怒りがおさまる可能性を考えて、冷蔵庫から取ってきてやった。

 ……いや、両手で恭しく受け取らんでいい。


【…………レジェンド、非礼を詫びよう】

「ウム」


 ウムじゃねえんだわこのタコ。


「で、竜崎さんとアメリアさんは?」

「ホーコは我とのお昼寝延長戦。アメリアはモンスター語の勉強ダナ」


 後になって、先に起きたブッコロがスマホのアラームを止めたのが延長戦の原因だったという事実が発覚したのはさておき。


「キョーシローも少し寝たらどうダ? 我知ってるゾ? ここ最近、毎日二・三時間くらいしか寝てないダロ?」

「俺と竜崎さんの事だけはよく見てるよなお前」


 確かに近頃、死ぬほど寝不足気味だ。

 でも、仕方ねえんだよこれが。

 来週の前期試験中は、流石にアメリアさんのモンスター語勉強に付き合ってられねえ。

 悪いけど、テストが終わるまで復習のみで机に向かってもらうつもりだ。

 となると、せめて土曜までは毎日それなりの量を教えておく必要がある。

 それに伴い、出来る限りのニーチャの要求にも応えてやらなきゃ嘘だし。

 だからといって、試験勉強もおろそかにできねえ。

 結果として、睡眠時間を削る以外選択肢がねえんだわ、残念な事に。

 俺に付き合ってか、結構遅くまで起きてる竜崎さんには申し訳ねえけどな。


「あー……明日、土曜の夜はちゃんと寝るよ。日曜にはちゃんと体調整えておかなきゃいけねえしな」

「今から寝るの駄目ナノ? 今ならブッコロ抱き枕プレゼント」


 その枕だけはぜってえいらねえ。


「俺のかわりにお前だけでも寝ててくれ」

「そういう事じゃないんだがナ……」


 珍しく渋い顔をしているブッコロ。

 俺の事を心配してくれるのはありがたいが、お前がそんな思い詰める程のモンじゃねえよ。


【そうだニーチャ。京都観光なんだけど、悪いな。再来週になるわ】

【ワッツ!? 何故だ!?】

【キョーシローは来週いっぱいテストがアル。大人しくしてなサイ】


 今の最後の台詞、竜崎さんに言われた事あるのかもしかして?


【再来週、ウムム……一週間以上も待つのか。もう少し早める事はできんのか? 残るはもう京都のゲイシャだけなんだ】

【わがままいわないノ!】


 ……これは、絶対言われた事あるな。

 腰に手を当てて人差し指を押し出して、めってやってるのが明らかに竜崎さんだし。


【分かった。来週の土曜でどうだ?】


 さくっと今晩にでも軽く計画立てて、あとは統島さんか竜崎さんにぶん投げちまおう。

 二人なら、それくらいは許してくれる筈だ。

 俺が今メインでやらなきゃいけないのは、アメリアさんへのモンスター語講座と、試験勉強なんだからさ。


【オウウェル。この群れの主はシロー。不本意だが従おう】

【群れじゃねえよ群れじゃ】

「ソウソウ、我らには出来れば召使いであって欲しいもんナ? お帰りなさいませご主人サマ♡」

「俺の趣味じゃねえっつったろそれ!」


 エナジードリンクを一本飲み干してから、アメリアさんの元へ。

 夕食を終えてからも教えて、いつも通り午前0時になってから試験勉強。

 明日は学校ねえし、今日は……まあ、寝ないでいいだろう。

 ……よし、軽くぱぱっと一時間くらいで京都観光の計画でも作っちまうか。


「……ホエ~、新幹線タッケー」

「それな。一人片道で一万五千はえぐいって。……いやまて、お前はとっとと寝ろ馬鹿野郎」


 俺の隣で机の上に顎を乗せて、俺が操作するパソコンのモニターを見ているブッコロ。


「我、ちょっとだけ京都観光興味アル」

「は? なんでお前が?」


 京都とお前の趣味、どこか合致するところあったか?

 京都にしかないマシマシラーメンメニューとかは、……ねえよな、いくらなんでも?


「京ラーメンという独特の文化があると、ハゲシファーから聞いてイル」

「あー…………祇園で食えそうだなそれ」

「……マシマシあるカナ?」

「流石にねえだろ」


 京都駅をスタート地点として、最初に向かうのはド定番の清水寺ってとこだな。

 そこから祇園花街で舞妓さん見せて、終ったら京ラーメンか?

 でもな、ニーチャのヤツ、侘び寂びがなんとなくでも分かるなら、銀閣寺とか金閣寺とか仁和寺とか五重の塔とか、そこらへんも見せた方が良いだろう。

 となると、日帰りじゃなくて泊りを検討する必要があるかもしれない。


「……ヲ? 北野天満宮って勉強の神様がいるんだナ」


 お前、今の俺の状況でそこに目がいっただろ絶対。


「テストの後になるから俺には大して関係ねえけど、……そうだな、ここも観光候補に入れておくか。ニーチャが気に入りそうなのが多そうだしな」


 ぽちぽちと北野天満宮のWEBサイトをサーフィンしていき、何の気なしにお守り関連のページへ。


「なにこれ……お守リ? お札? ……桐箱のお守りタッカ!?」


 学業札がさらにプラス500円ときたもんだ。


「お守りに2500円はちょっとなあ? ……いやでも、親なら大切な我が子に買ってやったりするとかあるか」

「ホヘエ~」


 ずいぶんと呆けた顔をしているブッコロ。

 大丈夫か? 流石にそろそろ眠いんじゃないか?


「でもまあ、これは俺らには関係ねえな」

「……ソウネ」


 とりあえず、日帰りプランと一泊プランの二つをざっくり決めてみた。

 そしたらもう時間が……夜中の二時!? やっば!


「いいかげんお前は寝ろ。俺は勉強するから、はいおやすみ」

「…………オヤスミ」


 とぼとぼと肩を落として部屋を出て行くブッコロ。

 何も言ってなくても、俺に寝て欲しいという気持ちだけは、あのちっせえ背中から十分に伝わってくる。

 お前にまで心配させちまって、本当悪いな。

 でも、それも今週までで終わらせるから。

 来週の試験期間中はちゃんと寝るから、安心してくれ。


【スマホを傾けても車は動かないゾ!?】

【ジーザス! 分かってはいるがどうしても! 身体が! 動いて! しまう!】


 翌朝、土曜日。

 朝食前のリビングで、東京観光一日目で車に興味を持っていたニーチャが、ブッコロのスマホでカーレースをプレイしていた。

 ……どうでもいい情報かもしれないが、ブッコロは朝飯を食ったら確定で寝る。

 具体的には午前十一時まで。

 もし寝なかったら、確定で昼寝をする。しかも三時間か四時間くらい。

 …………いや寝すぎだろ。


【ああもうヘタクソ! 貸セ! 我のエンジンが火を吹くゼ!】

【ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!? クレイジー!? 最下位からみるみるうちに……一位に躍り出た!? 流石レジェンド! レジェンド・ブッコロ! ゴッド・オブ・レジェンド・ブッコロ!】

【へへへ、よせヤイ】


 ニーチャを連れて来た日はどうなるかと思ってたけど、案外仲良くなったなこの二人。

 ブッコロの漫画の読み聞かせとか、二人でギャルゲーで盛り上がってる姿とかをちょいちょい見るから、こうなるのも時間の問題だったのかもしれない。


『おはよツツミ。今日は何時からモンスター語講座してくれるの?』


 目のやり場にこまるパジャマ姿のアメリアさんは、瞳も声も格好もぼけぼけーっとさせたまま聞いてきた。


『あー……朝飯食ったらにしましょう。で、夕方には切り上げる。それでいいですか?』

『……昼で終わってもいいわよ? だってアンタ、試験勉強あるでしょう?』

『すんません、ありがとうございます』


 という訳で、アメリアさんのご厚意に甘え、昼までモンスター語をマンツーマンで指導。

 そっから先は、15分だけ仮眠を取る――つもりが三時間になっちまったんで、午後四時から試験勉強開始。

 遅れを取り戻す為、夕飯を断って夜中の三時までぶっ続けで勉強してやったぞこん畜生!

 よーし、あとはもうちょい内容を確認すれば、まあいけんだろ! ……月曜の試験は。


「……クッッッッッッッッッッソねっみいー」


 明日は、……そうだな。

 ちょっと遅めに、九時まで寝てから勉強するか。

 そこから夕方までやれば、火曜か水曜の分くらいまではケアできるだろう。


「最近、ブッコロにちゃんとかまってやれてねえな……」


 ニーチャやアメリアさん関連ばっかで悪いな。

 けど、アイツなら分かってくれる筈だ。

 たとえ分かってなくても、俺が大変だってくらいは理解してるみたいだし、後はもう、大人しくしててくれれば、それでいい……。

 なんて考えている内に意識は暗闇へと落ちていった――次の瞬間。


「――――起きて! 起きて狂四郎君! ねえ狂四郎君! 起きてってば!」


 体感たった数秒で、竜崎さんに叩き起こされた。

 ただ、実際にはかなり寝ていたらしく、既に午後一時だったらしい。


「は、はははは、はひ!? な、なんですか!? どうかしましたか!?」


 いつにもなく焦った様子の竜崎さん。

 即座に緊急事態だと分かり、乱暴に身体を揺すられ起こされた苛立ちが一瞬で消えてしまった。


「これ! ブッコロちゃんの書き置き!」


 ばさり。

 彼女は一枚の紙を俺に突きつけた。

 超絶寝不足な上に寝起きなもんで、竜崎さんの言葉がイマイチ頭に入ってこない。

 ええと、多分読めって事だよな?

 とりあえず紙を受け取って、しょぼしょぼになった目を気合で開いて黙読してみる。


「…………はああああああああああああああああっ!?」


 親愛なる狂四郎様へ、ディアーブッコロより。

 我とニーチャ二人で京都観光に行ってきます。

 今日の午後六時には家に着く予定です。

 心配せず、ゆっくり寝ていてください。

 敬具。


「あんのばっかやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。