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現行法上可能な抜本的な対策は?

 では、現行法上の範囲内で「衝動的な行動を抑えられない子」がクラスに及ぼす悪影響を防ぐ「抜本的対策」は存在するのだろうか?

 結論から言えば、現状においてたった一つだけ対策となり得る(と見なされている)方法がある。

 「隔離」である。

 つまり、保護者と相談の上、集団の中での行動が学べるまでの間、普通学級ではなく、いわゆる「特殊学級」で、これらの「衝動的な子」を勉強させるのである。

 だが、この申し出に唯々諾々とうなずく保護者の方は数少ない。

 理由は明白で、一度特殊学級へと入ってしまえば、その子の「行動に変化が見られない限り」ずっとそこで学び続けることになってしまうからだ。

 特殊学級は決して悪いところではない。むしろ、周囲に溶け込むことができない社会性の乏しい子どもにとって、そこは安心して息をすることのできる場所になりうる。

 が、欠点もある。

 特殊学級の教育は「子どもの成長速度に合わせて、少しずつできることを増やしていく」という方法で行われる。

 要は、まわりの進度など気にせず、自分ができることを少しずつ増やしていけばそれでよい、ということである。

 この方法では、苦手を克服できるようになるのに多大な時間がかかる。

 その克服する時間、ゆっくりと勉強に取り組んでいては、到底受験には間に合わなくなる。

 「率先してやりたい放題する子」は、多くの場合、知的に問題がなく、むしろ好きなことには注意を集中して取り組むことが多いため、学業の成績は良好であることが多い。ただ、絶望的に空気が読めないため、人と接することが苦手で、うまく周囲と協調できないだけなのだ。

 それが分かっているだけに、こういった子の保護者は「ウチの子は頭は悪くないし、人との距離が苦手なだけ。だから、そういう性向のある子でも務まる専門職に就けてあげれば、きっとうまく社会で生きていけるはず。そういう専門職を目指すために、まずは高い教育を授けなければ」と考え、中学受験や高校受験で有名進学校を目指すことが多い。

 そして、そのような学校を受験するのならば、特殊学級では勉強量が圧倒的に足りないし、内申に響く可能性も大いにある。是が非でもそれだけは避けたいと、保護者も本人も各所に頭を下げ、通常学級での学習の継続を志望する場合が多いのである。

 加えて言うと、特殊学級は、その特殊性ゆえに、受け入れ可能な人数がかなり絞られる。いつなんどき予測不能な行動をしでかすかもしれない子どもたちの面倒を見なければならないのだから、これは当然である。

 受け入れ人数が少数に限定される以上、「重度」の子――普通学級での学習などどうやっても不可能であるか、あるいは他害傾向がひどい等の理由から、著しく他の生徒や保護者からクレームの多い子――が優先されるため、多少「好き放題行動する」子までは受け入れきれないか、あるいは、受け入れるにしても大したケアも受けられず、そのまま放っておかれることが多い。

 こういった事情から、「隔離」はあまり成功しないのである。

 さらに、たまたま「率先してやりたい放題する子」の保護者が物分かりのよい方であり、たまたま本人も有名進学校の受験を志しておらず、たまたま特殊学級側でも受け入れの余地がある、という偶然が重なり、「隔離」することに成功したとする。

 迷惑をこうむっていた生徒も保護者も先生も一安心、さあこれで率先して好き放題する子がいなくなったから、子どもたちの授業態度も好転するはず、と大いに喜び、期待することと思う。が、果たして授業の状況は好転するのだろうか。

 残念ながら、多くの場合、好転しない。

 なぜか。「率先してやりたい放題する子」が、他の子達に、既に「見本を見せて」しまっているからである。

 あの子はものすごく自分勝手にふるまっていたから、特殊学級へ行かされた。いい気味だ。僕は・私はあそこまで勝手なことはしない。けれど、目をつけられない程度に騒いだぐらいでは怒られないのだから、そのぎりぎりのところまでは騒ごう。そうやって、楽しく学校で過ごすことにしよう!

 一番目立つ子がいなくなるまでの間に、他の子がそんなふうに考えるよう、「洗脳」されてしまうのである。

 その結果、「やりたい放題する子」がいなくなっても、第2第3の「大騒ぎの中心となる子」が出現する。そして、一人の子を注意するうちに他の子が退屈して騒ぎ出し、その子を注意するうちに、また他の子が騒ぐという、手のつけられない状況を作り上げていってしまうのである。

 「困った子がいるせいで授業が遅れる、あの子さえいなくなれば平和になるのに」と思い込んでいた保護者・教師の方には絶望的に聞こえるかもしれないが、一度「授業中騒いでもよい」と思い込んでしまったクラスをまともな状況に戻す方法は、現行法で許されている範囲内には、残念ながら、ほぼ存在しないのである。


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