原因は「生徒の方の授業を受ける準備ができていない」こと
学校でも学習塾でも、最も効率よく知識を吸収し、我がものとする方法は同じだ。教師・講師の話を集中してよく聞き、板書をしっかりノートに写すこと。これである。
だが、今の子どもたちの多くは、これができない。
いや、入学・入塾当初はできていた子も多いのだが、周囲に感化されていくうち、どんどんできない子が増えていく、といった方がより正確である。
子どもに「学習態度を身につけさせ、学力を向上させる」目的で行う授業そのものが、学力をどんどん低下させる方向へと子どもたちを導いているのである。
なぜ、そんなバカなことが起きてしまうのか。
きっかけはごくごく単純だ。
今の子ども達の多くは、「のびのびと」「自分のやりたいことを思う存分やらせてもらいながら」育つ。それでも大多数の子どもは、入学・入塾したばかりの頃は「空気を読んで」、それなりにまじめに授業を受ける。
だが、困ったことに、中には自分の欲求を全くコントロールできない状態で入学・入塾してくる子どももいるのである。
こういう子達は、本当に自由だ。
空気を読む訓練をしておらず、その時その時の自分の欲求にとことん忠実に行動する。授業中であるにもかかわらず、「おもしろい」事を思いついたその瞬間、となりの子に大声でしゃべりかけるし、教師・講師がどれほど大事な話をしている時であろうとも、いきなり大声でその話をさえぎり、「トイレ行ってきます!」と宣言して立ち去ったりする。
教える側は、彼らがそのような行動をするたび、いちいち注意し、そういうことをしてはいけない、と言い聞かせようとする。
だが、こういう子どもたちは、生まれてこの方ずっと、「自分のやりたいことを思う存分やってみなさい」と、自分の思い通りに行動することを奨励され続け、その上「そのままのあなたでいいのよ」と周囲から自分自身を肯定され続けている。その結果、「自分の思い通りに行動している」自分は「なにひとつ間違ったことなどしていない」とごく自然に考えるようになってしまっている。そのせいで、自分の行動のなにが悪いのか、いくら注意されたところでさっぱり理解できない。むしろ、「わけの分からないことをいって、自分の自由を制限しようとする先生がおかしい」と思い込み、自分の行動を改めることなく、何度も何度も同じ行動をくり返す。
法律により、手厳しく叱りつけることも、怒鳴りつけることも、ましてや体罰を加えることも禁止されているため、教える側はただひたすら、根気よく同じような注意をくり返すことしかできない。だが、「自分の正しさ」を確信している子どもはもちろん、そんな「先生の言い聞かせ」などへっちゃら、完全に無視して思うとおりに行動するばかり。
これだけでも非常に困った状況なのだが、この状態がしばらく続くと、さらにまずい状況が生じてくる。
一握りの「フリーダムな」生徒が、傍若無人に振る舞う姿を見ているうち、それまでは真面目だった他の生徒の態度にも、徐々に変化が現れるのだ。
アイツは、あれだけやりたい放題してるのに、教室から出て行かされたり、怒鳴られたりとかすることもなく、相変わらずおんなじ事をくり返してる。先生も、一応注意はするけど、それだけだ。あれ?ひょっとして、ああやってやりたい放題するのって、そんなに悪いことじゃないのかな?だったら、我慢して黙ったまま口を閉じて真面目に話を聞いてるのって、馬鹿馬鹿しくない?アイツがやってるみたいに「僕も・私も」好き放題して、一体なにが悪いの?
多くの生徒が、このように考えるようになっていくのである(実にもっともな考えだ)。
こうして、「先導者」に従い、はじめはおそるおそる私語したり、となりの子にこっそりちょっかいを出したりしていた子が、だんだん味を占め、どんどん大胆に、ずうずうしい態度をとるようになっていく。
皆がそのように不真面目な態度をとれば取るほど授業進度は遅れ、結局は自分たちが損害を受けることになるのだが、小中学生程度の洞察力ではそこまで考えることなど、そうそうできない。将来のことはさておき、今楽しければいいじゃないか、とばかり、どんどん大声でさわぎ、笑い、立ち歩き……教師・講師は、その収拾に追われることになる。授業進度が遅くなるのも、1回の授業で得られる知識が減るのも、当然なのである。




