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第三部 異郷の声 79 違う祈り方

最初の村の祈りは、エリゼーの知る礼拝と同じではない。

そこにはそこで暮らす人の時間がある。

挿絵(By みてみん)

雨は夜明け前に上がった。

借りた別棟の床を掃き、ハインツは緩んだ鍬の柄を締め直した。

使った器を戻してから四人は出発した。


納屋の女は裏の道へ出る近道を教えたが、川に近い場所は避けるよう念を押した。


「水が引いたように見えても、土はまだ柔らかいからね」

「気をつけます」

ヘルマンは道順を確かめ、四人は礼を言って歩き始めた。


午後、家々の屋根が見えるようになった。

斜面に沿って畑が重なり、低い石垣のあいだから細い道が村の中心へ伸びている。


入口には木を削った小さな標があり、その下に乾いた草の束が結ばれていた。


「村に着きました」

ヘルマンが言った。


「ここでは、まず広場へ行って長く滞在することを伝えましょう。勝手に空き家へ入ったりしてはいけません」


広場では、年配の男が木桶を直していた。

ヘルマンが挨拶して宿の相談をすると、男は手を止めて四人の荷を見た。

「よその人を泊める場所はあるが、今日は夕方まで家の者が戻らない。先に水を飲んでいきなさい」

「ありがとうございます」


井戸の近くでは、数人が小さな石を並べていた。

石の上には白い花が一輪ずつ置かれ、子どもが濡れた花弁をそっと整えている。

エリゼーは立ち止まった。

「何かの祈祷ですか」

男は頷いた。


「帰ってこられない人を思う日が近いから、その支度だよ」

「手伝ってもいいですか」

「触る前に、どこへ置くか聞いてくれるなら」


ジュリアは子どもが置いた花に手を伸ばさず、隣で落ちた葉を拾った。

ハインツは石を運ぶ大人に声を掛け、頼まれた分だけを運ぶ。

ヘルマンは、村で昔から使う呼び名を確かめていた。


***


夕刻が近づくと、人々が広場の端へ集まった。


礼拝堂のような建物はない。

井戸と大きな木があるだけだった。

祈りを導くのは、石を並べていた年配の男でも、声の大きい者でもなかった。


年老いた女が、木の幹に手を当ててゆっくり目を閉じた。

ほかの者たちは、同じように目を閉じる者もいれば、遠くの山を見つめる者もいる。

子どもたちは母親のそばで、手を膝に置いていた。


祈りの音は、エリゼーの覚えている教会の定型とは違っていた。


短く息を吸い、長い沈黙を挟んで、次の声へ移る。

途中、誰かが言葉を忘れたように黙っても、ほかの人は急がせない。

誰も目に見える魔法を起こさなかった。


しかし、祈りが終わった後も、広場にはしばらく静けさが残っていた。


エリゼーは石の冷たさを足裏に感じながら、人々の間に立っていた。

自分の知る神の名前を思い浮かべることはできる。

だが、この土地の人が何を思って祈ったのかを、勝手に同じだとは言えなかった。


風が木の枝を動かし、葉の間から夕日が落ちてくる。

彼女には、その空気がただの空白とも感じられなかった。


祈りを終えた年老いた女が、四人へ近づいた。


「遠くから来た人だね」

「はい」

エリゼーは答えた。


「あなた方の祈りを、見せてもらいました」

「見えたかい」

女は少し笑った。


「声がよく聞こえました」

「なら、それでいいよ。ここでは声に出さない人もいるから」


ジュリアが一歩進んだ。

「その違いを、後で教えていただけるでしょうか」

女は彼女を見た。


「今夜は皆で食べる日だ。聞くなら食べてからにおし」

「はい。ありがとうございます」


子どもが一人、石の隙間に落ちた花弁を拾い上げた。

「これはどこに置けばいいの」


年老いた女は、子ども自身が選んだ場所へ置かせた。

「そこにしていい?」

「いいよ。その人を思うならね」

エリゼーには、誰のための花か分からなかった。


だが子どもにとっては、場所を選ぶことが祈りの一部なのだろう。

その意味を知らない自分が、何も尋ねずに同じ場所へ花を置くのは違う気がした。


男が空き部屋の用意ができたと知らせに来た。

そこは一家の離れで、清潔な敷物が畳まれていた。

四人は荷を置き、使ってよい場所と、勝手に開けてはいけない扉を確かめた。


「ここは客のためにある部屋だけど、人の家だからね」

男が言う。

「それは忘れません」

ハインツは答えた。


夕食までの間、エリゼーは窓から広場を見ていた。


子どもたちは石のそばを走り回り、年配の女は器を並べている。

祈りが終わったからといって、暮らしが終わるわけではない。

あの場所へ集まった人々には、まだ洗う器があり、明日の畑があり、帰ってこない人の名前がある。


ハインツが扉から顔を出した。

「食事の準備を手伝ってほしいそうだよ」

「行きましょう」

エリゼーは立ち上がった。


建物の中へ入ると、豆を洗う水の音が聞こえた。

若い男が桶の縁から小石を取り除き、女が火の具合を見ている。


ハインツは荷物の置き場所を尋ね、ジュリアは器を出す棚を教えてもらった。

エリゼーは自分が客として何をしてよいか、いちいち聞かなければならないことに気づく。

教会では誰が何をするか知っていた。

ここでは、知らないことを認めるところから始まる。

見知らぬ祈りの意味を尋ねる前に、いま必要とされる手があった。

最初の村に到着しました。

祈りの違いを、正誤や優劣ではなく、土地の生活と結びつけて描きます。


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