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第六部「異なる岸の記録」 222 船長の朝

朝食を終えた四人は、また甲板へ上がる。

自分たちを運ぶ船について、まだ知らないことが多い。

船長は、仕事の合間に短い言葉を返す。

甲板へ出ると、ハインツはまず上を見た。

早朝にニルスがいた場所へ目をやったが、今は同じ姿を見つけられなかった。


「あそこだった?」

ヘルマンが尋ねた。

「うん。声は思ったより届いたよ」


四人が見上げていると、そばで「船長」と呼ぶ声がした。

振り向くと、船員の報告を聞いている人がいた。

相手が離れてから、ヘルマンが挨拶した。


「少し、お聞きしてもよろしいですか」

船長は四人を見た。

「今なら、少し」


ヘルマンは上を指した。

「三本とも、同じように帆を使うのですか」


船長は彼の指の先を確かめた。

「同じではありません。アルシオン号は三檣のバーク型です。帆の向きや働きは、それぞれ違います」


ジュリアはマストを見比べた。

遠くから一つの大きな白さに見えたものが、近くでは幾つもの部分に分かれている。

詳しい名前を一度に覚えようとすると、話を聞く余裕がなくなりそうだった。


「全部を広げれば、速くなるわけではないんですね」

ハインツが言った。

「多ければよい、というものではありません」

船長は答えた。

「そのときの風と、船の状態を見ます」


エリゼーは揺れる帆を見た。

昨日、風があれば船は出るのかと考えたことを思い出す。

風は必要でも、それだけを見て判断するわけではない。


「夜も、同じように見ているのですか」

ヘルマンが尋ねた。

「人は交代します。見ている仕事は続きます」


船は眠らないと言われたのだと、ヘルマンが三人へ伝えた。

船長は短く頷いた。


「皆さんは休んでください。こちらの仕事まで起きて見ている必要はありませんよ」


その言葉に、四人は少し笑った。

ジュリアは、知らなければならないことと、任せてよいことの境を考えた。

船員の仕事を理解したいと思っても、同じ責任を負うわけではない。


「ヴェリオスには、いつごろ」

尋ねかけて、彼女は言葉を整えた。

「到着の見込みは、今、分かりますか」


船長は海の方へ目を向けた。

「今ここで、日を約束することはできません。見込みを伝えられるときに、案内します」


ジュリアは頷いた。

教会の任務があると付け足しても、風や船の条件は変わらない。

彼女は単に、知らせを待つ旅客として礼を言った。


ハインツが足の位置を変えた。

船長はその動きを一度見たが、事情を尋ねなかった。


「甲板に出るときは、通る場所と作業を見ていてください。分からなければ、近くの者へ」


四人は頷いた。

船長の向こうで、別の船員が待っている。

ヘルマンが気づいて挨拶を切り上げた。


船長は四人へ軽く会釈し、仕事へ戻った。

さっきまで自分たちに向いていた声が、すぐ別の用件へ変わる。

ジュリアはその切替を見送り、上を見た。


「名前を聞いただけでは、まだ分からないわね」

エリゼーが言った。

「でも、全部が同じではないと分かった」

ヘルマンが答えた。


ハインツは、風を受ける帆を眺めた。

「僕たちが歩いていなくても、進んでいるんだね」


当たり前のことのようで、ジュリアには新しく聞こえた。

誰かが眠っていても、誰かが話していても、別の人の仕事が船を進めている。


エリゼーがハインツへ顔を向けた。

「少し、部屋へ戻りましょうか」

「うん」


ヘルマンも伸びをしかけ、頭上の仕事に気づいて手を下ろした。

ジュリアはその仕草を見て、昨夜の食堂で笑ったときと同じ顔になりそうだった。

彼と目が合う前に、彼女は帆へ視線を戻した。

船長との会話で、四人は船を動かす仕事の一端に触れました。

到着の日はまだ約束されていません。

四人はそれぞれの時間へ戻り、船の仕事は続きます。

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