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第六部「異なる岸の記録」 221 朝食の五つ目の席

朝食の卓には、まだ知らない人の席もある。

湯気の向こうから声をかけられ、四人は顔を上げる。

新しい名前は、食べ物の話とともに届いた。

ジュリアが食堂へ入ると、ヘルマンはもう席にいた。

彼は彼女を見て少し笑い、隣の場所を示した。


「眠れた?」

「はい。戻ってからは」

「僕も」


それだけの会話なのに、ジュリアは夜中の林檎の味を思い出した。

席へ座ると、昨日より彼の肩が近い気がした。

卓もベンチも変わっていない。


エリゼーとハインツが遅れて来た。

頬が風で赤くなっている。

二人は向かいに座り、甲板の上にいたニルスの話をした。


ジュリアは相槌を打ち、彼らが互いの顔を見る回数の多さに気づいた。


朝食には、温かな乳粥が出た。

穀粒の残る白い粥と、干し李を煮たものが別々の器に盛られている。

黒麦パン、ゆで卵、水も置かれた。

オットーは李を好みで添えるよう伝え、次の卓へ向かった。


ヘルマンは煮た李を多めに入れた。

ジュリアが見ると、彼は少し笑った。

「今日は、甘くできる」

「入れすぎなければ」


彼女も笑い、少しだけ自分の器へ加えた。

濃い色が乳粥に混じり、匙で動かすたび違う模様になる。


「そこ、空いていますか」


女性が器を持って立っていた。

ヘルマンが席を詰める。

「どうぞ」


女性は礼を言って座り、器を卓の縁の内側へ置いた。

煮た李を一口食べ、すぐにパンへ手を伸ばした。


「酸味が、思ったよりありますね」

彼女が言うと、ジュリアは顔を向けた。


「私は、それが好きです」

「私も。パンにつけると、よさそうだと思って」


ヘルマンが自分の粥を見た。

「全部入れる前に、聞けばよかった」


女性が笑った。

エリゼーも笑い、まだ残していた小皿を少し中央へ寄せた。

自分の分は取ったからと伝えると、女性は少量をパンに添えた。


「私はマレーナ・ヘルツです」

彼女は食べる前に名乗った。


四人も順に名前を伝えた。

ハインツ、エリゼー、ヘルマン、そしてジュリア。

マレーナは一人ずつ顔を見た。


「一度では、間違えるかもしれません」

「また言いますよ」

ヘルマンが答えた。


その自然な返事を聞いて、ジュリアは水の器を持ち上げた。


昨夜、自分と話したときも彼はこうして笑った。

今は初めて会った人にも同じ顔を向けている。

当然のことなのに、ほんの少し気になった。


「昨夜も食堂で召し上がりましたか」

マレーナが尋ねた。


「ええ。塩豚と豆の煮物を」

エリゼーが答えた。

「よく温まりました」


「朝になると、また違うものが欲しくなりますね」

マレーナは乳粥をすくった。

「私は、林檎も好きでした」


ジュリアとヘルマンが、一瞬だけ目を合わせた。

夜食の干し林檎のことを考えたのは、自分だけではないらしい。

ヘルマンは何も言わず、また粥へ目を戻した。


ジュリアはその沈黙を、少し大切なものとして受け取った。


ハインツがゆで卵の殻をむいていた。


エリゼーは自分の殻を一か所へ集めながら、彼の器が滑らない位置へ寄せた。

マレーナはその手元を長く見ず、パンを割った。


「このパン、汁に浸すのと、そのまま食べるのでは違いますね」

「そのままだと、噛む時間が長くなって」

ヘルマンが言った。

「僕には、話をやめるよい理由になる」

「お話し好きなのですか」

「たぶん」


マレーナが笑った。

ジュリアも笑ったが、今度は彼の方を見なかった。

自分の器の底に残った李の色を、匙でゆっくり混ぜた。


朝食を終えるころには、五人の声は初めより自然に重なっていた。

マレーナは先に席を立ち、四人へ挨拶した。

ジュリアも彼女の名を呼んで返した。


名前は、もう覚えていた。

覚えようとしなくても、彼女がヘルマンへ向けた笑顔と一緒に残っていた。

マレーナ・ヘルツとの初対面は、朝食の卓で始まりました。

味の好みから、声の調子や笑い方も少しずつ分かります。

ジュリアには、昨夜とは違うヘルマンの顔も見えました。

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