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第六部「異なる岸の記録」 217 夜の行き先

夕食のあと、四人は別々のところへ向かった。

夜風を求める者、働く人を見る者、窓の前に残る者。

同じ船の夜が、それぞれに始まる。

エリゼーは部屋へ戻る前に、ハインツを見た。

「少し、風に当たらない?」

彼は頷いた。

「僕も、外へ出たいと思っていた」


上着を整えて甲板へ上がると、食堂の匂いが遠ざかった。

通行と作業の邪魔にならない場所を船員に確かめ、二人は並んだ。

夜の水は、昼より近いようにも、深いようにも見えた。

光を返すところだけが浮かび、次の瞬間には暗くなる。


「寒くない?」

ハインツが尋ねた。

「今は、気持ちがいいわ」


エリゼーは袖口を押さえた。

食堂で隣に座っていたときには、彼の肩が近いことをあまり考えなかった。

ここでは暗さのためか、衣服の触れる距離がはっきり分かった。


「あの部屋、戻る場所になったね」

彼が言った。


エリゼーは頷いた。

部屋へ戻ることが、彼と二人になることだった。

今までは、話をやめる時機を選べば離れられた。

今夜は眠るところまで、相手の気配がある。


「まだ、少し落ち着かないわ」

彼女が言うと、ハインツは顔を向けた。

「僕も」


二人は笑った。

夜風が間を抜ける。

エリゼーは半歩だけ彼の近くへ寄った。

ハインツは動かず、その距離を受け入れた。




ヘルマンは、甲板で働く船員の手元を見ていた。

昼よりも声が短く聞こえる。

暗い中でも、何をするのか分かっている人たちは迷わず動いた。


邪魔にならないところを尋ねると、一人が場所を示した。

「そこなら。呼ばれたら空けてください」

ヘルマンは頷き、足を止めた。


人の仕事を見ていれば、時間が過ぎる。

それは好奇心でもあり、一人部屋へ戻るのを少し延ばしたい気持ちでもあった。

船員が結び目へ手を入れ、確かめて離す。

ヘルマンは、自分ならどこまでできるだろうと考えた。


しかし、今は手を貸してよい仕事ではない。

必要なら呼ばれる場所に立ち、見ているだけにした。


少し先に、エリゼーとハインツがいた。

声は聞こえないが、顔を寄せて話している。

ヘルマンはそちらへ行かず、船員の方へ視線を戻した。


「夜も、ずっと誰かが働いているんですね」

手の空いた相手へ言うと、短い返事があった。

「船は、眠りませんから」


ヘルマンは空を見上げた。

自分が部屋で横になったあとにも、この足音は続くのだ。

一人でいる部屋が、少し違って思えた。



ジュリアは自室の椅子へ座っていた。

窓は閉じている。

硝子に灯りが映り、外より先に自分の顔が見えた。

少し顔を寄せると、暗い水に光の筋が走った。


食堂でのヘルマンの声を思い出した。

もっと甘くても好きだと言ったとき、彼は悪びれずに笑っていた。

自分は味を説明するように返した。

あれでは、甘いものを好む彼が間違っていると言ったようではなかったか。


そんな小さな返事を、今さら考えている。

ジュリアは窓から離れた。

卓には書く場所がある。

けれど、これを紙に移せば落ち着くとは思えなかった。


廊下で足音がした。

隣の扉の音かと耳を澄ませたが、そのまま遠ざかった。

ヘルマンはまだ戻っていないらしい。


ジュリアは自分が誰の帰りを聞こうとしていたのかに気づき、椅子へ座り直した。

今夜は一人で休める。

望んでいたはずの静けさが、今は少し広すぎた。


彼女は灯りから目を外し、もう一度船窓を見た。

映る顔の輪郭が、船の動きにつれてわずかに揺れていた。

ハインツは袋を預け、自分の足で歩きました。

頼む範囲を伝えても、言い方への迷いまではすぐに消えません。

四人は船上で、少し位置を変えています。

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