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第六部「異なる岸の記録」 216 湯気のある卓

部屋を出ると、食べ物の匂いがした。

船の暮らしは、寝台や荷棚だけでは始まらない。

四人は、湯気の上がる卓へ並ぶ。

食堂へ入る前に、ヘルマンの腹が鳴った。

ジュリアがこちらを見て、すぐに目を逸らした。


聞こえなかったことにしてくれたらしいが、彼は笑った。


「匂いで、思い出した」

「私も、お腹がすいています」

彼女が答えた。


旅客食堂には長卓が並び、ベンチが床へ固定されていた。

卓の縁は少し高く、器が滑り出すのを防ぐようになっている。


窓から入る光は弱まり、壁の覆い付きの灯りが木の表面を照らしていた。

厨房からは、匙の当たる音がする。


「四人なら、こちらへどうぞ」

配膳していた男が言った。


「オットー・ケルンです。食事のことで困ったら、私に声をかけてください」


エリゼーが礼を言い、四人は席を選んだ。

ハインツが右腕をぶつけにくい端へ座り、彼女が隣へ入る。

向かいにはジュリア、その隣にヘルマンが腰を下ろした。

膝の下にも、船が動く感触があった。


深い器が置かれると、白豆と大麦の匂いが近くなった。

小さく切った塩豚が混じり、煮汁の表面に薄く脂が光っている。

黒麦パンは厚く切られ、別の小皿には煮林檎が盛られていた。


「大麦と白豆の塩豚煮です。今日は温かいうちに」

オットーが言った。


ヘルマンは匙を入れた。

大麦が汁を含み、豆は形を残しながら柔らかい。

塩気が先に来て、そのあとに野菜の甘さが残った。

彼はすぐ次の一口をすくい、熱くて息を吐いた。


ジュリアが笑いをこらえていた。

「そんなに急がなくても」

「思ったより熱かった」


彼女も口をつける前に、匙の上へ息を吹いた。

ヘルマンはそれを見て少し得をした気分になった。

失敗が一人分、役に立ったらしい。


ハインツは左手でパンを持ち、器へ浸していた。

エリゼーが自分のパンを割りかけ、彼の手元を見てやめた。

代わりに、パンを置いた皿を二人の間へ少し寄せる。

彼は短く礼を言った。


「部屋は、落ち着いた?」

ヘルマンが尋ねた。


「まだ、荷を置いたばかりよ」

エリゼーが答えた。

「でも、窓があるのは嬉しいわ」


ジュリアも頷いた。

「私のところは、卓の横から光が入ります」

「僕のところは、椅子を動かすと通れなくなる」

「それは、私の部屋もです」


同じような狭さを話すだけで、ヘルマンは一人部屋へ戻ることが少し楽しみになった。

隣にいる彼女も、椅子の置き方を考えたのだ。


オットーが水を足しに来た。


「夜中に腹がすいたら、あちらの棚を使ってください。パンとチーズ、干し林檎、それに飲み水を置きます。厨房には入らず、火も使わないで」


ヘルマンは思わず棚を見た。

ジュリアも同じ方を向いていた。

二人の目が合い、今度は二人とも笑った。


「昼の食事を外へ持っていきたいときは、声をかけてください。運べる器を出します。ただし、食事は船員の仕事の邪魔にならないところで」

オットーは続けた。


エリゼーが頷いた。

ヘルマンは、甲板で風に当たりながら食べるところを思い浮かべた。

船室にこもる時間ばかりではないと分かり、肩が少し緩んだ。


煮林檎は、匙を入れるとほろりと崩れた。

塩気の残る口に、柔らかな酸味が広がる。

ジュリアは一口食べ、しばらく皿を見ていた。


「甘すぎなくて、好きです」

「もう少し甘くても、僕は好きだな」

ヘルマンが言うと、彼女は小さく首を傾けた。

「それでは、別の味になります」

「それもそうだ」


違う好みを聞きながら、同じ卓で食べている。

それは、船へ乗ったことよりずっと普通で、今のヘルマンにはありがたいことだった。


器の底が見えるころ、外の光はさらに弱くなっていた。

四人はすぐには席を立たなかった。

食べ終えた体に、船の揺れがゆっくり戻ってきた。

温かい食事を終え、四人は船の一日の過ごし方を少し知りました。

同じ卓でも、好きな味はそれぞれ違います。

食堂には、夜に戻ってこられる小さな棚もあります。

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