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第五部「交易都市編」第四幕「四人の距離とそれぞれの選択第185章 航路の紙片

港に出る前から、道はいくつも分かれている。

線を引く人間には、その線の先を見ている人にまで届くようには決められない。

ヘルマンは旅舎の卓に、大きさの違う紙を四枚並べた。


一枚はエストラーヴから周囲の道へ続く古い見取り図。

一枚は水路の位置を大まかに示した写し。


残りは、港で聞ける手続きと運送の条件を覚え書きしたものだった。

どれも、これからの旅を決めるには足りない。


足りないことがはっきり分かるまで、彼はずいぶん時間を使った。


ジュリアが紙の端を押さえた。


「これとこれでは、同じ場所が違う位置にありますね」

「測り方が違うんだと思う」

「思う、ですか」


「そう。だから、どちらかを正しい地図にしてはいけない」

自分で言いながら、ヘルマンは奇妙な気分になった。


かつて人に道を尋ねられたときは、迷わず答えることが案内人の役目だと思っていた。

今は、答えが一つに決まらない場所を示す方が役に立つこともある。


ハインツが椅子を引いて座る。


右腕を庇うように動いたのを、ジュリアは見ないふりをした。

本人が求めなければ手伝わないという決まりは、まだない。


ただ、最近は誰も、彼の動きからすぐ次の行動を奪わないようにしていた。

「陸を行く場合は、どうなるんだ」とハインツが尋ねた。


ヘルマンは古い見取り図に指を置いた。

「いくつか道はある。でも、途中の状況は分からない。船の方が楽だとも、まだ言えない」


エリゼーは紙束を見下ろした。

「水路を第一候補にする話は、前にもしたわね」

「したよ」とヘルマンは答えた。


「でも、最初にそう決めた理由を、もう一度確かめたい」

「決定を疑うため?」

「決定の中身を忘れないため」

四人はしばらく黙った。


海を行くということと、今すぐどこかの船に乗れるということは違う。

その差は誰もが知っているはずだった。


けれど紙を前にすると、一つ線があれば、その先まで行ける気がしてしまう。


ヘルマンは水路の写しを畳んだ。


「この辺りは荷物が動くための場所なんだ。私たちは、そこへ入れてもらう立場になる」

「入れてもらうという言い方は、少し卑屈じゃない?」

とハインツが言った。


「かもしれない。でも、この旅の先を、港の、船に乗ることに置きたくないんだ」

ジュリアが頷いた。


「運ぶ側には運ぶ側の約束がありますね」

エリゼーはその言葉を聞き、かつて修道院で他人の願いを受け付けた窓口を思い出した。


願いが強ければ順番を変えてよいわけではなかった。


昼を過ぎ、四人は紙を一枚ずつ持って外へ出た。


水路に近い道から、荷車の流れを眺める。

港へ向かう荷には、古い布を被せた木箱もあれば、まだ切り屑の付いた板もあった。


人の旅は、それらの荷と同じ速さでは動かない。

荷を急がせる理由と、人を休ませる理由が、一つの道で競い合っているように見えた。


道端に立つと、ジュリアが尋ねた。

「どこまで聞いてよいでしょう」

ヘルマンは答えに窮した。


港の人が皆、通りすがりの旅人の質問に答える義務を持つわけではない。

「仕事の邪魔にならないところまで、だろうね」

「それも、聞かなければ分かりませんね」

ジュリアの声には責める色がなかった。


ヘルマンは、自分の曖昧さを皆が支えてくれていると感じ、すぐにそれを取り消した。

曖昧さは、まだ解決されていないだけだ。


夕方、旅舎の卓で紙を並べ直した。


ヘルマンは候補として既に調べようと決めている便の欄に、小さな丸を付けた。

丸を付けたことで、船に乗る権利が得られるわけではない。


「この便について、条件を確かめる」と彼は言った。

「ほかの船は見ないの?」とエリゼー。


「必要なら見る。でも、今は何も調べ終えていないから」


ハインツが、紙の端の空白を指した。


「ここには何を書くんだ」

「分からないこと」

「ずいぶん広いな」

ヘルマンは笑った。


「いまのところ、一番正確な場所だから」


その夜、地図を片づけると、卓に四角い跡だけが残った。


紙を重ねて押さえていた分だけ、木の色が違って見える。

道の話をした証しは、何も決められなかった印にも見える。


それでもヘルマンは、紙を広げたことを悔やまなかった。


線を一本引く前に、そこを通ることの意味を他の三人と話せた。

案内人として、その会話を目的地より先に持っていたいと思った。

海路を第一候補とする既定の方針を保ちつつ、経路・寄港地・所要日数は確定させていません。

航路図は比較のための資料であり、乗船の確約ではありません。


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