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五部「交易都市編」第四幕「四人の距離とそれぞれの選択 178 休むと言う日

休みたいと告げることが、役に立たない人間になる宣言のように思える日がある。

挿絵(By みてみん)

ハインツは旅舎の朝食で、誰もまだ今日の用件を話し始めていないうちに言った。

「今日は、外へ出るのをやめたい」

自分の声が思ったより低く、席にいる三人の顔が同時に上がった。

驚かれると、取り消したくなる。

彼は杯の取っ手を握り、続けた。

「何かが急に悪くなったわけじゃない。腕を休ませておきたいだけだ」


ヘルマンが頷いた。

「じゃあ、港の道をもう一度見に行くのは別の日にしよう」

「君たちだけで行ってもいい」

「それも考えるよ」とヘルマンは言った。

すぐに全員の予定を変えたと決めつけないところが、かえってハインツを落ち着かなくさせた。

彼の願いを尊重してくれているのか、それとも自分抜きの一日が容易に想像できるのか。


ジュリアは手帳を開いていた。

「私は午後に少し書きものをしたいので、今日は遠くへ出なくても困りません」

その言い方を聞き、ハインツは少し胸が軽くなった。

自分が休むために皆が我慢するのではなく、ほかの人にもほかの用事がある。

当たり前のことなのに、傷を持ってからは忘れやすかった。


エリゼーだけが、すぐには返事をしなかった。

水を注ぎ足す手が止まり、次にそっと杯を置く。

「休むのはいいことだと思う」と言った。

ハインツは目を伏せた。

「いいことにしなくてもいい」

「そうね」

その返事の小ささに、また苛立ちそうになる。

昨日までなら、心配されたことへ反発して済んだ。

自分から申し出た今日は、受け取られ方まで相手に任せるしかない。


部屋へ戻ると、彼は窓際の椅子へ腰掛けた。

朝から休むと決めたのに、何もしない時間を持て余す。

下の階では皿を洗う音がし、誰かが階段を二段ずつ上っていった。

音だけで人の働きが分かるほど、彼は宿に慣れてきた。

それなのに、音を聞くたび自分だけが時間から取り残されたように感じる。

何もしていないことを見つかる前に、何か小さな仕事を探したくなるのだった。

右腕の状態を確かめるように指を開き、閉じる。

痛みがないかを探す仕草さえ、休んでいるとは思えなかった。


何か読むものを探そうと立ち上がり、すぐ座り直した。

読みたいわけではなかった。

暇を埋めるため本を開くことまで休息と呼んでよいのか、と自分へ尋ねてしまう。

休み方を上手にしようとしている、と気づくと、彼は一人で苦笑した。


誰かが戸を叩いた。

「入ってもいい?」

エリゼーだった。

彼が答えると、彼女は盆を持たず、空の手で入ってきた。

「何か持ってこようかと思ったの。でも、頼まれていないからやめた」

ハインツは苦笑した。

「それをわざわざ言いに来たの?」

「ええ。言わないと、あなたには分からないでしょう」

少しきつい声だった。

彼は彼女の苛立ちを聞き、かえって安心した。

心配を消し去るための練習ではないのだ。


「水はほしい」とハインツが言った。

「じゃあ取ってくる」

エリゼーはそう答えたが、戸を開ける前に振り返った。

「本当は、あなたが休むと言ってくれて嬉しい」

「嬉しい?」

「私のためじゃなく、あなたが自分で言ったから」

それは正しい解釈かもしれなかった。

しかし彼は、別のことも言ってほしくなった。

「君が喜べることじゃなくて、俺が疲れたことを、疲れたままで置いておいてくれないか」


エリゼーは少し顔を赤くした。

「そうね。ごめんなさい」

すぐに謝られると、彼も謝りたくなる。

二人はその場で黙り込み、どちらからともなく小さく笑った。


昼には旅舎の階下で食事の音がした。

ハインツは食堂へ降りず、窓辺で外の人を見ていた。

仕事を急ぐ荷運びの男が足を止め、靴の中の石を取り出している。

その数呼吸の間にも、誰かの仕事は遅れるのだろう。

しかし男は誰にも断らず、靴を履き直して歩き出した。

ハインツは羨ましく思った。

他人に休みを宣言せずに済む人がいる。

一方で、自分が宣言できたことは、小さな自由なのかもしれない。


夕方、ジュリアが机を借りたいと言って訪れた。

休んでいる人の部屋に仕事を持ち込むのは変でしょう、と彼女は言った。

「別に静かにしてくれれば」とハインツは答えた。

彼女は紙を広げ、しばらく書いてから「ありがとうございます」と言った。

何のための礼か尋ねずにおいた。

同じ部屋で別々のことができる時間が、久しぶりに心地よかった。


夜、ヘルマンが明日の用件を訊きに来た。

ハインツは考えてから答えた。

「明日、どうするかは明日決めるよ」

ヘルマンは頷いた。

「それでいい」

その簡単な返事を受け取り、ハインツは今日初めて、休むと申し出たことを後悔しなかった。

休息を失敗や回復の証明にしません。ハインツ自身が予定を調整する意思を示し、ほかの三人にもそれぞれの時間があることを描いています。


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