第五部「交易都市編」 第二幕 働く人々と責任の行方 152 帳面の数字
荷の数が合わなければ、誰かが間違えたことになるのだろうか。
ジュリアは、数字が合うまでの時間に、人の信頼がどう変わるかを見つめる。
市港務院の照会窓口には、さまざまな大きさの帳面が積まれていた。
ジュリアは、港湾業務を尋ねる四人のうち、ひとりで説明を聞きに来ていた。
ニコラ・デュレは、貨物の実際の記録が公開してよい範囲と、関係者にしか見せられない範囲を分けたうえで、一般的な手順を話してくれた。
「たとえば、十あると思ったものが九しかないことがあります」
と彼は言う。
「失くしたのでしょうか」
「そうかもしれませんし、最初の数え方が違ったのかもしれません。数える単位が揃っていなかったり、受け渡しの途中だったり。まず何を数えたかを確かめます」
ジュリアは手帳を開いた。
数字の食い違いという言葉を聞くだけで、誰かの不正を疑いそうになる自分がいた。
記録に残るものは、実際のものと一致していなければならない。
しかし一致しないとき、直ちに嘘をついた人がいるとは限らない。
ちょうど奥で、二人の係が帳面の同じ箇所を指していた。
声は抑えられていたが、顔は真剣だった。
「また確認しているんですね」
ジュリアが言う。
「ええ。合わないまま先へ渡すわけにはいきません」
「どちらが正しいか決まったら、間違った人は責められますか」
ニコラは困った顔をした。
「理由によります。ひとつ見つければ全部分かった、というわけにはいかないので」
その答えは、記録係のジュリアにとって曖昧だった。
曖昧だと思った自分に、彼女はまた戸惑った。
現物と帳面がずれているなら、何らかの説明が必要だ。
ただ、説明を作るために誰かを早く責めれば、見えていた事実まで歪むかもしれない。
しばらくして、奥の係の一人が別の紙を持って戻った。
帳面の数字と、移動中の荷の記載を照らし合わせている。
まだ結論は出ていないらしい。
ジュリアは尋ねた。「その間、荷はどうするんですか」
「扱えると確認した範囲と、確かめ直す必要のある範囲を分けます。全部を同じ扱いにはしません」
その言い方を、彼女は覚えておきたかった。
自分が書いた記録も、確かな部分と確かめ直す部分が混じる。
過去の記録を調べるとき、曖昧な一行を見つけると、頁全体が疑わしくなることがある。
しかし、疑わしさを区別しておかなければ、確かな一行まで失ってしまう。
帰り際、ニコラはジュリアに尋ねた。
「帳面を扱う方なら、間違いを訂正するときはどうします」
「誤った記載と訂正した理由を、可能なら分かるように残します」
「なるほど。ここでも、消して終わりにはできません」
彼は一枚の白紙を手に取った。
「ここへ何かを書いたら、その字が読まれる頃には、書いた人がいないこともあります。だから、後で分かる形が必要なんです」
ジュリアは、教会の記録室の暗い棚を思い出した。
細い筆跡は、その人が何を恐れていたかも、なぜ少し急いで書いたかも説明しない。
それでも字だけは残る。
残るからこそ正確に書きたい。
しかし正確さのために急いで結論を作れば、もっと長く誤りを残すかもしれない。
「今日、何が分かったのか教えてもらえますか」と尋ねかけ、口を閉じた。
個別の荷の情報は誰のものなのか、まだ許されていない。
ニコラは何も言わず、一般的な手続きの紙だけを渡した。
彼女が建物を出る頃、奥の係はまだ同じ棚の前にいた。
どの数字が正しくなったかは分からない。
ジュリアは、その分からなさを手帳の余白に残した。
帰る前、ジュリアは廊下に貼られた簡単な案内を読んだ。
問い合わせる場所と、取引当事者でなければ見られない情報の区別がある。
知らせることにも仕事があり、知らせないことにも理由がある。
彼女は初めて、この違いを窮屈さではなく、関わっていない人の事情を守るための距離として考えた。
知りたい人が善意であるほど、その距離を越えたがるのかもしれない。
宿へ戻ると、エリゼーが卓で紙を読んでいた。
ジュリアは今日の話を伝えた。
「数字が合わなかったとき、私は誰かの責任だと決めたくなりました」
「決める理由はあった?」
「ありません。ただ、説明が欲しかったんです」
エリゼーは手を止めた。
「説明が欲しいことと、誰かが悪いと考えることは、近いところにあるわね」
「あなたもそうですか」
「ええ。私も、整わない記録を見て、書いた人の顔を勝手に想像したことがある」
ジュリアは少し驚いた。
エリゼーが誤りを認める言い方には、若いころからの癖が残るのだろうか。
先輩として教えようとはしないが、言葉の重みが消えるわけではない。
「でも私は、今日の数字がどうなったか知りません」とジュリアは続けた。
「知らないままでも、考えたことは残るわ」
「どこまで書いていいのでしょう」
「自分が聞いた一般的な話と、実際に見たことを分けたらどうかしら」
ジュリアは手帳を開き、問いの横へ小さく線を引いた。
未確認の結果を書かず、確認を続けている姿だけを残す。
数字の一つ違いより、人がどうやってその違いを引き受けたかを、今日の自分は覚えている。
翌朝、港へ行けば結果が聞けるかもしれない。
しかし、聞けることと知る権利があることは違う。
ジュリアは手帳を閉じ、確かめに戻る予定を入れなかった。
数字の不一致を、すぐ不正や陰謀に結び付けません。
ジュリアは正確さを求める姿勢を保ちつつ、確認できた範囲だけを書く節度を学びます。




