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第五部「交易都市編」第一幕都市の人口と異なる価値観 137 仕事が終わる街

鐘が夕方を告げても、すべての仕事が終わるわけではない。

ハインツは街に流れる幾つもの一日を、歩く速さの違いから知る。

夕暮れの市街には、朝と同じくらい人がいた。

違うのは、その歩く方向だった。

市場から戻る荷車に道を譲る者がいれば、これから灯を運んでいく者がいる。

子どもの手を引く親の横を、仕事の道具を肩に載せた若者が急ぐ。


ハインツは、街が夜へ向かうとき人々は家へ帰るのだと、ぼんやり思っていた。

しかし帰る者の流れと出かける者の流れは、川の合流する場所のように交わっていた。


「こんな時間から働く人もいるんですね」

ジュリアが言うと、ヘルマンは頷いた。

「船が入る時間や荷の扱いによるんだろう」

詳しいことは誰も知らなかった。

ハインツは、知ったように説明しないヘルマンの声が少し変わったと感じた。


細い路地で、年長の女が戸口へ椅子を出していた。

仕事帰りらしい男が立ち止まり、女に包みを渡す。

二人は言葉を交わし、男は再び歩いていった。

女は包みを膝に載せ、しばらく開かなかった。

その間にも街は動いている。


ハインツはあの光景が気になった。

誰かが誰かのために働くことは、受け取った者にすぐ分かるとは限らない。

仕事は終わったと言われても、待っていた人にはそこから一日が始まることもある。


石楔旅舎へ帰る道で、シメオンが戸口の明かりを直していた。

「今から?」

とヘルマンが声をかける。

「今からが忙しいんですよ。昼のうちに来た客も、夜になれば腹が減るし、寝る場所を尋ねる人も来る」


「休むのはいつですか」

「休めるときに」

軽い返事だった。


だが主人の指は少し赤く、まぶたも重そうだった。

ハインツは自分の腕を思った。

回復を急ぐとき、人は痛みのない日を自分の勝利のように数える。

しかし働き続ける人にとっては、痛みを抱える日も一日に含まれている。


食事の前

シメオンが別の客に

「明朝なら手が空きます」

と説明していた。

客は不満そうだったが、主人は約束を変えなかった。


ハインツにはそれが勇気に見えた。

できないことを言うには、誰かの期待を少し裏切らなければならない。

「助けてあげたいの?」とエリゼーに尋ねられた。


「前なら、そう言ったかもしれない」

「今は?」

「何が必要か知らない。手伝っていい仕事かどうかも」

エリゼーは少し驚いたように目を上げた。


「私は、あなたがそんなふうに言うのを聞くと、安心するの。でも、それも勝手な感想かもしれないわね」


宿の裏手では、寝具を乾かすための綱が張られていた。

夜の風で布が揺れ、朝になればまた使われるのだろう。

ハインツはそれを眺めて、休む場所を保つためにも働く者がいるのだと気づいた。

休息は、何もしない時間ではない。

それを可能にする仕事が背後にある。


主人シメオンが濡れた布を抱え、入口へ戻ってきた。

ハインツは今度こそ手を貸そうとし、途中で声をかけた。


「何か運ぶものがありますか」

彼は手伝った扉の木目を思い出した。

開けておくことは、力のある者でなければできない仕事ではない。

もし右腕が完全に回復したとしても、誰かに頼まれた仕事をその範囲だけ引き受ける難しさは変わらないだろう。

そのことを知れただけで、今日の自分の時間に少し重みが生まれた。


シメオンは少し考えた。

「それなら、その扉を開けておいてください。両手がふさがっているので」

言われたとおり扉を押さえると、主人は礼を言って通り過ぎた。


布を持つことより簡単な仕事だった。

にもかかわらず、ハインツには自分が必要とされたことがうれしかった。

その喜びがまた厄介だとも思う。

誰かに役立つことでしか自分の価値を確かめられなくなると、相手が手伝いを望まない日が苦しくなる。


「今夜はもう、眠ってください」とシメオンが言った。

窓を閉めようとしたとき、遠くから一つの鐘が響いた。

働き始める合図なのか、祈りなのか、ハインツには分からない。


ただ、その鐘で足を速める人が一人、足を止める人が一人いる。

同じ音がそれぞれに違う意味を持つことは、この街に来て何度も見た。

自分の右腕の痛みも、誰かには注意すべき兆し、誰かには快方への途中として映るのだろう。

最後にどう受け止めるかは自分が決めたい。その決意もまた、他人の助けを拒む理由にはしたくなかった。


客である自分の休息まで気にかける主人の言葉に、ハインツは頷いた。

「あなたも」

「できるだけね」

それは願いであって、保証ではなかった。


ハインツは部屋へ戻り、誰かが休めるようにすることと、自分が休むことを、争わせないで済む日は来るだろうかと考えた。


ハインツは笑ってエリゼーに言った。

「安心していいよ。君が安心するかどうかは、君のことだから」

二人はそれ以上話さなかった。


宿の奥では皿を洗う音がする。

働く人の声に、四人の話はとぎれとぎれになった。


夜が更けても、外の足音は止まらない。

ハインツは寝床へ横になり、自分の腕が今日どれほど働いたかを考えかけた。

だが途中でやめた。


働かなかった時間に、自分は多くの人の暮らしを見た。

その時間を無駄にしたとは、もう思いたくなかった。

街では、休む者と働く者の時間が重なります。

ハインツは働けるかどうかだけで自分の価値を測らず、人の仕事を支える時間にも目を向け始めます。

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