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第五部「交易都市編」第一幕都市の人口と異なる価値観 136 祈りの違う食卓

同じ食卓にいても、祈る人、祈らない人、黙る人がいる。

エリゼーは、その違いを説明し合わなくても食事が始まることに気づく。

石楔旅舎の食堂には、大きな卓が二つあった。

客はその日に空いている場所へ座り、主人が運ぶ皿を分け合う。

何を食べるか選べる範囲は広くないが、座る順番について細かな決まりもなかった。


エリゼーは四人の隣へやって来た女が、食べ物に手を伸ばす前に指を組むのを見た。

祈りの言葉は小さく、何を唱えたのか分からない。

向かいの男はそれを待たずに食べ始めた。

女は気にしていないようだった。


しばらくすると別の客が座り、皿を見てから食べるのをやめた。

「これは口にしないことにしています」と主人へ言う。

シメオンはすぐに頷き、別のものが残っているか確かめに行った。

何の教えなのか、なぜ口にしないのか、尋ねる者はいない。


ジュリアがエリゼーの耳元で囁いた。

「どうしてか、聞いてもいいでしょうか」

エリゼーは答えようとして、やめた。


「私には分からないわ。本人が話したそうなら、聞けるかもしれない」

ジュリアはうなずいた。


二人が話している間に、その客はシメオンから別の皿を受け取っていた。

説明を聞きたがっているのは自分たちだけだ。

食卓の人々にとっては、毎日の食事の一部なのだろう。


ハインツは右腕を無理に使わぬよう皿を寄せた。

手伝うかと尋ねられるより早く、彼は小さい声で

「ここに置いて」と言った。


エリゼーは皿の位置を変えるだけにした。

それが自然にできたことに驚いた。

誰も二人の動きを見ていなかった。


「この街では、皆ずいぶん違うね」

とヘルマンが言った。

「同じところもあるでしょう」

とエリゼーは返した。

「ある。でも、違いを先に見てしまう」

彼の言葉には少し疲れがあった。


案内してきた道の土地では、誰にどう挨拶するかをほとんど知っていた。

ここでは、隣の人へ親切にしようとしてもその形を間違えるかもしれない。


女が食事を終え、静かに席を立った。

男はまだ食べている。


二人の間には何も起きなかった。

エリゼーは、その何も起きなさを安易に平和と呼びたくなかった。

違いに慣れている人も、黙って耐えている人もいるだろう。

しかし少なくとも今夜の一皿は、説明を強いられることなく出された。


食卓の片側で、客たちが故郷の味について話し始めた。

香草の名が土地ごとに違い、別のものを同じ名で呼ぶこともあるらしい。

笑い声が上がったが、聞き取れていない人もいた。

その人は笑わずに食べ続けた。


シメオンが追加の皿を運んできたとき、エリゼーはその手元に小さな火傷の跡があることに気づいた。

何か尋ねたかったが、宿の仕事が忙しいのを知っていたので控えた。

客へ食事を出す人にも、その人が話したくない過去があるのだろう。


隣の客は、食べ終えると席を立つ前に皿を揃えた。

向かいの客は何もせずに去った。


どちらかが失礼なのか、土地の慣習が違うだけなのかは分からない。

シメオンは両方の皿を引き、別々の相手へ同じように会釈した。


「今夜、違う国の料理を食べているみたい」

とジュリアが言った。

「ここにいる人には、それぞれいつもの食事かもしれないわね」

とエリゼーが返す。


隅の席にいた男は、食べる前に何も祈らず、食べ終わってから目を閉じた。

エリゼーはその順番を不思議に思い、同時に何も不思議ではないと気づいた。

自分の習慣と異なるからといって、その人の祈りが弱いとは言えない。


彼女は相手を見続けないよう、目の前の水へ視線を戻した。

水面には窓の灯が揺れている。

神へ届く声の形より先に、隣の人が静かに過ごせる場所を残すことが必要な夜もある。


ジュリアは頷いた。

「そうか。私が初めて食べるものでも、誰かは毎日食べている」

エリゼーはその言葉を気に入ったが、誉めるのをやめた。


彼女はジュリアが考えたことを、いつも自分の望んだ結論へ近づく一歩として見てしまう。

そう感じるたび、対等だと信じたい関係に古い癖が顔を出す。


ハインツが匙を置き、「おいしかった」と言うと、周囲の客が一瞬こちらを見た。

知らない言葉で同じ意味を言った者があり、場に小さく笑いが広がった。

誰も同じ祈りを唱えなかったが、食事の終わりに生まれた安心だけは少し分け合えたようだった。


エリゼーは自分の祈りの言葉を思い浮かべた。

口にすれば、それは彼女の信仰を誰かへ示すことになる。

示して悪いわけではない。

けれど隣の人が同じ言葉を知らないことを、どう受け止めればよいのだろう。


彼女は短く目を閉じた。声には出さなかった。

魔法が起こるかどうかを確かめるためではない。

食卓にいる人たちと、言葉を共有しないまま座っていることを、自分に許すためだった。


食事が終わり、シメオンが皿を引いていくと、誰かが「ありがとう」と言った。

別の土地の言葉で同じ意味を返す者もいた。

祈りと違って、その言葉は何度も行き来した。

意味が完全に一致したかは分からない。

それでも次の皿が運ばれてきた。

宗教的な多様性を、対立を解決する場面ではなく、食卓の間合いとして描きました。

エリゼーは理解することを急がず、同席できる時間を覚えていきます

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