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第五部「交易都市編」第一幕都市の人口と異なる価値観 134 秤の向こう側

荷の重さは測れる。

しかし運ぶ人の待ち時間や、仕事を失うかもしれない不安には、同じ秤を当てられない。

荷を載せる台の下で、木が鈍く鳴った。

七秤市場の名を生んだという古い秤の近くに、荷の検めを待つ人々が集まっていた。

ハインツは遠くから見ているだけのつもりだったが、通路を譲ろうと横へ動いたところで、背後の男に「そこを空けてくれ」と言われた。


声に怒りはなかった。

仕事に追われている者の、短い声だった。

ハインツはすぐ離れ、男の左肩に縄の跡が食い込んでいるのを見た。

ラフィ・コンテだった。


「この前の方ですね」

とラフィは荷を置きながら言った。

「また邪魔をしました」


「邪魔というほどじゃない。

ただ、立つ場所が仕事を決めることがあります」


近くの商人が荷の確認を急ぐよう係に頼んでいた。


次の便を逃したくないのだろう。

ラフィも仕事を終えたいはずなのに、急げと言われるたび視線を伏せた。


「早く終われば、あなたも助かるんじゃないか」

とハインツが尋ねると、ラフィは少し笑った。

「終わりが早いならね。次の仕事まで待つ時間が長くなることもある」

ハインツには分からなかった。


働きたくて待っているのに、早く終わることが不利なのか。

ラフィは説明を続けなかった。

彼は自分の仕事へ戻った。


商人の側では、荷が遅れれば取引の条件が変わる。

客は約束した品を待っている。


悪いのは待たせる側、と言い切ることもできるだろう。

ハインツは商人が手元の紙を握りしめる指を見た。

彼にもまた、時間に追われる理由がある。


ただ、荷車が動くたび、それを押す者の身体は誰かの都合で使われる。

ハインツは回復途中の自分の腕を思った。

今なら分かると言うのは簡単だ。

しかし短い傷の時間と、毎日荷を運ぶ人の暮らしとを同じにしてはならない。


一人の商人がラフィを呼び、荷を少しずらすよう頼んだ。

ラフィは足元を見て

「この人数では持てません」と答えた。


商人は不満を示したが、別の運び手を呼んだ。

荷は動いた。


誰かの仕事が遅くなったのかもしれない。

それでも無理をしなかったことを、失敗と呼ぶ声は上がらなかった。


「危ないから断ったんだね」とハインツは言った。

「運べないからです」

ラフィの返事に、ハインツはまた考え込んだ。


安全という大きな言葉で彼の判断を立派にしようとしていたのだ。

本人は自分の力を知り、できないことを伝えただけかもしれない。


夕暮れになり、秤の周りの声が減った。

使われなくなった台には何も載っていないのに、昼の間の荷の重さがまだ残っているように見える。


ハインツは手すりに右手を置き、すぐに離した。

力を入れる必要はない。

そう判断できるようになるまでにも、時間がかかったのだ。

彼は誰にも見せずに指を開いた。


夕方、石楔旅舎へ戻る途中、ハインツは包みを左手へ持ち替えた。

誰かに頼むほど重くはない。

しかし右腕に痛みが出るまで待っていれば、自分を知っているとは言えない気がした。


係が秤の針を確かめるあいだ、荷運びの者が何人も足を止めた。

ハインツは彼らの膝や肩が、待っている時間にも荷の重さを覚えているように見えた。


道具は台の上へ置けるが、身体の負担は置く場所がない。

「人数を増やすと、早く終わるんでしょうか」

と彼がラフィに尋ねると

ラフィは「そういう日もあります」と答えた。


「増えれば分け前も変わります。もっと危ない荷なら、その人数でも足りない」


市場の喧騒から離れると、ハインツは足の裏にじんわりした疲れを感じた。

自分は荷を運んでいない。

それでも立って見ていただけで疲れている。


あの場所で一日を過ごす人が、何を思って夜の道を歩くのか、想像しただけで分かったつもりになるのは避けたかった。

ラフィに「そうですね」と返した短い言葉のほうが、余計な慰めより誠実だったかもしれない。


ハインツは、速さを求めるなら人を増やせばよいと考えた自分の単純さを感じた。

誰かの仕事を外から見ると、いつも解決策ばかり浮かぶ。

自分の腕について他人が同じように言ったなら、どんな気分になるだろう。


「仕事は好きですか」と尋ねそうになって、やめた。

ここで出会って数度言葉を交わしただけの人に、人生の評価を頼むのは乱暴だ。


ラフィは縄を肩へ掛け直し、

「今日はこれで終わりにしたいですね」と言った。


疲れているからか、別の用事があるからかは分からない。

ハインツは「そうですね」と返すだけにした。


それでよいという感覚が、わずかに彼の身体を軽くした。

エリゼーが近くに来たとき、彼は自分から言った。


「次の角まで、これを持ってくれる?」

彼女は驚いた顔をしたが、すぐに受け取った。

「分かった」

ハインツはその返事の短さに安堵した。


荷の重さが変わると、話す声も少し変わった。

どちらが誰を守っているか、今すぐ決めなくても歩いていける。

早く仕事を終えることと、働く人が望む時間とは一致しません。

ラフィとハインツの短い会話を通じ、他人の判断を美しい言葉へ置き換える危うさも描きました。


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