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第五部「交易都市編」第一幕都市の人口と異なる価値観 132 壁の外の夕食

都市の外にも、家族の食卓と働く人の一日が続いている。

ハインツは誰を助けたいと思ったとき、その相手の選択を聞いているかを考える。

南石門を出たところで、夕食の匂いがした。

壁の内側なら店から漂う匂いだと思っただろう。


けれど外では、いくつかの家から湯気が上がり、小さな庭に椅子を出す人がいる。


ここにも暮らしがあるのは当然だ。

ハインツは、心の中で門の外を旅の道、内側を住む場所と分けていたことに気づいた。


柱の近くで見かけた男が、布袋を肩に掛けて歩いてきた。

楔形広場で仕事を待っていた者だ。

彼はハインツの視線に気づき、少し警戒した顔をした。


「何かご用ですか」

「いや、道を見ていただけです」

ハインツの声は思ったより固かった。


男に何かを尋ねたかったのに、気遣いとして見下ろすような言い方になるのが怖かった。

男は歩き出しかけてから、振り返った。


「宿なら門の中ですよ」

「知っています。あなたは、ここに住んで?」

質問を言い終える前に、ハインツは失敗したと感じた。

彼に住む場所を尋ねる権利などない。


「仕事がある場所にいます」と男は答えた。

「ラフィ・コンテです。名前なら言えますよ」

その言い方が胸に残った。

名前なら。


どこまで話せるかを相手が決め、その範囲にいることだけは許された。


「私はハインツです。宿へ帰る途中で、壁の外の暮らしが見えて、少し驚きました」


「驚く人はいます。ここは壁の内側へ品を運ぶ人がいるから続いているんです」

彼の言葉に怒りはなかった。


だからこそハインツは返答に困った。

働く人へ感謝するのは簡単だ。

しかしその感謝は、彼が明日も仕事を得られるようにするわけではない。


「今日は仕事があったんですか」

ラフィはしばらく黙った。

「少しだけ。明日は分かりません」


ハインツは思わず財布へ手をやりかけた。

右腕の痛みで止まったのではない。

ラフィがこちらを見ているのに気づいたからだ。

もし金を差し出したら、ラフィはどう感じるだろう。


「助けようと思っているなら」

とラフィは言った。


「頼まれてからにしてください」


ハインツは驚いて顔を上げた。

相手は笑っていなかったが、非難もしていない。


「そうですね」

と答えるのが精いっぱいだった。


ラフィは軽く頭を下げ、家並みの方へ歩いていった。

少し進むと、彼を呼ぶ声がした。

彼は振り返って答えた。


どんな間柄かは分からない。

ハインツが目を離したあとにも、そこで誰かの一日が続くことだけは確かだった。


エリゼーが隣へ来た。

「話していたの?」

「少し。勝手に親切をしようとした」


「したの?」

「しなかった。断られたから」


壁の外の細い道に沿って、幾つかの小さな屋台が並んでいた。

並べられているのは贅沢な品ではない。

食べ物と日用品、短い休みの間に買えるものだった。

そこで商いをする女が、隣の屋台の男に子どもを預けていた。


二人が親類なのかどうかは分からない。

ただ、手を貸してもらうことが生活の中へ織り込まれている。


ハインツはそこで立ち止まった。

助けられることを恥じずに済む人もいれば、助けを受ける前に説明を求められる人もいる。

自分がしてきた気遣いはどちらだったのだろう。


「何か買う?」

とエリゼーが尋ねた。

「お腹は減っていない。

でも、こういう所で商いを続けるのは大変だろうな」

「大変かどうか、私には分からないわ」


その返事を聞き、ハインツは以前の自分なら彼女が冷たいと言ったかもしれないと思った。

だが、知らない他者の生活を容易に不幸と呼ばないことも大切だ。

視線を屋台へ戻すと、女は子どもを受け取りながら客へ笑顔を向けた。

笑顔の理由も分からない。


「いつか、あの人たちと話してみたい」

とハインツは言った。


壁沿いに帰るとき、ハインツは家の明かりの一つがふっと消えるのを見た。

中の人が眠ったのか、別の場所へ移ったのかは分からない。

誰かの暮らしは、外から見える灯の数では測れないのだ。


自分も右腕の痛みを口にしない日は、何も困っていない人に見えるだろう。

そんな日の自分へ差し出される親切を、断ることも受け取ることも、自分の意思として決めたいと思った。


「何を聞きたい?」

「先に、話してもよいかどうかかな」

エリゼーが静かに笑った。


彼も笑った。

しかしその笑いは、気の利いた答えを見つけた喜びではなかった。

まだ言葉を選ぶ余地があるという、小さな安堵だった。


エリゼーはそれ以上聞かなかった。

ハインツには、その沈黙がありがたかった。

すぐに教訓へまとめられたくない。

自分が何をしようとしたか、まだ十分に考えきれていない。


門へ向かう途中、家々の灯が一つずつともり始めた。

帰る場所の明かりがある人ばかりではないだろう。

彼はそれを憐れみの理由にしないよう、注意深く思った。

見知らぬ者へ自分の正しさを差し出すことより、相手の言葉を最後まで聞くほうが難しい。


石楔旅舎の食卓で、ハインツは四人に今日の出来事を詳しく話さなかった。

いつか話すかもしれない。

だがその前に、ラフィの名を、この奇妙な体験の題名にしないでおきたかった。

ハインツの「守りたい」という気持ちは、傷ついた腕だけでなく他者へのまなざしにも関わります。

善意が必ずしも相手の望む形ではないことを、会話の短さの中に残しました。


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