敵軍、現る
遠くの方に――何か見える。
「…………」
あれは……兵隊だな。かなりの数がいる。
隊列を組んで、こちらへ向かってきている。
最初は援軍かと思った。
でも――何だ?
動きが、なんか違う。
もし援軍なら、城の兵士たちもそこまで警戒しなくていいはずだ。
なのに、櫓の上にいる兵士たちは、遠くの兵隊をじっと見ている。
弓を構えている者までいる。
「…………」
いや。違う。援軍じゃない。
敵だ!
だから、あんなに警戒しているんだ!
敵軍が――本当に来た。
おい! 城の中の奴ら、見えてるか!?
俺が叫んでも、もちろん誰にも届かない。
でも、櫓の上の兵士たちは気づいたようだ。
遠くを指差している。
何やら大声で叫んでいる。
そして――カン!カン!カン!
「…………!」
鐘だ!
城内に鐘の音が響き渡る。
何度も何度も鳴らされている。
やっぱり敵だ!
「敵襲!」
そんな声まで聞こえてくる。
城の中が一気に慌ただしくなった。
「弓を準備しろ!」
「配置につけ!」
兵士たちが走り回っている。
弓を持った兵士が、次々と城壁へ集まってくる。
矢筒を確認する者。槍を構える者。
門の周囲を固める者。
さっきまでとは、明らかに違う。
「…………」
マジかよ。
本当に戦が始まるのかよ!
俺は石垣だ。逃げられない。戦うこともできない。ただ、この城を支えることしかできない。
遠くから近づいてくる敵軍。
それを迎え撃つ城の兵士たち。
両者の距離が、少しずつ縮まっていく。
「…………」
頼む。
この城を――そして、ここにいる人たちを守ってくれ。俺は石垣として、ただ静かに戦いの始まりを見つめていた。




