閉ざされる時
門番はいつも通り、城門の前に立っている。
でも――城門の扉は、まだ閉められていない。
ということは、敵はまだ来ていないってことだよな?
そう考えると、少しだけ安心する。
ただ――ここ最近、早馬らしき騎兵が一日に二回ほど出入りしている。
「…………」
何か命令を受けているのか?
それとも、こちらから命令を出しているのか?
俺には、そこまでは分からない。
でも――きな臭いのは間違いないな。
兵士の数も増えている。
荷物も大量に運び込まれた。
城の中も慌ただしい。
そして、早馬まで頻繁に出入りしている。
……。
恐らく。城門が閉められた時が――いよいよ、ってことなのかな?
城門が閉じれば、外との行き来も簡単にはできなくなる。その時には、命令を出すとか、援軍を呼ぶとか。
そんなことを言っている場合じゃなくなるのかもしれない。
「死守……」
兵士が口にしていた言葉を思い出す。
簡単に言っているけど――実際に戦いが始まったら、どうなるんだろう?
この城は守り切れるのか?
そして、俺は――石垣として、何ができる?
……。
考えても仕方ないか。俺は動けない。
武器を持つこともできない。
戦うこともできない。ただ、ここにあるだけ。
でも――ここが俺の今いる場所だ。
だったら、最後まで見届けるしかない。
「…………」
はぁ。
まあ、俺は見ているだけしかできないが……。
どうか、戦いにならないでくれよ。
そう願いながら、俺は静かに城門を支えていた。
◇
ドッドッドッ!
ん?何だ?また早馬か?
でも――いつもの感じと違う。
「…………」
遠くから、馬がものすごい勢いで走ってくる。
騎兵だ。
それも――全身、泥だらけ。
服も鎧も汚れている。一体、何があったんだ?
「なに!?」
城門へ駆け込んできた騎兵が叫ぶ。
「扉を閉めろー!」
「…………!」
その声を聞いた瞬間、城内が一気に慌ただしくなった。
「急げ!」
「城門を閉めろ!」
ギギギ……。
重い扉が動き始める。
「……!」
ついに――城門が閉じる。
今まで開いていた城門が、完全に閉ざされた。
その直後。
ピィー!ピィー!ピィー!
笛の音が城内に響き渡る。
「…………」
いつもと違う。明らかに違う。
今まで聞いたことのないような笛の音。
しかも、何度も鳴っている。
これは――やばそうだ。
遂に来るのか?
敵が……!俺の石垣としての人生。
いや、転生してからの人生で――初めて、本当の戦いが始まろうとしている。
櫓の上を見る。見張りの兵士も増えている。
弓を持った兵士。槍を持った兵士。
周囲を警戒する兵士。
みんな、緊張した顔をしている。
そして――
「…………」
今まで武装していなかった人たちまで、武器を持ち始めた。
鎧を身につける者。剣を腰に下げる者。
弓を手に取る者。城の中にいるほとんどの人が、戦う準備をしている。
「マジか……」
俺は戦いなんて知らない。
どれくらい怖いものなのかも分からない。
でも――これだけは分かる。
今までとは、明らかに違う。
城門が閉じられた。兵士が配置された。
武器が準備された。そして、泥だらけの騎兵が戻ってきた。
……。
本当に、戦争が始まるんだ。
俺は石垣として、ただそこにいる。
逃げることもできない。
隠れることもできない。
なら――もう、ここで見届けるしかない。
俺の身体である、この石垣がこの城を守れることを願うしかなかった。




