籠城の準備
何だ?遠くから、規則正しく行進してくる団体が見える。
何十人……いや、もっといる。
全員、同じような格好をしている。
しかも――こっちに向かってきている。
「…………」
近づいてくるにつれて、持っている物が見えてきた。
剣。槍。それに弓。
なっ!?まさか――戦になるのか!?
嫌な予感がする。
兵士たちはそのまま城門をくぐっていく。
そして、城の前で整列した。
「全員! 揃っておるな!」
「はっ!」
一斉に返事が響く。
「ここが我々が死守する城だ! 直ちに現状を把握せよ!」
「おう!」
兵士たちが一斉に動き始める。
「…………」
死守。
今、死守って言ったよな?
つまり――この城を、命を懸けて守るってことだ。これは……本当に戦になるのか?
確かに、ここは砂金が採れる。
それだけでも重要な場所だ。
しかも商人が集まり、村も発展している。
ここを奪えば、かなりの利益になるだろう……そりゃ、狙われてもおかしくないか。
「…………」
じゃあ、最近やたらと荷物が運び込まれていたのは――まさか。
籠城用の物資か!食料。水。武器。矢。
その他にも大量の荷物が運び込まれている。
戦になれば、城の中に立てこもる必要がある。
だから、今のうちに必要な物を大量に運び込んでいたわけか。
なるほど。
そういうことだったのか!
「…………」
しかし――俺、石垣なんだよな。
つまりこれから俺自身が、戦場になるってことか?城を守る石垣として生まれ変わったのに、まさか本当に城を守ることになるとは。
……。
何だか、嫌な予感がしてきた。
でも――
門番はいつも通り、城門の前に立っている。
城門の扉は、まだ閉められていない。
ということは、敵はまだ来ていないってことだよな?
そう考えると、少しだけ安心する。
ただ――ここ最近、早馬らしき騎兵が一日に二回ほど出入りしている。
「…………」
何か命令を受けているのか?
それとも、こちらから命令を出しているのか?
俺には、そこまでは分からない。
しかし、きな臭いのは間違いないな。
兵士の数も増えている。
荷物も大量に運び込まれた。
城の中も慌ただしい。
そして、早馬まで頻繁に出入りしている。
……恐らく。
城門が閉められた時が――いよいよ、ってことなのかな?
城門が閉じれば、外との行き来も簡単にはできなくなる。
その時には、命令を出すとか、援軍を呼ぶとか。
そんなことを言っている場合じゃなくなるのかもしれない。
死守……
兵士が口にしていた言葉を思い出す。
簡単に言っているけど――実際に戦いが始まったら、どうなるんだろう?
この城は守り切れるのか?
そして、俺は――石垣として、何ができる?
……考えても仕方ないか。
俺は動けない。
武器を持つこともできない。
戦うこともできない。ただ、ここにあるだけ。
でも――ここが俺の今いる場所だ。
だったら、最後まで見届けるしかない。
「…………」
はぁ。
まあ、俺は見ているだけしかできないが……。
どうか、戦いにならないでくれよ。
そう願いながら、俺は静かに城門を支えていた。




