村人との出会い
「あー。お母さん! まだ猫ちゃんいるー!」
「あら。本当ね」
昨日の猫が、今日も俺の上に乗っている。
どうやら、かなり気に入られたらしい。
「餌あげたい!」
「なら、一度家に帰りましょう」
「うん!」
親子らしい獣人が、俺の近くで話している。
うむ?
猫人間が猫に餌を?
なんか、シュールな光景に思えるが……。
まあ、この世界では普通なんだろうな。
それよりも――まさか猫に助けられるとは。
間違いなく言葉が理解できることが分かった。
それだけでも、俺は嬉しい。
この世界で言葉が通じる。
それは、かなり大きなことだ。
「にゃ~」
ガリガリガリ……。
……またか。俺の身体で爪を研いでいる。
まあ、爪研ぎぐらい許す!
しばらくすると、さっきの親子が戻ってきた。
「お母さん! 早く早く!」
「まあまあ。そんなに急がなくても大丈夫よ」
手には何かを入れた器を持っている。
どうやら、本当に猫の餌を持ってきたらしい。
「ほら、猫ちゃん。ご飯よ」
「にゃ~!」
猫が俺の上から降りて、地面へ向かう。
「おいしい?」
「にゃ、にゃ~」
「よかったね」
さっきの親子が、楽しそうに猫を眺めている。
……ほっこりするなぁ。
「この猫って、ここが好きなのかな?」
「そうかもね。日も当たるし、気持ちいいんじゃないかな?」
「ゴロゴロ~」
「可愛い~」
どうやら猫は、俺のことを完全にお気に入りの場所として認識しているらしい。
まあ、俺としても暇つぶしになる。
猫が来る。人が来る。
それだけでも、何となく楽しい。
「さっ。私達もお家でご飯食べよ」
「うーん!」
親子は、猫に手を振って帰っていった。
……。
静かになった。風が吹く。
猫は、まだ俺の足元で丸くなっている。
なんというか……平和だなぁ。
転生初日から、いきなり命の危機に遭うような展開ではない。
ただ杭になって、猫と触れ合って、村人の会話を聞いている。
ほっこり日常だ。
……しかし。俺には、一つ問題がある。
神様は言っていた。
人の役に立つことで、神力が貯まる。
猫には、少し役に立っている気が……
少なくとも、猫が安心して休める場所にはなっている。
でも――人には、どうやって役に立つんだ?
俺は杭だ。
動けない。話せない。
何かを持つこともできない。
……。
まあ、とりあえず。気長にやるか。
何を?
……って感じだが。
こうして俺の杭生活は、静かに始まった。




