山から湧き出す温泉
……揺れは収まった。
長かったような、短かったような。
俺には時間の感覚がよく分からない。
それより――みんな、大丈夫かな?
村は?石切場は?砂金の採取場は?
俺自身は……山全体に意識を広げてみる。
崩れている場所はある。
木も何本か倒れている。
でも、山そのものには大きな問題はなさそうだ。
……よかった。と思った、その時だった。
「…………」
ん?何だ?
さっきから、妙な違和感がある。
山の中から何かが込み上げてくるような感じ。
何だこれ?地震の余韻か?
それとも、別の何かか?
「…………」
意識を集中する。
すると――ブッシュー!!
わっ!?何だ!?
突然、山の一部から勢いよく水が吹き出した!
「うわぁ!?」
村の方からも、驚きの声が聞こえる。
「なんだ、あれ!?」
「水が吹き出したぞ!」
「近づくな!」
人々が騒ぎ始める。
俺も何が起きているのか分からない。
ただ、山の中から大量の水が噴き出している。
……いや。よく感じてみると――これ……水じゃない?
何となく、普通の水とは違う。
それに、周囲に白いものが立ち込めている。
蒸気?まさか。温水じゃないか?
地面の中から、熱を持った水が噴き出している。そして、俺の中に一つの言葉が浮かんだ。
温水。
地面から噴き出す熱い水。
これって――温泉じゃないか?
俺、まさか温泉を生み出したのか!?
いや。俺が生み出したわけじゃない。
地震で地下の状態が変わって、今まで隠れていた温泉が出てきたんだろう。
それでも――山から温泉が出た。
これは、人の役に立つんじゃないか?
……いや。それよりも!
みんな、大丈夫なのか!?
そっちが先だ!
地震で怪我をした人はいないか?
建物は無事か?石切場は?砂金採取場は?
俺は必死に山全体へ意識を広げる。
人の気配を探す。
「…………」
どうやら、大きな怪我をした人はいないようだ。あちこちから驚きの声は聞こえる。
泣いている子供もいる。
でも、今のところ大きな事故は起きていない。
……ふぅ。よかった。本当に、よかった。
そして――山から吹き出し続ける温泉を感じながら、俺は思った。
もしかして。この山、俺が思っていた以上に――凄い山なんじゃないか?
そう思った瞬間――
ほゎん……。
また、あの感覚がした。
身体の奥から、何かが満ちていく。




