山の専門家
数十日経った。
……うーむ。
崖崩れの跡、あまり変わってないな。
まあ、人の力だけで片付けているんだ。
そう簡単には進まないか。
相変わらず、大勢の作業員が倒木や土砂を少しずつ片付けている。
そんなある日――
「おーい! 作業員、止めろ!」
突然、大きな声が響いた。
ん?何だ?
「ん? どうした?」
「本当か?」
「間違いないと思います!」
「かもしれん! 至急、専門家を呼んでくれ!」
「分かった! 早馬を走らす!」
……。
何だ?事故でも起きたのか?専門家を呼ぶ?
土木の専門家かな。
まあ、この規模の崖崩れだ。
専門的な知識を持った人が必要なのかもしれない。
それからしばらくすると――馬に乗って、何人かの人がやってきた。
……ん?学者?
何というか、土木の専門家というより、研究者みたいな格好をしている。
「ここか!」
「はい!」
「間違いない!」
「本物だ!」
「おおー!」
……。
何だ?本物?何が本物なんだ?
崖崩れの現場を見て、何やら興奮している。
俺には、何を話しているのかよく分からない。
「この地層……」
「やはり……」
「間違いない」
……。
ますます分からん。
崖崩れが起きたことが、そんなに珍しいのか?
それとも、何か別のものが見つかったのか?
結局、専門家たちは何時間も現場を調べていた。
そして――さらに数日が経った。
今度は、大量の板が運び込まれてきた。
「…………」
何だ、これ?板を並べている。
土砂を止めるためのものか?
いや、違う。
作業員の他に、大工さんのような人たちまで増えている。何やら板を組み立て始めた。
トン。トン。トン。
木材を組み合わせていく。
何を作ってるんだ?俺にはさっぱり分からない。しばらくすると――あれ?
板が、妙な形になってきた。
U字型だ。
それも一つじゃない。いくつも作っている。
しかも、それを斜面に並べている。
……ん?
これって――水を流すためのものか?
雨が降った時に、水がこのU字の中を流れるようにしている?
でも、なんでそんな物を?
「…………」
まさか。
また雨が降ったら、同じように崩れるからか?
俺は山だから、雨を吸う。
それ自体はいい。
でも、一気に大量の雨が流れれば、土砂が削られてしまう。
だから――水の流れをコントロールする。
……そういうことなのか?
もしそうなら。人間って、すごいな。
俺はただ山として存在しているだけ。
でも、人間たちは山を見て、どうすれば安全にできるのかを考えている。
杭だった頃には考えもしなかったことだ。
「…………」
これから、この山がどう変わっていくのか。
少し楽しみになってきた。




