人海戦術
数日後。
崖崩れが起きたと思われる場所に、数百人近い作業員らしき人たちが集まっていた。
かなりの人数だ。
山のあちこちから人が集まってきている。
「まずは、この倒木からだ!」
「気をつけろ!」
「そっちは持ち上げられるか?」
どうやら、倒木や土砂を片付けるらしい。
……しかし。
重機とかは見当たらないな。
クレーン。ショベルカー。ブルドーザー。
そういうものは、どこにもない。
まあ、当然か。
橋になっていた時も、乗り物といえば馬車が中心だった。
少なくとも、俺が見た範囲では機械らしい機械はなかった。
ということは――この世界には、まだ重機がない。そう考えてよさそうだな。
「せーの!」
「うおおお!」
何人もの作業員が力を合わせて倒木を動かしている。
一本の木を移動させるだけでも大変そうだ。
それが何本もある。さらに土砂まである。
……。
これ、全部人海戦術でやるのか。
「…………」
大変だなぁ。
俺には手を貸すこともできない。
山だから動けないし。
木を持ち上げることもできない。
ただ、作業を見守るしかない。
それにしても――かなり時間が掛かりそうだ。
雨で崩れた場所なのだから、また長雨でも降ったら危ない。
特に大雨なんて降ったら、せっかく片付けてもまた崩れる可能性がある。
どうか、しばらく晴れていますように……
俺が祈っても、天気が変わるわけじゃない。
それでも、そう願わずにはいられない。
頑張っている人たちのためにも。
そして――俺の前世……じゃなかった。
ホフヌング橋のためにも。
頼むから、もうしばらく雨は降らないでくれよ。
俺は山として、静かに作業を見守っていた。




