ホフヌング山
うーむ。
山になったから、人の役に立つ方法を考えてみたんだが……。
水を生み出す?
……雨が降らないとダメじゃね?
木を育てる?
それも俺が育てているというより、勝手に生えてくるだけだ。
動物が暮らす?
そもそも、動物に来てもらわないといけない。
「…………」
人の役に立つの、無理では……?
はぁ~。まあ、いいか。
今日は天気もいい。
山になったせいか、風が気持ちいい。
何となく気分もいいし。
そんなことを考えていると――
「さー! みんな! もう少しで山頂だぞ!」
「おう!」
ん?
人が登ってきている。
登山客か。なるほど。
山ならではの人の役立ち方ってことか。
山に登る人がいる。景色を楽しむ。
運動にもなる。
……まあ、人の役には立ってるな。
ただ、登山客だけで神力を貯めるとなると――
かなり長い時間との戦いになりそうだなぁ。
俺にはやることもない。
前回同様、基本的にはここにいるだけだ。
まあ、いいか。気長にやろう。
そう思って、身体全体……いや、山全体に意識を集中してみる。
すると――今まで気づかなかったものまで、感じ取れるようになった。
山の裾野。
そこには、山菜を採っている人がいる。
少し離れた場所では、家畜が放牧されている。
沢では釣りをしている人もいる。
さらに奥には――木を切っている人。
そして、炭焼き窯らしきものまである。
……。あれ?
思ったより、人が山を利用しているな。
山菜。木材。炭。家畜の餌。魚。そして登山。
俺が思っていたより、ずっと人の役に立っているのかもしれない。
「ヤッホー!」
ん?
さっきの登山者か。山頂に着いたらしい。
「ヤッホー!」
……まあ、山の上でやることはお決まりだよなぁ。
「少し休んだら食事だ!」
「はーい!」
ん?
今度は子供たちの声だ。
学校の遠足か何かか?
まあ、そんなに高い山ではないからな。
みんな楽しそうだ。
「先生! ここって、何ていう山なの?」
「ホフヌング山よ」
「ホフヌング山?」
……。ん?
今、何て言った?
「ホフヌング山って、いつからあるんだろ?」
「山だから昔っからだろー」
「それもちゃんと学校に帰ったら調べよう!」
「はーい!」
……。
おいおい。今、確かに言ったよな?
ホフヌング山。
ホフヌング。またか。
標識の時は、ホフヌング村。
橋の時は、ホフヌング橋。
そして今度は――ホフヌング山。
「…………」
となると――やっぱり、遠くに見えているあの橋。
元俺じゃねーかよ!
しかも、俺が標識だった場所も、あの辺りなんじゃないか?
……。
待て。なんだ?この世界。
ホフヌング縛りでもあるのか?
俺が転生するたびに、ホフヌングが出てくるぞ。まさか、俺が転生した場所って――ずっと同じ地域なのか?
そう考えると、なんだか嬉しくなってきた。
杭だった俺。標識だった俺。
橋だった俺。そして今は、山。
姿は変わっても――俺はずっと、この世界の同じ場所を見ている。
……これからも、そうなのかもしれないな。




