濁流の試練
ここ数日、雨が続いているな。
季節的なものか?
でも、標識をやっていた時に、こんなに長い期間ずっと雨が降っていた記憶はない。
……まあ、たまたまか。
そんな期間もあるだろ。
雨が降ると、人通りも減る。
橋を渡る人も少なくなるから、ちょっと暇だ。
そんなことを考えていると――
ゴン!
「……ん?」
何だ?今の音。
ゴン!
まただ。しばらくすると――
ゴン!
しっかし、雨が続くと橋を渡る人も減るからなー。
ゴン!
門番も雨の中、仕事か。ずっと立っているけど、雨に濡れて大変そうだ。
ゴン!
……。
さっきから、何の音だ?
ゴン!
……ん?
嫌な予感がする。
川の流れが、いつもより速い気がする。
そして――
げっ!?
川に何かが流れてきた。
木だ。かなり大きな木。
流木だ!
橋桁に――
ゴン!
これ、橋桁に流木が当たってる音じゃんか!
ゴゴン!
次々と流木が流れてくる。
まずいだろ、これ!
上流で何か起きたのか?
崖崩れでも起きたんじゃないか?
それとも、山の木が大量に流されてきているのか?
どちらにしても――まずい。
俺には、どうすることもできない。
流木を避けることもできない。
川の流れを止めることもできない。
人間なら、何か対策を考えるだろう。
でも俺は――橋だ。
ただ、そこに架かっていることしかできない。
ゴゴン!
くっ……!
橋桁に強い衝撃が走る。
俺の身体全体が揺れる。
ゴゴン!
ヤバい!耐えろ。耐えろ、俺!
ゴゴン! ゴゴン!
次から次へと流木がぶつかってくる。
しかも――ん?
橋桁に流木が引っかかった。
一本目が引っかかる。そこへ、二本目。
さらに三本目。
次々と流木が絡みついていく。
ちょっと待て!
これ、どんどん負荷が大きくなってるぞ!
流れてくる水の力。流木の重さ。
さらに、その流木に別の流木が引っかかっていく。
ものすごい力が橋桁に掛かっているのが分かる。
ギギ……。
グゥぅ……
橋全体が軋む。
俺は、ただ耐えることしかできない。
ゴゴン!
「まだだ……!」
ゴゴン!
耐えろ……!
橋として、ここにいる限り。
この橋を渡る人たちを守るためにも。
絶対に……倒れるな!」
ゴゴン!
激しい雨が降り続ける。
川は濁流となって流れていく。
そして俺は――ただひたすら、橋として耐え続けた。




