橋に迫る火
毎日、かなりの人数が橋を渡っているぞ!
人が歩いて。馬車が通って。
商人が荷物を運んで。
旅人が向こう岸へ渡っていく。
いやぁ、人の役に立ってるな!
これなら、すぐに神力も貯まるんじゃね?
杭から標識だった頃は、自分が本当に役に立っているのか、いまいち分からなかったからなー。
標識として村への道を教えても、誰かが俺に感謝してくれるわけじゃない。
でも橋なら違う。
毎日、人が俺の上を渡っていく。
「助かるなぁ」
「橋ができて便利になった」
そんな声も聞こえる。
橋としてのやりがいがあるぜー!
しかも、この橋には門番まで立っている。
橋の近くに小さな詰め所があって、何人かの兵士が交代で見張っている。
守られている感もある。
平和だー!
俺は橋として、しばらくここで頑張れそうだ。
◇
夜。
昼間と違って静かになった。
……と思っていたんだけど。意外と人通りがあるんだな。旅人らしき人が歩いている。
馬車も少しだけ通る。
昼間ほどではないが、それなりに人がいる。
「月明かり、綺麗だなぁ~」
橋の上から見る夜空。
川に月が映っている。
なんとも風情がある。
そんな景色を楽しんでいると――
ん?何か近づいてくる。小舟?
夜にも小舟が出るのか。
夜釣りかな?
小舟が川を進んでくる。
そして――俺の橋桁の近くで止まった。
……ん?何かを橋桁に掛けたぞ?
何だ?ロープか?
いや……。
「…………」
嫌な感じがする。そして次の瞬間。
ボッ!
「げ!?」
火!?
まさか――油を掛けたのか!?
橋桁の一部が、炎に包まれた。
ちょっと待て!俺、木製なんだけど!?
これ、めちゃくちゃ燃えるんじゃないか!?
よく見ると、川の小舟に乗っている連中。
昼間に、
「橋反対!」
と騒いでいた連中じゃないか!
ヤバい!ヤバい!俺、燃やされる!
門番!気がつけ!!
「うーん!うーん!」
……って、声が出ない!当然だ!
俺は橋だ!
どうにか知らせたい。
身体を動かすこともできない。
それでも必死に何かを伝えようとする。
ギシィ……。
橋が大きく軋んだ。
その音が、夜の静かな川辺に響く。
「……ん?」
門番が顔を上げた。
「何だ? 橋から音が……」
よし!気づいた!
「ギシ……ギシィ……」
「……?」
門番が橋の下を覗き込む。
そして――
「ん!?貴様ら! そこで何をしている!」
小舟の男たちが慌てて顔を上げた。
「なっ……!」
「どうした?」
別の門番も駆け寄ってくる。
「橋桁に火をつけようとしているぞ!」
「なに!?」
門番たちが一斉に武器を構える。
「弓を構えろ!」
「はっ!」
橋の上から、弓を持った兵士たちが小舟へ狙いを定めた。
俺は、ただの橋。
自分では何もできない。でも――今度こそ、俺は人の役に立てるかもしれない。
そして何より。
燃やされるのだけは勘弁してくれ!
俺は必死に橋を軋ませ続けた。




