橋の役目
おー。みんなが渡り始めたぞ!
完成したばかりの橋だからか、たくさんの人が俺の上を歩いている。
「わーい! 橋だー!」
子供が嬉しそうに走っていく。
「こら! 走ったら危ないわよ!」
母親らしき人が慌てて追いかけている。
……なんだか、微笑ましいな。
それにしても――結構、高い橋なんだなぁ。
下には川が流れている。
橋の上から見ると、かなり遠くまで見渡せる。
標識だった頃とは比べ物にならない。
視界が広いって、こんなに気持ちいいんだな。
「この橋ができて、本当に助かるよ」
「船を待たなくていいからな」
「荷物もそのまま運べる」
そんな声も聞こえてくる。
なるほど。確かに、渡し船とは全然違う。
「船とは違って、荷下ろしがないから楽だな」
馬車に乗った商人らしき人が、隣の人に話しかけている。
「なあ?」
その瞬間――ブルブルッ。
馬が鼻を鳴らした。
「そうだな」
商人が笑う。
「荷馬車だと、一度荷物を下ろして船に積んで、向こう岸に着いたらまた荷馬車に積み直さなきゃならない」
なるほど。確かに大変だ。荷物を下ろす。
船に積む。船から下ろす。また荷馬車に積む。
それを毎回やっていたのか。
でも俺なら――馬車ごと、そのまま渡れる。
馬も一緒だ。荷物を一度も下ろす必要がない。
「橋って便利だな」
商人がそう呟いた。
……。
ん?待てよ。
これ――めちゃくちゃ人の役に立ってないか?
子供も渡れる。歩いている人も渡れる。
馬車も渡れる。商人も楽になる。旅人も助かる。村と村の行き来も簡単になる。
……。
これは、かなり期待できるんじゃないか?
神様は言っていた。
人の役に立てば、神力が貯まる。
そして俺は今――毎日、大勢の人の役に立っている。
「…………」
もしかして。俺、橋に転生して大当たりだったんじゃないか?
これなら――すぐに神力が貯まるんじゃないか?
標識の時とは比べ物にならない。
一日に何十人、何百人。
そのうちには、商人もいる。旅人もいる。
農家もいる。兵士だって渡るかもしれない。
……これは期待できる。
「うんうん」
俺は心の中で頷いた。
橋に転生してラッキーだな。
しかも、今度の俺は――たくさんの人を支えることができる。杭だった俺が、標識になり。
標識だった俺が、橋になった。
少しずつだけど、俺は確実に人の役に立てる存在になっている。
次の転生先は、いったい何になるんだろう?
そんなことを考えながら、俺は今日も人々を乗せて、川の上に架かっていた。




