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ルナティコ・アンブランシア ~メキシコを暴走する海賊救急車~  作者: にのい・しち
月狂1 CDMX(セーデーエメキス)

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7/11

7夜 メソアメリカ 古代神話

 死者のディスク。

 王冠を乗せたドクロに蛇腹の三日月が嵌め込まれた石盤。

 メキシコシティの北東にあるテオティワカン遺跡で出土した石の彫刻。

 日本では馴染みないセンスの彫刻だ。


 太陽の石。

 マンホールのような一枚岩(モノリス)の真ん中に、間の抜けた口を開ける人面と、その周りに刻まれた暦年。

 古代のカレンダーらしいが、暦年を記している訳ではないらしい。


 赤の女王ことレイナ・ロハ。

 その名前の通り赤いワンピースを着こんだ仮面の女王。

 とはいえ、赤いワンピースは展示用の飾りで、ひび割れた仮面が女王様だそうだ。


 どれもこれも古代の展示品は個性が強いデザインに溢れている。

 これらがメキシコシティの周辺の遺跡で発掘されたのだから、夢があって面白い。

 

 シティのそこかしらに古代遺跡が点在しており、街をフラりとしていたら突然、道に穴が空いて、冒険映画で見る滑り台のように地下へ落ちて行くと、発掘されていない遺跡を見つけてしまう、なんてのともあるかもしれない。


 ただのジョークだが、そう考えると冒険心をくすぐられる。


 メソアメリカの神々の展示品へ足を運ぶ。

 金属のプレートにスペイン語とは別に英語、中国語、韓国語の解説が添えられていた。


 【テスカトリポカ】は風の神ケツァルコアトルと対立する「大熊座の神」

 大熊座の神でありながら、生まれ変わった世界によって猫だったりジャガーだったりと、姿が変わる。


 別名は"ティトラカワン"で、ナワル語で「我らを奴隷にする者」という意味。


 白人の団体で動く観光客が、神の彫像の前に集合していた。

 博物館の男性職員が英語で解説をしているので、さりげなく団体客の後ろへ混じって話を聞く。


「【ウィツィロポチトリ】は蜂鳥を象った戦いの神です。完全武装した超人として女神である母から誕生したがゆえに、兄弟である神々の嫉妬を買い、兄弟に暗殺されそうになります。ですが、ウィツィロポチトリはそれらを返り討ちにしてしまうほど強かったのです」


 神話の解説に興味津々の団体客は、各々が頷きながら聞き入っている。


「アステカ人はウィツィロポチトリを戦いの神と崇め、この軍神へ生け贄を捧げました。その生け贄ですが、恐ろしいことに、祭壇に貼り付けにされ、石のナイフで胸を引き裂き、生きたまま心臓を取り出すのです。取り出された心臓はドクドクと脈打ったいたそうです」


 その話を聞いた白人の団体客は一斉に「Oh!」と、声を上げて顔をしかめた。


「日本の漫画に、戦う前の戦士を奮起させる誓いの言葉で『心臓を捧げよ!』というフレーズがありますが、まさにアステカ人は心臓を捧げていたというわけです」


 男性職員は別の彫像へ移り団体客も、それに着いていくので、俺もチャッカリ後に続いた。


「そしてこちらが【シペ・トテック】 アステカ文明において春を呼び、農作物を実らせ、時に疫病を運ぶ、穀物と季節の神です。とても器用な神で金細工も司っています。トウモロコシに縁が多く、トウモロコシの皮を剥いで現れた黄色い身が、黄金のイメージと重なっています」


 団体客は一様に頷き神話の世界を共有する。


「で・す・が、このトウモロコシの皮を剥ぐのも、生け贄の儀式と深い繋がりがあります。アステカ人はシペ・トテックに生け贄を捧げる時に戦争の捕虜を奉り、その全身の皮を剥いで、さらには筋肉を削ぎ落として骨に変えたとか」


 ついに団体客の中から「ジーザス(おぉ、神よ)」という嘆きの声が聞こえてきた。


「トウモロコシの皮と実を剥ぐことに関連付けた儀式だったようです。この皮剥の儀式が転じてシペ・トテックは再生や生まれ変わりという、転生を司る神として崇められていました。少し残酷な話が続いたので、話題を変えましょう」


 職員は古代人の作物を耕す絵画に移動し、その前で解説を続けた。


「メキシコという国名の由来ですが、先住民ナワ族の言葉【メシカ】から来ています。"メシ"は簡単に言うとアステカ人の英雄であり、神と同一視された存在で、"カ"は人々や子供、場所の意味もあります。神の人々や英雄の子、神の場所という意味でメシカ。その言葉が時代と共に変容してメキシコという名前に変わりました」

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