↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナティコ・アンブランシア ~メキシコを暴走する海賊救急車~  作者: にのい・しち
月狂2 メディアノーチェ・ファミリア 真夜中の家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/43

42夜 カーチェイス ダブル暴走救急車

 逆走する救急車の正面から、対向車が現れクラクションを鳴らすが、それでもワニ男は進み続け、対向車は歩道へ乗り上げて救急車をかわす。


 サイレンを鳴らした二台の救急車は、規模が小さい環状(ラウンド)交差点(アバウト)へ侵入した。


 わずかにリードしていた、こちらの救急車が先頭に躍り出る。

 両者は環状道路を左へ曲がり、時計回りに走行。

 輪っかの外周を取ったことで、こちらの救急車は優勢となり、出口まで手が届く。


「残念だったなワニ野郎。勝利の女神は俺にゾッコンなんだぜ」


 勝ち誇る父のアティリオ。


 しかし――――――――――――。


 爆音で聞こえるサイレンを呑み込むように、後方のサイレンが音を被せて来た。

 異変を察知して真後ろの窓へ視線をやると、後続の救急車が突進するサイのように急接近。


 ここまでの事態を想定していなかったことで、俺の頭は真っ白になった。


 次に全身で感じた異変は、激しく揺れる車内と明滅するライト、ティソナ家の子供達が上げる悲鳴だった。


 後ろから追突されたことで出口から大きく逸れ、あわや外壁に激突する寸前、父のアティリオはハンドルを急旋回させ環状道路へ戻る。


 俺はパニックでうろたえるばかり。


「しょ、正気か!? ぶつけてきた!」


「ノ・メ・チンガール!!(やりやがったな!!)」


 父のアティリオは無線機を引っ掴み、マイクに向かって怒鳴る。


「エル・オンブレ・カイマン! テメェ、どういうつもりだぁー!? こっちは子供が乗ってんだぞぉ!?」


 怒鳴り声とハウリングが同時にスピーカーから流れたので、俺は慌てて止めに入った。


「ちょっと、何やってるんですか!? 救急車のスピーカーを私的に使うなんて。しかも、今の声、街中に聞こえてますよ?」


「かまうことはねぇ」


「これは周囲の車に緊急事態を知らせる物なんですよ?」


「今が、その緊急事態だ」


 売り言葉に買い言葉で聞く耳を持たない。


 すると、相手の救急車からスピーカー越しに応答があった。


『オォオンブレェエ・オウソォォオオーー!!』


 地底から湧き上がる怒りの声に唖然とし、俺は誰でもいいから、答えを提示してくれとばかりに聞く。


「い、今のは何?」


 娘のアーシーが答えた。


「オンブレ・オウソ。熊男って意味」


「熊男VSワニ男? ここは自然公園かジャングルなのか!?」


「自然公園に熊男もワニ男もないない」


 このやり取りがバカバカしくなり、俺は口を紡ぐ。


 もはや公衆の面前などお構い無しに、熊とワニが英語を使って喧嘩する。

 ワニ男がスピーカーで捲し立てる。


『この熊野郎! 一ヶ月前にテメェが俺の救急車にぶつけて来たから、そのお返しだ!』


「そんな昔の話をネチネチと」


『先月の話だバカ野郎!!』


「あ、あれは、車線変更する時に近づき過ぎたから、車体を擦っただけで」


『ぶつけるのと擦るのは大違いだ! アレは明らかにぶつけて来ただろ!?』


「それは悪かったと思ってる」


『思ってるだと? 賠償金だって払ってねぇたろが!?』


「保険に入ってねぇから、今は払えん」


 さらりと、とんでもないことを告白した。

 

『この図体だけが熊のフニャチン野郎!』


「何だとぉ!? ならテメェはワニ相手のマザーファッカーだ!」


 ありえない光景が起きている。

 二台の救急車が小さな環状道路で高速のメリーゴーランドさながらのカーチェイスを繰り広げ、互いにスピーカーを通して汚い言葉で罵り合う。

 他の車は、この狂気の回転木馬に弾き飛ばされないよう、輪っかの中を逃げ回る。


 この一連の出来事がSNSで拡散され、テレビのニュースにまで話題が発展するのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。