12夜 デスペラード 無法者
「アタケ!?(襲撃!?)」
臓器ブローカー達は散り散りになって互いに指示を出すが、指示が行き届く前に道の端々から銃撃の嵐が来た。
監禁されていた人々もトラックや、ドラム缶などの影に隠れようと必死で走る。
だが、姿を隠す前に次々と凶弾に倒れて行く。
我先にと物陰に隠れたブローカー達は、ライフルや拳銃で応戦。
謎の襲撃者達は弾丸を当てに行く為、怯むことなく姿を現し、走りながらライフルをブローカー達へ向けて撃った。
襲撃者は頭からすっぽり被せた、黒い覆面と防弾ベストのような厚みのあるジャケットを着ていた。
それぞれ、ライフルを持つ五人くらいの相手に、臓器ブローカー達は銃を乱射する。
何発か覆面の人物に当たり襲撃者を倒す。
俺はトラックを障害物にしながら、倉庫まで戻り、姿勢を低くして外の壁に張り付きながら逃げる。
俺が頭を低くしながら逃げると、その後を赤茶けた髪の少女がついて来た。
流れ弾が倉庫の壁に当たっても、恐怖を感じる前に走り抜ける。
「アァ!?」
銃撃の音で聞こえにくいが、俺の後ろで叫び声が上が――――。
振り向くと赤茶けた髪の少女が倒れていた。
流れ弾に当たり転倒したようだ。
それに、少女の胸囲から出血が広がっている。
この時に適切な応急措置を施せば、少女は助かったかもしれない。
足を止めたことで精神が恐怖に支配され「この娘は、もう助からない」と、答え有りきで諦めた。
少女は「メ・ドゥエレ!」と、繰り返し泣き叫ぶ。
スペイン語がわからないとは言え、負傷した状況を見れば、何を訴えかけているか察しがつく。
だが俺は顔を背け、壁の跳弾をくぐりながら逃げた。
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SF映画で見る、前人未到の惑星に来てしまったのか?
無我夢中で逃げて来たから、今がどこに、いるか解らない。
メキシコの夜は人気が無くなり、通りすがりの人間に助けを求めることも出来ない。
観光地で出会った日本人に『夜は治安が悪くなるから気を付けて』と、忠告を受けたからか、この国の闇夜に身震いする。
ポツポツと顔に滴が当たると、あっという間に雨が降り注ぎ雷まで鳴り響く。
雨をしのぐ場所を探して路地裏へ避難した。
建物の隙間くらいでは雨は防げず、身体はずぶ濡れになる。
何日も身体を洗っていないので、雨をシャワー代わりに顔や腕と足を擦って、汚れを落とした。
今はこの程度でいいが、このまま雨に晒されると徐々に体温を奪われて、低体温症か免疫力が下がり感染症にかかるかもしれない。
命の危険に迫られる。
とりあえず日本大使館へ駆け込んで保護してもらえれば、すぐに帰国出来るはずだ。
そのはずなのに、この場所知る術だったスマートホンが無いから、地図は見れない。
露店の地図を買おうにも金がない。
そもそもスペイン語が解らないから、地図だって読めないじゃないか。
彼方からサイレンの音が入り交じる。
俺が逃げて来た狂気の場所の方角へサイレンが向かっている。
あの銃撃騒ぎで警察や消防が通報を受けたと考えるのが筋だ。
それなら、引き返して警察に保護してもらうのが定石ではないか?
猶予はあまり無いと考えるべきだ。
体温が下がってきたのか、寒気がする。
足を踏み出し来た道を引き返そうとした、その瞬間、壁の角から巨大な影が戻り道を塞いだ。
俺は息をのみ立ち止まる。




