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13 変人会長と不憫副会長は段階分けしてパワーアップします。


 放課後になって皆がガタガタと椅子をならして、教室から立ち去っていく。


 はい、放課後です。


 ん? 昼休みからの時間経過が早い? 気にしちゃいけません。シルバス兄上? いつものシスコンぶりでしたよ。気にしちゃいけません。



 よし、学校探検に出かけますかと思いましたが。


 今日の放課後は第一回特別枠生徒調査、という名目で生徒会メンバーとの出会いイベがありますね。探検したかったのですが残念です。


 さて、特別枠生徒調査について補足をしましょう。


 特別枠生徒調査――略して特枠調査は研究の対象である生徒が、他の生徒に危険な真似をしないかを調査するものです。


 別に研究対象と一口に言っても解剖やら実験やら、命に関わる危険な事をされる事はない。


 精々最近の様子をアンケートされたりする位の簡単なものなのだ。


 こんな事でトウア国の誇る学校に面接と振り分け試験のみで入れるのだから安い物だろう。



 そこの研究がある程度進むと、カンタレラではパラメータがひとつ追加される。


 好感度と不幸体質。


 従来の物と変わらない好感度パラメータに加えてこのゲーム独自のパラメータ――不幸体質。


 このパラメータは言い換えると死亡可能性パラメータだ。高いほど死にやすい。


 だけど高くなくても選択肢によってはゼロからMAXまで上がったりするくせ者なのだ。


 その不幸体質のパラメータは好感度をあげるだけでは駄目で、時々選択肢を外して安全を図ったり、死ぬ原因になりそうな対象の負の感情を軽減させなくてはならなく、バランス能力が鍵を握る。


 早い話が生徒会メンバーを好きそうな人達の恨みを買うなって話だ。わぁ、なんて簡単。


 ……そして、すごく恐ろしい。激情は人の身を滅ぼすんだ……。恐い。


 って訳で、いざとなったら回避しようがないが、見とかないと不安なので生徒会室に向かいたいのだが……。


 実はユウにはまだ特枠調査があるとは伝えられていない。


 そして特枠調査は無断でサボると罰をくらう。わぁ、流石不幸体質、理不尽ー……。


 罰は回数によって上は退学から下はトイレ掃除までピンからキリまである。だが誰しも罰なんかに引っ掛かりたくない。


 ゲームでの無難な選択肢は「教室に残る」なのだが、キャラの好感度が上がるのは「学校を探検する」。ふーむ、好感度を取るか安全を取るか……迷うね。


 仮に好感度を取ったとしても、このカンタレラ現実らしさを出すために地味に嫌な要素を加えてある。


 ランダム機能だ。


 細かい事は任せてしまったので覚えてないが一応高確率であたる仕様にはしておいた筈だ。


 何にランダム機能をかけているかって?

 攻略キャラに遭遇出来る確率にだ。


 正直、今の私の――ユウの不幸体質だと高確率のランダムでもあまり当たる気がしない。


 でも今回遭遇するキャラは生徒会長と副会長。ランダムに当たると好感度が上がる上に更に特枠調査にまで連れていってくれる一石二鳥なんだ。


 悩み所だ。


テルカ「ユウちゃん、ボーッとしてどうしたの?」

ユウ「あ、テルカちゃん。ただこの後どうしようかな? って考えてたんだ」

テ「そうなの? ……あ、そうだ! 何も予定がないなら私が学校案内してあげるよ!」


 ……選択肢が増えた。


 テルカちゃんの誘いは嬉しいのだが学校案内は既にシスコン兄上にして貰っている。


 正直、特枠調査よりも案内よりも校内のイベントに関わる場所を一人で確認しに行きたいと言うのが本音だ。言えないが。


ユ「テルカちゃんごめんね、学校案内はもう兄上にして貰ったんだ」

テ「そっかぁ……」

ユ「……だから、どちらかと言うとテルカちゃんの事の方が知りたいかな」

テ「?」

ユ「良ければ一緒に教室で喋らない?」

テ「! うん!」


 ……結局。


 可愛い友達と身の安全を取る事にしたチキンな私。


 遅れていた伝達が来るまでテルカちゃんとの友情を深めた。


 テルカちゃんは強そうな騎士さんが好みのタイプみたいだ。カイくん頑張れ!




 その後、伝達を頼まれていた人が慌ててやって来たので生徒会室に向かう。


 本当は特枠調査を生徒会室でやる決まりは無い。


 だが会長の珍しいもの好きという変な趣味のせいでちょっと遠い生徒会室で行われている。迷惑な話だ。



 さて、ここで今回出会う攻略キャラについて話そうか。


 まずは生徒会長のヒースについて。カリスマ性に溢れた学園の誇る生徒会長。奇人変人変態の三拍子が揃った天才なのか天災なのか生徒会一のトラブルメーカー。


 実際公式サイトでも、そう紹介している。まぁ要するに変な奴だ。


 変わった物に興味が尽きなく理由が分かるまで突き詰めたくなるという学者タイプだ。


 王子なんて煩わしい位は変人会長にとっては枷にしかなんないだろう。むしろ枷にもならないか……余裕で利用してるし。


 それで利用されているのが会長の幼馴染み兼お目付け役の不憫副会長、ウィル。


 変人会長が興味を沸かせてあっちこっちにふらふらするのを追いかけては尻拭いする役回りだ。かわいそうだ。


 よれよれになりながらも会長を支えようとする彼は、儚げな外見と合わさって更に悲しみを誘い。腐った女子をも誘うのではと製作陣では危惧もとい期待されている。


 そしてSっ気のある製作スタッフからは泣いたら一番可愛い子と評され愛されていた。哀れだ。

 流石、不憫の代名詞と王都でも噂のヒース会長のお目付け役だ。



「君がユウ・フジサキさんかな? えっと確か君は……」

「不幸体質との事だな。フジサキ領の事件、犯罪に高確率で関わると王都でも評判だったぞ。お前は探偵職に向いてるのではないか?」

「ヒース様ッ……! 失礼ですよ」

ヒース「? 褒めたんだが?」


ユ「……」


ウィル「大変申し訳ありません。フジサキさん、私はウィルと申します。早速本題に入らせて貰いますね。

事前に貰った資料では沢山の事件に関わっているとありますが、具体的に何かいつも兆候はあるのですか?」

ユ「えっと……あまり意識した事なかったです」


 てか、まず分からないです。


ヒ「夢渡りとか言う、人の夢から夢に渡れる奴が前に居たが、そいつは急激に眠くなることが多かったみたいだ。

魔力的な事が関わったとしても何度も起こる事に関しては大抵似たような兆候が少なからず起きてる、お前は気づかなかったのかもしれないがこれから意識していけば共通性が見えてくる筈だ。だから何か意外な事、違和感を覚えるような事は記録に残して置いて欲しい。なるべく早くがいいが、一ヶ月に一、二回は報告書を提出してくれ。一応言うがこれも成績に含まれるからな。早く治す方法を探る為にも協力して欲しい」


ユ「…………はい」


 ……長ぇ。この会長はちゃんと呼吸してるのか?

 言いたい事は分からないでもないが、如何せん長い。


ヒ「では、事件の事について詳細に聞いていく。まず赤子の時にコウノトリに拐われかけた、とあるがお前の両親はお前をどこに置いてたんだ……」

ユ「室内のベビーベッドです。一応貴族なので警備もバッチリです」


 あぁ、懐かしい。

 製作スタッフの中でユウの武勇伝作ったなぁ。考え付く限りのアホな、巻き込まれたら惨事だったりするけど端から見るとアホっぽいを目指して作ったよな……。


 ……今思うとよく通ったよな、企画書。



――――


ウ「本日はありがとうございました」

ヒ「ではまた早い内に会おう」


 バタン。


ユ「ふぅーーー……」


 深い溜め息が漏れる。ヤバイ会長の会話量が半端ない。変人会長の名は伊達じゃなかったようだ。しかし不憫な副会長はまだまだ不憫がエスカレートする余地が見えた。


 実際、変人会長がパワーアップする筈だからね……可哀想に。



 肩をグルグルしながら校内を歩く、うーん特枠調査に大分時間を取られたな……。

 全攻略キャラとの出会いイベ起こして分かったが、現実になった影響なのか大筋のシナリオからは外れないとしても皆、キャラの濃さが増量してる気がする。シルバ兄とヒース会長は特に。


 見せ場が後半に沢山あるとしても、もうちょいイケメン感のあるイベを前半に入れた気がするのだが……。


 変人、変態感が前面に出てるな……。これは好みが分かれてしまうかもしれない。


 そういえば、好みって話でよく話題になるのが主人公の性格の話だ。キャラが立ってる方がいいのか、あまり喋らない感情移入出来る主人公がいいのか……。

 個人的には乙女ゲームも少女漫画とかと同じ括りで一つの物語として見てるのでキャラが立ってるのが好みだ。

 だがそれはあくまで私の好みってだけで消費者の意見に合ってないかもしれない。製作陣ではキャラ立ちした主人公派が多数を占めてたから、カンタレラでは不幸体質というインパクトのある個性を持ってきた。だけどあまりに需要と遊離した供給は製作者のエゴに当たるよな……。



 あ、どこだここ?


 シリアスモードで考え込んでたら迷った。あ、今、私格好よくね? とか考えてたからいけなかったのか……? しかし既に迷子は森の中でとかいう流れが出来つつあるのは何故だ。気づいたら森なのは何故だ。


 だけど昨日みたいに長々歩かず変化はすぐに来た。


 ――小屋が見えたのだ。


 見た目は明らかに古い。例えるならデリバリーする魔女っ子が商品落とした所みたいな小屋だ。鳥はいないが。


ユ「……入れ、って事かなぁ……?」


 よくある怪談みたいにギギギッとドアが開く。止めようよ、そう言うことするの。いい歳したお姉さんギャン泣きしちゃうよ。


 怖々しながらドアを開く。

 これはシナリオにないが明らかに何かのネタになりそうな展開になると私のシックスセンスが告げたので私は前に進むんだと自分を励ます。昨日の反省を活かして心の中だけで。


ユ「あの……どなたか居ませんか?」


 どうしようここがデリバリーする魔女っ子に出てくる場所に思わせてヘンゼルとグレーテルに出てくる魔女の家的な感じの家だったら……。お菓子で出来てないし平気だよね? 閉じ込められて肥え太らされて食べられないよね?


ユ「あのー……」


 は、入るか。怖々と一歩を踏み出す。これは例え小さな一歩に見えたとしてもビビりにとっては大きな一歩なんd

「わぁあ!!」

ユ「ひぃやぁあああぁああ」

「お姉さん遊びに来てくれたの!?」


 嫌、やだ、知らないよ、呼ばれてないよ、遊びに来た訳じゃないし、君誰よ!? ビビりの偉大な一歩を返して! 私の数秒前の勇気を返してよ! 後ろからって卑怯だよ、幽霊の風上にも置けないよ!


「あれ? お姉さん、腰抜けた? 大丈夫?」

ユ「大丈夫じゃないかなぁあ!?」


 主に君のせいでね!


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