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第5話:みんなに甘やかされる私の、これから


シルヴェスター殿下の甘さには、今でも時々ドキドキさせられる。


「エルザ、今日は他国から取り寄せた珍しい果物が届きました。ぜひ食べてみてください」


「……また餌付けしようとしていませんか?」


「そんなつもりはありません。ただ、あなたが美味しいものを食べて嬉しそうにしている姿が好きなだけです」


「それを餌付けと言うのでは……?」


「そうですか?」


本人はいたって真面目な顔をしている。


……どうやら、この人はまだ私を餌付けすることを諦めていないらしい。

 

けれど、私の意思決定権を奪うことはない。


私が何かを決めれば、必ず尊重してくれる。

その上で、私が疲れていれば甘やかしてくれるのだ。


そしてコロンも、すくすくぷくぷく育っている。


さすが次世代の精霊王だけあって、私や人間では知り得ない植物の知識を、ナチュラルに教えてくれる。


「ママ、この葉っぱはね、こっちのお花といっしょにすると、もっと元気になるよ!」


「まあ。そんなことまで分かるの?」


「うん!だって、おはなさんが教えてくれるもん!」


……どうやら私は、とんでもなく優秀な助手を手に入れたらしい。


そんな平穏な日々を送っていたある日のこと。


「エルザ!」


突然、部屋の空気が七色に輝いた。


「まあ、ティターニア様!」


精霊女王ティターニア様が、満面の笑みを浮かべて姿を現す。


「コロンも元気そうですわね!」


「ティターニアママ!」


コロンが嬉しそうに飛びついていく。

ティターニア様がコロンの柔らかい頬に何度もキスを繰り返す。


「コロンはまた少し大きくなりましたね。

我が子が元気でいられるのも、全てエルザ、あなたのおかげです」


そう言って、ティターニア様は私の手を取った。


「あなたには、これからももっと幸せになっていただきますわ」


「え?」


「これまであなたは、我が子を大切に育ててくださったでしょう?」


「はい」


「ならば、今度は私があなたを甘やかす番です」


「……ええっ?」


その言葉に、隣にいたシルヴェスター殿下が静かに口を開いた。


「それならば、私も負けるつもりはありません」


「ぼくも!」


「コロンまで!?」


気がつけば、私は三人に囲まれていた。


「エルザ、今日は何が食べたい?」


「ママ、おひるねする?」


「エルザ、こちらのお花をご覧になって。この国には咲かない花よ」


「う、嬉しいですけど、ちょ、ちょっと!」


どうしてこうなったのだろう。


私は別に、特別なことをしたつもりはない。


植物が好きで。

研究が好きで。

目の前にいたコロンを大切に育てただけだ。


それなのに。


気がつけば、こんなにも大切にしてくれる人たちがいる。


神聖ルーヴェンス帝国も、今では改めて精霊王への信仰に重きを置き、人が奢ることなく、動植物と共存できる世界を造ろうと動き出している。


他者を思いやれる人たちもいれば、そうではない人たちもいる。


それを知っている私には、このまま穏やかな日々が続くようにと祈らずにはいられなかった。


けれど――


「ママ、だいじょうぶだよ!」


コロンが笑う。


「私たちがついていますから」


シルヴェスター殿下も、優しく微笑む。


「もちろん、私もですわ」


ティターニア様まで、胸を張った。


……どうやら私は、少し心配しすぎていたらしい。


この溺愛に包まれていれば、きっとこの不安も明日には消えている。


そうしたら。


もっと良い世界にするために。


私も、自分にできることから頑張ってみようと思う。


植物を育てることも。

新しい薬を研究することも。

大切な人たちと、この世界で生きていくことも。


草むしりとバカにする人たちはもういない。


ここから始まる私の新しい人生を、大いに楽しめる予感がしてる。


そして、それはきっと叶うはずだから。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

こうしてたくさんの方に見つけていただき、今とても感動しています。

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