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名もなき犬、異界の地にて名を馳せる  作者: イノセス


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51/60

51話〜君は優秀な斥候だね〜

 初日は簡単なレクリエーションで終わらせた我々は、箱根の街に1泊する。ここは水源の近くみたいで、簡易なシャワーもあった。

 女性陣が嬉しそうにしていた。試験に受かったら、ここを拠点にしようかなんて話し合っていた。

 

 そして、翌日。朝食を終えた我々は、正門の横に集まる。フィールドへ繰り出す冒険者達を横目に、試験官の説明を聞いていた。


『白のFランク魔石は1ポイント、灰色のEランク魔石は5ポイントです。この集めたポイントと、インストラクターからの評価で合否を分けていきます』


 3日間の試験期間中に、より多く、そして高得点の魔石かそれに類する収集物を集める。

 それが、三次試験のルール。二次試験は色々と複雑だったが、三次は狩るか採取するかのシンプルな物であった。

 でも、だから簡単と言う訳ではない。外は魔物が跋扈(ばっこ)する危険な世界。1ポイントを集めるだけでも、命懸けになる事も珍しくない。二次の比ではない難易度になっている。

 そう、試験官に釘を刺された後、俺達はフィールドへと繰り出す。

 優秀なインストラクターと共に。


「そんじゃ、俺達は君らの後ろから着いていくから。ヤバかったら迷わず頼って良いよ」

「ちょっとしたアドバイスくらいは出来るからね。不安だったら、バンバンお兄さん達を頼ってちょうだい!」


 優秀…うん。取っ付き易い良い人達だ。

 陽気に手を振る陽太を見上げ、ちょっとの不安を感じる俺。

 そこに、誰かが近付いてくる。


「よう、仲良しチーム」


 式守君だ。彼の後ろには、委員長もいた。

 寄りにも寄って、このチームに配属されたのか、天馬君。


「残念だったな。お前らは二次(ここ)までだ」

「あぁ?なんだとコラ」


 馬場山君が突っ込みそうになり、慌てて蜂須賀君達が止める。

 それを、式守君が「ふんっ」鼻で笑う。


「二次では運良く1位になっていたがな、この三次は実力のみが評価される。現に、俺らは優秀な人達に選ばれた。マグレじゃ冒険者になれねぇんだよ」


 式守君はチラリと向こうに視線を流し、彼らに付いたインストラクターを見る。

 確か、ドラグナーズとか言われていた人達だ。

 うちの仲良し兄弟より上なの?

 疑問に思う俺の頭上で、馬場山君が「はっ!」と威勢よく笑う。


「企業ランク1位をインストラクターにして、強気になってんのかよ?俺達が狩らねぇと、ポイントにはなんねぇんだぞ?」

「言葉を覚えろ、ゴリラ。ドラゲナーズが選んだのは1位のてめぇらじゃねぇ、俺達だ。そして、てめぇらに波多野兄弟が付いたのは知り合いだったからだけ。埋まってねぇんだよ、差は。俺とお前らとの圧倒的な実力差は、全くな。それを三次(つぎ)で見せてやる」


 式守君はみんなを睨みつけた後、俺を見下ろす。殺気にも似た怒気を飛ばし、彼のチームへと戻っていく。彼らは足早に、森の方へと向かって行った。


「何なんだ、あの野郎は」

「気にしたら負けだよ、ババちゃん。ほら、俺達も急がないと」


 苛立つ馬場山君を蜂須賀君が宥め、チームを森へと引っ張る。

 ナイスだ、蜂須賀君。やっぱり君は、このチームの潤滑油だな。


 俺も率先して先頭に立ち、みんなを引っ張る。そのまま雑木林の中に入った。

 途端に、後ろのみんなが緊張する。


「とうとう入ったね。ここに」

「分かってたけどさ、視界はあんまり良くないよね。弓は暫く封印かも」


 そうか。みんな森に入るのは初めてなのか。それは緊張するのも当然だ。森の方が、魔物との遭遇率が上がる気がするから。


「一方向ばっか見るな。俺が後ろを警戒するから、お前らは左右を警戒しろ」

「私は、ヴァルと一緒に前方を見ているわ」


 みんなは俺を先頭に一列となり、四方を警戒する。

 うん。そう言う緊張感は大事だ。俺も匂いと音で警戒しているけど、完璧じゃないからね。

 とは言え、大概の魔物はこれで事前察知できる。

 今も、11時の方向からこちらへ向かってくる何かの足音を捉えた。この重めの足音と獣臭さは…イノシシ系の魔物かな?


【来るよー!】

「「っ!」」


 俺の一声に、みんなが一段と緊張する。馬場山君が前に出て、両脇を蜂須賀君とシアンさんが固める。持田さんも前に出ようとしたけど…ユリ姉に止められた。

 まだ冒険者2日目だからね。後ろで戦い方を見学させるんだろう。

 じゃあ、先ずは俺が一番槍として…。


「ヴァルも、こっちにいらっしゃい」


 飛び出そうとしたら、ユリ姉に止められてしまった。

 …うん。いや、分かっていたよ。こうなることはね。


 有無を言わさないユリ姉の元へ、俺はスゴスゴと引き下がる。それを、一番後ろで見守る波多野兄弟がニヤニヤと見ていた。

 ああ、分かっているよ、貴方達の心情は。あの時、山の様に大きくなった俺が、今は飼い犬みたいになっているのがおかしいんだろ?でも、仕方ないじゃないか。

 2人に目線で訴えながら、俺はみんながイノシシ系の魔物を倒すところを遠くで見ていた。

 そこそこ大きなイノシシだったけど、馬場山君が突進を止めて、蜂須賀君とシアンさんが両脇から攻撃すると直ぐに倒れて、灰色の魔石を残して消えた。

 おお、見事な連携。


「レッドボアか。それなりの大きさだから、群れが近くにいるかもしれねぇな」

「おっ。なら、それも倒してポイントゲットだ」


 男性陣が周囲を探索する中、シアンさんが近づいて来る。俺の頭を優しく撫でた。


「ナイスだったね、ヴァル。匂いで分かったの?」

【それと音だね(ワウゥ)】

「そっか。君は優秀な斥候だね」


 いやいや。これくらい、犬なら出来て当たり前のことさ。

 シアンさんと戯れる前で、蜂須賀君が頭を掻く。

 

「近くにいる訳じゃなさそうだね。こっちの方角から来たから、こっちを探してみる?」

「まぁ、行くだけ行ってみるか。危険だから、ヴァルと持田は後ろの隊列だ」


 馬場山君達はボアが来た方角を探すらしい。

 確かにそっちから来たみたいだけど…そっちに居るとは限らないんじゃない?

 俺は彼らの後ろを付いて行きながら、周囲を警戒する。風上方向は匂いを、風下方向は耳を研ぎ澄ませて魔物を探る。


「…いねぇな」

  

 そうして暫く歩いたが、ボアどころか角ウサギ1匹遭遇しなかった。

 馬場山君が首を振る。


「こっちはダメだな。ヴァル。何か匂いはあるか」

【ちょっと待って(ウゥ)】


 頼られた俺は、気合を入れて周囲を探る。木々に付く匂いを嗅ぎ、地面に刻まれた僅かな足跡を探る。すると、小さな足跡を見つけた。匂い的にはゴブリンで、足跡の数からして4匹以上。

 悪くない獲物じゃないか?


【居たよ(アウ)、こっちだ(ワウッ)】


 俺は匂いのする方へとみんなを導く。そして、程なくしてゴブリンの集団を見つけた。8匹程が纏まって、森の中を歩いている。


「よし。よくやった、ヴァル」


 馬場山君まで褒めてくれて、俺の頭を軽く撫でるとそのまま、ゴブリン達に向って突撃した。大剣を振り回して、群れを両断する。


「おらぁ!」

「こっちは俺が!」

「じゃあ、あたしはこっち」


 馬場山君が蹴散らしたことで、ゴブリンの集団は散り散りになる。それを、みんなが各個撃破する。俺の方にも1匹、迷い込んだ奴がいた。

 ゴブリンか。器用性を上げたいと思っていたから丁度いいな。

 俺は駆け出し、ゴブリンの首筋に噛み付く。すると、牙を入れようとした瞬間に血が噴き出し、俺の口にはゴブリンの肉が切り取られていた。

 最早、このランク帯の敵は雲の様に軽い。きっと突進するだけでバラバラになってしまうだろう。

 兎に角、器用性を上げるために不味い肉を食らうか。


「ちょっ!ヴァル!ナニしてんのさ!?」


 ゴブリン肉を無理やり呑み込んでいると、後ろで悲鳴が上がる。振り返ると、目を丸くしたシアンさんが立ち尽くしていた。

 何って…肉を食べているだけだけど?


「魔物を食べるなんて、お腹壊したらどうするんだよ?ほら、ペッして」


 ええっ…。魔物の肉を食べるのって、普通じゃないのか?

 俺が困惑している間にも、他のみんながどんどん集まって来る。シアンさんが「ヴァルがゴブリン食べちゃった」と慌てて説明して、みんな顔を青くする。

 泣きそうなユリ姉さんが、俺の背中を摩る。


「ダメよ、ヴァル。そんなゲテモノを食べたりしたら、とても危険なことなのよ?」

「そうだよ。前にそれで立てなくなっちゃった人もいるって聞いたし、死んじゃった人もいるらしいよ?」

「ああ。マギ・ギラン・バレーとかって症状だったよな、確か」


 馬場山君まで心配そうな顔をしている。

 そうか。人にとって魔物の生肉は危険なんだな。ギランバレー症候群と言うのは聞いたことがあるけど、マギが付くのは初めて聞いた。でも、きっと同じ様に生肉を食べることで発症する感染症なんだろう。

 そりゃ、人が食べたらそうなるかもしれない。でも俺は犬だぞ?犬は元々、肉や骨を消化するのに特化した体だ。特に俺は、散々生肉を食べて来たんだ。

 そう訴えたいところだが、生憎その意志は伝わらない。それに、みんながこれだけ心配してくれるのに申し訳なくも感じる。

 心配を掛けたら不味いな。今度から魔物の肉は、こっそり食う事にするか。


【ごめんね、みんな(クゥウ~ン)。心配をかけて(アフ)】

「分かってくれたら良いのよ、ヴァル。次から気を付けて頂戴ね」


 姉さんが優しく抱擁し、そのまま俺を抱きかかえてしまう。

 ええっと…、もしかして暫く、俺は安静にしないといけないのかな?

 この過保護っぷりはどうにかしないと不味いぞ?と、俺はユリ姉さんの胸の中で考えた。

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いわゆるギャルゲー親友ポジ?と存在自体卑怯?な動物枠を擁し、癒し効果のある潤滑油がドバドバしてるw 自由行動可なら、第一次探索で雑種犬のまま斥候・進化後の威力偵察(カチコミ)で追い込み漁も出来るよ!…
うん良いパーティーだね。でも過保護だね、過保護過ぎるよね。 仲間として見てるなら、勝手に斥候認定は失礼じゃないかな? ワーウルフくらい見せてもいいけど、ポイントが魔石だし、オーバーキルだしで痛し痒しだ…
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