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名もなき犬、異界の地にて名を馳せる  作者: イノセス


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4/7

4話~冗談だろ?~

 折角の獲物が消えてしまった。

 透明になったって事じゃない。匂いも消えたし、踏んでみたけど何も無い。

 どう言う事だろうか。俺は確かにホーンラビットを仕留めたし、奴の血の味も覚えている。なのに、まるで氷が溶ける様に消えてしまった。


 うーん…。

 まぁ、取り敢えずはそう言う仕様だと思っておこう。今は先ず、思い出してしまった空腹を何とかしないと。

 俺は嗅覚に全神経を注ぎ、周囲を探索する。

 すると、川の匂いが鼻をくすぐる。


 そうだなぁ…。喉も乾いたし、川辺なら小動物も寄ってくるかも。俺の匂いも消せるし、良い狩場だ。

 俺は決断し、足早に川へと向かう。

 匂いではすぐ近くに感じたけど、結構距離があった。時計が無いから分からないけど、2時間くらい歩いた気がする。

 なので、着いた時は喉がカラカラだった。澄んだ川の浅瀬に入り、バシャバシャと夢中で水を飲んだ。


 かぁあっ!うめぇ!生き返るぅ。

 もっと深い所で体も洗いたいけど…川にも魔物がいるかもしれない。下手に踏み入るのは危険だ。ピラニアみたいな魔物がいたら目も当てられない。

 でも逆に、川魚がいたら儲けものだ。


 俺は川の中を窺う。人に汚されていない川は、川底まで見えるくらい澄んでいた。

 と、その時。


うん(ワフ)?】


 何か見えた。

 魚じゃない。何か白くて細い…糸…いや、これは、文字か?

 何か、川面に映っている。俺の顔か?


 よく見ようと目を凝らすも、流水で水面がブレる。なので、流れが留まっている場所まで移動した。

 そこで、改めて水面を覗いてみると…。


おぉう(ウゥ)冗談だろ(ワフ)?】


 俺はつい、笑ってしまった。

 そこに映ったのは、マヌケな1匹の黒犬。その顔の周りに、文字が浮かんでいたのだ。

 所謂(いわゆる)、ステータスって奴だ。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:5

HP:82

MP:64

物理攻撃力:84

物理防御力:32

魔法攻撃力:0

魔法防御力:34

俊敏性:88

器用性:32

スキル:ー〉


 HPとか攻撃力って、まるでゲームみたいだな。

 俺は楽しくなり、つぶさに水面を見つめる。顔を近付けたり、全身を映してみたりもした。でも、特に文字は変わらない。


 えっと、既にレベルが5になっているのは、ウサギとゴブリンを倒した影響?それとも、ここに来る前の分もカウントされてる?

 MPはあるのに魔法攻撃力は0なんだ。魔法はどうやって覚えるのだろうか。詠唱?魔法陣?それとも血か?

 HPが0になったら死ぬのかな?それとも、回復センターや教会に行ったら復活出来るとか?


 キュゥ〜…。

 知りたい事がいっぱいだったが、お腹の虫が現実を突きつけてくる。

 水では満足しなかったか。じゃあ、予定通り草むらに隠れて…。


【アァー!アァー!】


 っと、隠れる前に鳥が1羽、川辺に降りてきた。

 大きな鳥だな。俺と同じくらいの大きさだ。

 これは、食いごたえがある。


【アァ!?グァア!】


 そんな事を考えたからだろうか。鳥が慌てて飛び去ってしまった。

 …あれ?魔物なら普通、襲ってくるもんじゃないの?

 いや、もしかして今のは、魔物じゃなかった?この世界、普通の動物も居るのか?

 ああ、またやっちまったと、俺は前足で目を覆った。


 でも、また直ぐに立ち上がる。

 動かなければ、飯にありつけない。ここにはもう、餌を与えてくれる人はいないんだ。自分で狩らねば。

 俺は今度こそ、草むらの中に身を隠して獲物を待った。ここなら、周辺の河原を見渡せる。こっそり近付いて、奇襲も出来る。

 さぁ、来い。獲物ちゃん。出来たらウサギとか、さっきの鳥とかが嬉しいな。


 そうして暫く身を隠していると、ホーンラビットの群れがやって来た。4羽が身を固め、川の中に顔を突っ込んでいる。

 うん。悪くはないけど、4羽か。あの中に飛び込むのは危険だな。1羽に気が行っている時に、側面からブスッ!なんてされたら、一巻の終わり。

 回復手段が分からないんだ。怪我したら、それだけで命取りになる。

 なら…頭を使わないとな。

 

 俺はこっそり河原の石を口に咥え、それをなるべく遠くの草むらへと放り投げる。

 カサッ!

 石が落ちた音で、小さく草が揺れる。それを見て、ウサギ達はそちらに気を散らす。角を突き立て、石が落ちた方へと突っ込んでいった。

 でも、全員じゃない。1羽だけ、呑気に水を飲み続ける個体がいた。


 作成大成功。1羽でも歩調を乱せばラッキーと思ったが、まさか別行動を取るとは。

 知らないのか?独りだけ別行動ってのは、死亡フラグなんだよ?


 俺は草むらから飛び出し、河原を駆ける。その音でウサギが振り返るが…大丈夫!魔物は逃げないから。


【ピピッ!】


 ウサギが振り返り、構える。後ろ足に力を溜める。

 まだ溜める。溜めて、来る!

 俺はそれに合わせ、横にステップ。白い体が横を通り過ぎると同時に、ガブリッ!


【ピ…】


 絶命したウサギを咥え、俺は元の茂みに隠れる。そこで、素早く死体にかぶりつく。

 急がないと、無くなっちゃう。毛とか小骨とか気になるけど無視だ。口に入る物は、何でも噛み砕いて飲み込むんだ。


 そうして急いで食べるから、周囲をかなり汚してしまった。口元にもベッタリ血が付いている様子。

 でも、それも徐々に消えていく。目の前の死体が消えていくのと同時に綺麗サッパリ。残ったのは、やはり小さな石と角だけ。他は全て消えてしまった。

 俺の腹に入った、ウサギの肉以外。


うん(ワウ)


 2口くらいしか食べられなかったけど、取り敢えず腹の虫は治まった。食べた肉まで消えて、空腹感が満たされなかったらどうしようかと思ったけど、そうはならなかった。

 自分の血肉にしてしまえば、消えないのかな?


【ピィ?】

【ピピ?】


 安堵していると、河原にウサギ達が戻って来ていた。

 仲間を探しているみたいだけど…悪いな。もう俺の腹の中だ。そして、次は君達の番だ。

 俺は再び、小石を咥えた。



ふぅう(ワフゥ)〜】


 4羽のウサギを胃袋に収めて、俺は漸く満足した。

 若干食べ過ぎた気もするが…向こうから襲ってくるのだから仕方がない。次に何時ありつけるか分からない世界だし。

 満足し、また川で水を飲む。ついでにステータスも確認すると…うん?

 俺は首を傾げる。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:6(前回値+1)

HP:83(+1)

MP:65(+1)

物理攻撃力:85(+1)

物理防御力:33(+1)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:35(+1)

俊敏性:92(+4)

器用性:33(+1)

スキル:ー〉


 あれ?なんか、能力値の上がりショボくない?俊敏性以外は、全部0か1だよ?こう言うのって、普通は2〜5くらい上がるものじゃない?

 これって、俺が犬だからか?それとも、レベルの上限がかなり高く設定されているとか?


【ギギ】


 驚いていると、向こうの河原に1匹のゴブリンが現れた。仲間も連れず、武器も粗末な木の枝だけ。

 腹は満ちているけど…そうだな。ちょっと試してみよう。

 俺は奴の背後に周り、静かに飛び出す。まだ気付かない奴の首筋を、思いっきり噛み砕く。

 

 そして、再び水面を覗くと…。


えっ(ワフ)?】


 俺は驚く。

 ステータスが、こう表示されていたから。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:7(+1)

HP:83(+0)

MP:66(+1)

物理攻撃力:86(+1)

物理防御力:33(+0)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:35(+0)

俊敏性:94(+2)

器用性:33(+0)

スキル:ー〉


 なんと、殆ど成長していない。成長株だった俊敏性すら、成長率に陰りが出てきた。

 もしかしてこの世界、かなりハードモードなのかも…。

レベルが意味を成していない?

それとも、今のステータスが既に強い?


「強くは無かろう。ゴブリンに苦戦しておるからな」

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― 新着の感想 ―
ハンティングに関しては流石の異世界慣れプレイヤー?スキルw4匹獲れば消える前の早食いでも満腹なのか 角はともかく魔石っぽい何かを収納出来ないのは残念?いきなり食べる事とかチャレンジするよりはマシかw …
相変わらず雑な転生、不親切なユーザーインターフェースですねぇ・・ メーカーアナウンスとアプデと詫び石が無いと暴動が起きるレベルですよw きっと10レベルごとにボーナスがあると信じて頑張りましょう。
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