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名もなき犬、異界の地にて名を馳せる  作者: イノセス


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30/60

30話〜シェル・プレス〜

 ズドーン…。ズドーン…。

 俺達が向かう先で、幾つもの爆発が起きる。風が運んでくる臭いには、明らかに火薬と重油の臭いが混じっていた。

 人間達の仕業だな?まさか、異世界にまで現代兵器を持ち込んでいるのか?


 これじゃ、俺達の出番は無いのでは?と思いながらも走っていると、徐々に爆発音は少なくなっていく。そして、微かに人間達の悲鳴が聞こえた気がする。

 苦戦しているのか?トランプルマンモスとは、それ程の脅威なのか。


【総員(ワン)!深入りはするな(ウフ)?自分と仲間の命を第一(ワウゥ)に考えろ!】

【【ワオーン!!】】


 意思統一を図り、俺達は草原をひた走る。やがてマンモス達が巻き上げた土煙の中に入り、奴らの姿を捉える。

 やけに興奮しているな。俺たちが近付いても、全く意に介した様子が全くない。イノシシみたいに、走る事しか考えていないのか。


【総員(ワン)!無闇に攻撃するな(ウゥ)。お前達は先ず(アウ)、魔石の回収に意識を割(ワウ)け!】

【【アオゥ!】】


 俺達は臭いを頼りに、土煙の中を走り続ける。

 そして抜ける。

 抜けた途端、周囲が良く見える。目の前には、10式の戦車団が砲台をこちらに向けており、その手前にはマンモスの死骸が転がっている。

 そして、更に彼方には永遠と続く壁が広がっている。

 明治神宮の街。まだ突破された様子はない。

 しかし…。


【戦車まで持ち出しても(ウゥ)、苦戦するとはな(フウ)】


 踏み潰された戦車の残骸を見て、俺は唸る。これ程までに魔物は強力なのかと、恐怖を覚える。

 そして、それをやってのけたであろう巨大なマンモスに、狙いを定める。

 こいつが親玉か。戦車の砲撃も防いでいるみたいだし、こいつがいるから苦戦しているのか。


【総員(ワン)!死骸から魔石と肉を回(ワオ)収せよ。決して、ボスには近付(ウゥ)くなよ!】


 俺は厳命し、ボスマンモスの体によじ登る。

 ぐっ、爪を立てても登り辛い。器用性を上げていないからか。ちゃんと、ゴブリン系も食わないとな。

 仕方ない。


【進化ぁああ(ワォオオ)!】


 俺は第一進化し、ワーウルフの腕で無理やり登る。その最中にも、戦車から砲弾が飛んでくる。マンモスの体が揺れ、危うく振り落とされそうになった。

 でも、無傷だ。砲弾は全て、ボスが防いでいた。土の壁を作り、弾き返していた。

 魔法も使うのか。カバより厄介だな。


 俺は何とか登るきり、ボスの背中に乗る。

 まるで、攻城櫓(こうじょうやぐら)に乗った気分だ。あれだけ大きかった壁が、少し小さく見える。

 俺は魔力を消費し、魔力を牙へ回す。スキルも使い、最大火力でマンモスの首筋に牙を突き立てる。

 でも、


【がっ(ガッ)!?か、硬い(ガルゥ)…】


 全く歯が立たない。試しに爪を立ててみたが、根元から折れてしまった。

 おいおい。俺って今、攻撃力500越えだぞ?こいつ、亀の甲羅並の防御力してるのか?

 で、あるなら…。


【第2進化だぁああ(ガルゥウウウ)!!】


 魔力をごっそり奪われながらも、俺はクストフへ進化する。そして、牙に回していた魔力も全て、甲羅へ回す。防御力を上げ、甲羅の棘をより強固にする。

 ドリルの様に尖らせる。


【この防御力ならどうだ(グハハハ)?マンモスの王(グフ)】


 防御力1800越えの暴力スタッツ。更にこの重量を活かし、俺は思いっきりジャンプする。背中をクルリと見せて、そのまま垂直に落下する。

 喰らえ。


【シェル・プレス(ガッハハァ)!】


 全体重を乗せた俺の一撃は、深々とマンモスの皮膚を貫く。ブシュッと、返り血が空に飛び散った。

 大地が、震える。


【バォオオオオオン!!】


 ボスマンモスの悲鳴。前足を大きく上げて、特大のウィリーをかます。痛みで鼻をブンブンと振り回した。

 効いている。こいつは良いぞ。

 俺は手応えを感じ、ボスが前足を下ろすと同時に再びダイブを敢行しようとする。

 でも、再びジャンプしようとした矢先、頭上に影が掛かる。何かと思って見上げると、それは高々と掲げられたマンモスの鼻だった。

 鼻が、俺の方へと猛スピードで迫る。俺の体を、バシンッと弾き飛ばした。


【ぐはっ(グハッ)!】


 圧倒的な体格差に、俺は背中から地面へと叩きつけられる。ダメージを負った感じはしないが、落下の衝撃で目が回ってしまった。

 そして、漸く視界が定まると、目の前には左前足を持ち上げたボスマンモスの姿が。奴はお返しとばかりに、その足で俺を踏み付けようとした。

 やばっ!潰される!?


 俺は慌てて逃げようとするが、起き上がるので時間がかかってしまう。

 ダメだ。クストフでは俊敏性が足りない。潰される!

 俺は丸くなり、衝撃に備えた。

 けれど、


 ズバババンッ!!


 衝撃が来るより先に、頭上で爆発が起こる。見上げると、マンモスの体に幾つもの黒炎が上がっていた。

 戦車団だ。

 まるで俺を庇うかの様に、ボスマンモスの左前足に集中砲火を当てていた。

 その余りの威力に、ボスマンモスはバランスを崩し、大きく後退した。


 よし。今だ!

 俺はその場から脱出し、ハウンズと合流する。彼らからマンモスの魔石を受け取り、それを一気に口の中へ。

 おおっ。熱いものが体の中を満たしていく。まるで玉龍の仙豆だな。1粒で力が漲ってくる様だ。


 魔力を回復した俺は、再びワーウルフに退化し、ボスマンモスに近付く。俺が準備している間も、戦車団が砲撃でマンモスの注意を引いてくれていた。

 助かった。ありがとう。

 

 俺はマンモスの体に取り付き、また背中を目指す。その間は、戦車からの砲撃が止んでいた。

 完全に、俺のサポートに回ってくれている。

 人間が味方とは、心強い。


 俺は背中に登りきると同時、再度クストフに進化する。先程シェルプレスで傷付けた場所へ行き、今度は背中ではなく牙に魔力を回す。

 傷は少しずつ塞がっていたけれど…完全じゃない。まだ生々しい穴が空いている。

 そこに、顔を突っ込む。見えている肉へ、食らいついた。

 ガブッ!


【バァアアオオオオオオオン!?!】


 世界がひっくり返っているのかと思う程、ボスマンモスは暴れる。俺は傷口に顔を突っ込んでいるので見えないけど、物凄い風圧遠心力を感じる。振り落とされない様、爪にも魔力を送ってしっかりとしがみ付く。

 そして、喰らい続ける。ボスマンモスの肉を、パワーを、ステータスを。

 その力、頂くぞ!


 ズババンッ!!ズバーンッ!

 下で複数の爆発音が聞こえる。今がチャンスと思ったのか、戦車団が砲撃を再開した様だ。

 その影響か、ボスの大暴れが収まる。振り落とされる心配が減り、俺は更に食べ進めようとした。

 でも、止まる。俺の体に、何かが巻き付いた。

 何が?

 見ると、マンモスの鼻が、俺の下半身を掴んでいた。

 そして、思いっきり引っ張られる。振り回される。俺の体は、空中に投げ出される。物凄いスピードで、戦車団へと突っ込んでいった。

 不味い!戦車とぶつかる!


【退化ぁあ(グァアア)!】


 間一髪、俺は野良犬に退化する事に成功する。でも、岩を纏った体に突っ込まれた戦車は、車体を大きく凹ませてしまう。

 うわっ、やっば!12億円の戦車を、傷モノにしちゃった。

 弁償とか出来ないぞ?


「車長!亀魔獣が、犬に!」


 ショックを受けていると、戦車のハッチが開いて自衛隊員が顔を出す。俺を見て、大きく目を見開いた。

 おぉう。こっちもヤバいな。完全に正体がバレた。


「ハッチを閉めろ、白石!奴が来るぞ!」


 戦車内部から、悲鳴が上がる。その声で後ろを見ると、ボスマンモスが動き出していた。鼻を高く掲げ、全身が薄らと光っている。

 そして次の瞬間、地面の一部が持ち上がり、ボスマンモスの体へと纏わり付いた。全身を隈なくコーティングし、分厚い泥パックを纏った状態になった。

 

 ボスの目が、こちらを向く。怒りに満ちたその瞳が、こう訴えていた。

 お前らを、殺すと。


【バォオオオオン!!】

【パォオオン!】【ファォオオン!】


 マンモスの大行進が再始動する。こちらへと、凄い速さで迫ってくる。

 それに、戦車団は後退する。10式特有の高速移動を行いながら、砲撃も開始した。

 うぉっ!ふざけんな!

 その爆音に押し出され、俺は戦車から転げ落ちる。慌てて体勢を整えて、迫り来るマンモスの足元をすり抜ける。


 ズバンッ!ズババンッ!

 背後では砲撃が続く。でも、全身を魔法で覆ったボスマンモスには、全く効いていない。ただ、奴らの注意を引いてしまうだけだった。

 あれでは、勝てない。俺の牙も、きっと同じだ。


 俺は、遠ざかるボスマンモスの背中を見る。かなりの深手を負わせた筈だが、その傷もコーティングで見えなくなっていた。

 ダメだ。俺ではもう、奴にダメージを与える事も出来ない。

 今の、俺では。


【アオーーン!】


 マンモス達を見送っていると、ハウンズが駆け寄ってきた。俺を心配しているみたいで、頻りに匂いを嗅いでいる。

 ありがとう。大丈夫だよ。それよりも…。


【ちょっと手伝ってくれ(アウアウオ〜)】

【【アオン!】】


 了解とばかりに、ハウンズは動き出す。

 頼んだぞ。マンモスが街に到着する前に、間に合わせなければ。

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― 新着の感想 ―
主人公 with 戦車がボスマンモスとの死闘を演じる間に、マンモスの群れが町へ突入する事態は避けられたか 質量のアシストも加味してるだろうけど、防御力をダメージへ変換する技扱いなのだろうか?クストス…
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