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名もなき犬、異界の地にて名を馳せる  作者: イノセス


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19/60

19話~俺は岩だ~

 それから数日、俺は亀を狩る生活を続けた。

 幸いにも彼らは、俺が仲間を食べても逃げようとせず、その重厚な甲羅に閉じこもるばかりだった。

 そして、魚におびき出されて首を晒す。

 チョロい。チョロいぞ、岩亀達よ。

 そのお陰で、俺はお腹がいっぱいになるまで亀を食べ、お腹が減るまで走り込む生活を続けた。

 その結果が、これだ。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:42(+0)

HP:131(+0)

MP:155(+21)

物理攻撃力:254(+0) 【+50】

物理防御力:325(+222)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:119(+42)

俊敏性:176(+0) 【+50】

器用性:48(+0)

スキル:瞬発力(小)、剛腕(小)〉


 防御力、300越え。

 やり過ぎた。今まで一番高かった攻撃力を軽く上回り、数日前と比べたら数倍の防御力を手にしてしまった。

 今なら、剣で斬りつけられても致命傷は避けられるだろう。あの剣士に再戦を申し込みたい気分。

  

 でも、まだやるよ。食べ始めた当初より上昇率は落ちたけど、まだまだ数値は上がっているから。

 ただ今日は、亀肉以外も試そうと思っている。それが、これだ。


 俺は穴を掘り、そこに隠していた亀のドロップ品を掘り出す。そこから出てきたのは、こぶし大になった岩。亀の背中に乗っていた岩の一部だ。

 これが亀のドロップ品。甲羅の一部を残す個体もあったけど、大概はこの岩を残した。


 こんなもの、食べられるのか?

 これを見たばかりの頃、ゴブリンのボロ切れと一緒で、こいつは加工用の素材だろうと捨てそうになった。

 でも、思い出す。

 そういや、アフリカの方では石を食べる人がいるって聞いた事がある。老人だったか妊婦だったかは忘れたけど、石にも栄養があるって事だ。

 それにこれは、亀の甲羅に生えていた物。ただの岩ではない。もしかしたら甲羅と一緒で、亀のあばら骨の一部なのかも。

 カルシウムであれば、食べられる。角や牙と一緒で、俺の武器になってくれる可能性大だ。


 俺はそう言い聞かせ、岩に食らいつく。でもやはり、めちゃくちゃ硬い。進化した牙でも跳ね返される。

 これは無理だな。今のままだと、俺の牙が先にイカれる。剛腕のスキルランクが上がるくらい顎を酷使したから、そろそろ休ませてやらないと。


 でも、ならどうする?諦めるか?

 いや。俺は是非とも、この岩を食べたい。防御力は高まったけど、体には全く変化が無いからね。期待していた岩の様な肌は、まだ得られていない。きっと、こいつを食えば何かが変わる。

 俺は必死に考える。ぺろぺろ舐めれば、ちょっとは成分が溶け出さないかな?と思って舐めてみた。


 うーん、鉄の味がする。これはもしかして、あれならイケるんじゃないか?

 俺は一つ思い付いて、周囲を見渡す。でも、良いものが無い。

 そりゃそうだ。こんな草原に、アレを生み出す道具なんてない。ならば…。


 俺は走り出した。河原を離れ、草原に入る。

 俊敏性が高いので、まるで地面を飛んでいる感覚だ。偶にホーンラビットが飛び出して来るけど、俺の速さにはとても追いつけない。

 随分と強くなったものだな、俺も。


 そうして駆け抜けた先は、廃墟。

 俺は堂々と正面から入り、大きな街道を悠々と進む。

 すると、


 ヒュンッ。

 風切り音。そして、暫くして俺のお腹に小さな衝撃が加わる。

 見ると、矢が落ちていた。俺の腹に当たり、折れてしまったみたいだ。

 流石は防御力300。弓矢程度じゃ傷1つ付かない。


 俺は矢が飛んできた方へと駆け寄る。すると、複数のゴブリンアーチャーが逃げ惑う背中が見えた。

 俺は軽く走り、奴らに追い付く。軽く小突くと、なりふり構わず逃げて行った。

 奴らが使っていた、弓まで落として。


【そうそう(ウゥウゥ)。こういうのが欲しかっ(ワウゥワウワウ)たんだよ】


 俺は弓を咥え、ついでに廃墟から金属製の歪んだ鍋も頂いて河原に戻る。周囲で使えそうな物を集めて、それらを河原に並べた。

 弓、歪んだ鍋、太い枝、細い枝、枯れ草、松ぼっくり。

 それらを並べると、俺は進化して手早く準備を進める。

 今から俺が行うのは、火起こしだ。


【さて(ワゥ)、では先ず(ワウゥ)…】


 太い木の枝の中で、特に太い奴の表面を爪で削る。攻撃力が500以上あるからか、枝が豆腐の様にスパスパ切れる。

 あのツンツン頭の青年を殴る時、爪をしまって正解だったな。もしも出してたら、この枝みたいにスッパリ行っていただろう。


 そうして1枚の板を作り出すと、少し凹みを作ってそこに木の棒を添える。そして、その木の棒に弓の弦を巻き付ける。

 弓切り式って奴だ。ただ手でクルクル回すより、火が付きやすいんだ。


 俺は弓を押し引きして、摩擦熱を生み出す。防御力が高いからか、棒を押さえる手の平も全く痛くない。だから、もっと高速で弓を引ける。

 そうして高速弓切りをすると、簡単に熱が生まれる。松ぼっくりと枯れ草を燃やして、すぐさま細枝にも燃え移った。


 まさか、こんな簡単に火を作れるとは。前にやった時は、もっと時間がかかったのに…。

 高ステータス様様だな。


 火が付いてしまえばこっちのもの。火の周りに石を積み上げて暖炉を作り、枝を組んで火の勢いを上げる。鍋で川の水を汲み、それを火の上に乗せれば完成だ。後は枝と空気を追加すれば、直ぐにでもお湯が沸く。そこに、亀の岩を投入だ。

 ドボンッ!

 あっち。お湯が跳ねた。こういうのは、防御力300越えでもダメージ喰らうんだな。


 折角の鍋なので、俺は岩以外にも具材を投入する。亀の甲羅に、小魚。毒性のないキノコに亀の肉。

 亀肉だけは、3分もしない内に消えてしまうので、湯通しして白くなったら食べるを繰り返す。

 そうして暫く煮込んだ後、鍋を外す。冷めるのを待ってから飲んでみる。すると…。


【う〜ん(クゥ〜ン)…不味い(ウゥ)】


 想像以上に鉄臭い。まるで血を飲んでいるみたいだ。具材を入れ過ぎて濁っているのかと思ったけど、これきっと岩から溶けだした成分だ。

 でもそれは、俺の予想通りになっていると言う事。俺はちゃんと、岩を食べられていると言う事だ。


 そう自分に言い聞かせ、鍋を平らげる。最後に残った岩は一回り小さくなっており、少しだけ軽くなっていた。

 成分が抜けた証拠だよな?さて、ステータスに変化はあるかな?

 俺は跳ねそうになる心を抑えながら、水面を覗く。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:42(+0)

HP:131(+0)

MP:156(+1)

物理攻撃力:254(+0) 【+50】

物理防御力:328(+3)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:121(+2)

俊敏性:176(+0) 【+50】

器用性:48(+0)

スキル:瞬発力(小)、剛腕(小)〉


 ちょっと防御力が上がった?

 いや、これは亀を1頭食べたからだ。岩の効果じゃない。

 そう言えば、ホーンラビットの角の時も、翌日に効果があった。今日は寝てしまって、また明日確認しよう。


 そう判断して、俺は巣穴を掘って寝る。

 そして翌日、俺は嬉々として川を覗く。まだ変化はないけれど…。


【岩だ(ウウ)。俺は岩だ(ワウゥ)。岩よ、俺を覆え(ワウワウゥ)】


 俺は念じる。

 ウサギの時も、それで角が出現した。今回もきっと。

 そう信じて念を送ると、顔にちょっとした変化が現れる。

 額が禿げだしたのだ。


【うぉおお(ワオォ)!】


 この反応は!

 試しに触ってみると、硬い。まるで石の様だ。試しに水面を見てみると…物理防御力が330(+2)になってる!


【来たぞ(ワン)!】


 俺は雄叫びを上げて喜び、すぐに動き出す。

 朝食の準備をする為、火起こしセットをかき集めた。

 さて。先ずは鍋を用意しよう。それでもっと岩を食べて、俺は新たなステージへ上がるんだ。

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― 新着の感想 ―
この世界のダンジョンでモンスターポップの現場を見ていない(多分)ので、ゴブリンや亀が絶滅寸前で辛くも 少し生き残ってるのか、消えた傍からどんどん湧いてるのかは謎ですが、亀はスルメのように息の長い食材ね…
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