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名もなき犬、異界の地にて名を馳せる  作者: イノセス


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13/60

13話~大体確認したかな~

 式守プロがゲートに入るのと入れ違いに、ゲートから自衛隊の人達が出てきた。そして、広げっぱなしだったコンテナを回収し、車に乗って帰って行った。

 彼らは冒険者ではなくて、完全に荷物持ちとして来ていたみたいだ。

 じゃあ、式守プロたちは今、数人の仲間と原始的な武器だけで冒険に出ているって訳か。現地調達した、魔物の素材で。

 それだけ、あの超重量の大太刀が相当な業物だったってことだろうな。


 小さくなっていくトラックの背を眺めていると、俺の頭に手が乗る。

 警備員で、元冒険者の武藤さんだ。


「よく吠えも逃げもせずに座っていたな、お前。式守プロの魔力を受けたら、飛んでるカラスですら落ちて来るんだぞ?」


 ああ、あの威圧って魔力だったのね。それで落ちてくるって、まるで某漫画の覇気みたいだな。

 

「もしかしたらお前も、優秀な冒険者になれるかもしれんな」


 済みませんね、武藤さん。もう既に俺は、冒険に出ているんです。

 野良ですけど。


 暫し武藤さんに撫でられた俺は、しめ縄の神社を後にする。そろそろ夕方だから、柏神社のゲートに入れる時間だ。

 なのだが、俺は途中で寄り道をしていた。商店街の路地裏で、ゴミ捨て用のポリバケツの中を覗いていた。

 ん~…丁度良いのは無いかなぁ?


 寄り道をしまくった俺だったが、日も落ちた頃に漸く何時もの場所に戻って来た。口には、ひびの入った折り畳み式の手鏡を加えて。

 明治神宮の人達だけでなく、あの式守プロまで腰に下げていたからね。俺が思うに、これはきっと、あれで使う物だ…。

 期待を胸に、俺は柵を軽く飛び越えてゲートの中へ。途端に、体が軽くなる。まるで重力1/6の月面に降り立ったかのようだ。

 …月に行ったことは無いんだけど。


 これが魔力かと思いながら、瓦礫の合間を潜り抜ける。月明かりが差し込む広場に到着すると、先ずは匂いを嗅ぐ。

 相変わらず浮浪者のようなゴブリン臭がするけど、随分と薄くなっている。少なくとも、この周囲からは遠ざかったのかな?

 安全を確認した俺は、早速手鏡を地面に置いて自分を映した。思った通り、俺の顔の周囲に文字が浮かび上がっていた。


〈ステータス

種族:雑種犬

LV:26(+1)

HP:123(+0)

MP:85(+1)

物理攻撃力:126(+1)

物理防御力:57(+0)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:45(+0)

俊敏性:138(+2)【+20】

器用性:40(+0)

スキル:瞬発力(極小)〉


 なるほどね。水面でなくとも、自分の姿が映る物であればステータス確認が出来ると。だからみんな、手鏡を腰からぶら下げて冒険に出ていたんだ。

 そして、ちょっとだけレベルが上がっているのは、ゴブリンヒーローを倒した影響だろう。1だけだが、オークでは上がらなくなったレベルが上がったと言う事は、それなりの強敵だったみたいだ。

 武具の性能だけじゃなかったのね。


【さて(ウゥ)】


 では試してみようか。

 俺はあの時の感覚を思い出す。体の内で湧き上がったあの熱を。そして、強くありたいと言う感情を。

 ここはゴブリンの巣。モタモタしていると、面倒になる。だから…早めにやらねば。


【ぐっ(ウッ)】


 来た。熱だ。

 腹の底から湧き上がる熱を感じ、それが全身を包む感覚を覚える。腕が伸び、筋肉が盛り上がり、地面が見る見る離れていく。

 地面に置いた鏡が、異形となった俺の姿を映し返す。

 

〈ステータス

種族:ワーウルフ

LV:26(+0)

HP:246(×2)

MP:105/125(×1.5)

物理攻撃力:252(×2)

物理防御力:82(×1.5)

魔法攻撃力:0(+0)

魔法防御力:65(×1.5)

俊敏性:138(+0)【+20】

器用性:40(+0)

スキル:瞬発力(極小)〉


 ワーウルフ。

 種族自体も変わり、ステータスも軒並み倍近い成長を遂げている。

 ゴブリンヒーローとの戦闘でも爆発的な戦闘力が出せたから、かなりの物と思っていたが…まさか2倍の攻撃力とは。

 能力値の伸びを見るに、恐らくこれはオークの肉の影響が強いと思う。攻撃力とHPの伸びが良く、俊敏性と器用性は全く動いていない。オークの肉を食べた時と似た方向性の反応だ。

 そう言えば、あの熱が出たのもオーク肉を食べまくった時に出ていた。つまり、進化の鍵は魔物の肉。

 一定数食べたからか、同じ種族ばかりを食べたからか。まだ法則性は分からないけれど、方向性は分かって来た。


 そして…。

 俺はステータスの一部に目を向ける。MPの欄が徐々に下がっているのだ。

 〈105→104→103…〉

 一定の間隔で下がっている。時計が無いので正確には分からないが、俺の脈で計ってみると、2回の鼓動でMPは3下がっていた。

 犬の脈は人間より早いが、今の俺は人間と同じくらいかそれ以上の大きさだ。脈の速度も人間以下と思った方が良い。つまり60秒に40~50回くらい。1秒に約MP1の消費か。 

 …えっ?2分しか持たないの?俺の進化って。ウルトラ○ンより厳しいタイムリミットだな。


 こりゃ、急いでMPを育てないと不味いぞ?

 俺が危機感を覚えていると、周囲でガサゴソと音がする。次いで、生乾きの嫌な臭いが鼻を突く。


【ギャギャ】【ギギ】


 ゴブリンだ。丁度良い。

 顔を出したゴブリン2匹に、俺は襲いかかる。罠だとは分かっているが、今の俺なら多少の奇襲くらいはどうって事ない。

 そう思ってゴブリン2体を始末したが、特に追撃が来る様子はない。前回ならここで弓矢が飛んできたと思ったが、何処からも殺気が飛んで来なかった。


 もしかして、ボスをやられたから連携が弱体化している?今のゴブリン軍団は烏合の衆なのか?

 分からないが、襲って来ないのは好都合。俺は落ちた2つの魔石を拾い、1つを口の中へ放り込んだ。

 ほいっ。パクっ。ガリガリ。ゴクンッ。

 すると、MPの欄で変化があった。


〈MP:82→81→90→89…〉


 ふむふむ。ゴブリンの魔石はMPの回復量が10か。思ったより少ないけど、定期的に魔石を食べれば進化は継続出来る。

 魔石を何処かに貯められたら、もっと進化し易いんだけど…。

 

 俺は進化を解除し、周囲を探索する。すると、泥だらけの巾着袋を見つけた。取り敢えず、探索中に倒したゴブリンの魔石をその中に入れて、口に咥える。そして、悠々と廃墟を出た。 

 先ずは河原を目指そう。巾着袋を洗って、ついでに体も洗いたい。現代日本だと、丁度良い川や噴水が少ないからね。こっちで飯と風呂を堪能するんだ。

 

 

 やってきたのは、前回と同じ河原。進化したらワニは何とかなると思うから、あとは頭上から赤龍が飛来するのを注意したら良い。

 俺は川に入り、巾着袋と体を洗う。十分綺麗になったら、一旦河原に戻る。そこで再び進化した。


 安全なここで、実験の続きだ。魔石も十分にあるし、この姿なら魔石を掴むのも楽にできる。

 俺は手鏡を片手に、自分のステータスを確認する。

 先ずは、消費MPの確認からだ。


【ふんっ(ガフッ)!せいっ(グルッ)!】 


 拳を振るい、シャドーボクシングを行う。

 どうだ?

〈MP:88→87→86…〉


 ふむ。変わらない。全ての行動で魔力を使う訳ではないか。

 なら…爪を短くして、牙に集中!

 どうだ?

〈MP:85→79→78…〉


 ほうほう。やはり魔力の移動はMPを使うのか。なら、今度は進化を解除して…もう一度進化!

 どうだ?

〈MP:76→55→54…〉 

 

 おお。一気に20も減った。

 これは廃墟で進化した時と同じ量。つまり進化に必要な魔力は一定…かどうかは分からんな。ワーウルフだから20なだけかもしれないし。


 では次は、スキルを使ってみようか。

 俺は進化した状態のまま、野原を掛ける。途中で足に力を入れて、スキルを発動する。

 すると…。

〈MP:45→44→43…〉

 減らない。スキルでもMPは減らない。スキルって、魔法じゃないのか。


 そんな風に驚いていると、ちょっと寒気を感じる。MPを見ると…31。およそ3割で体調に変化が生じるみたいだ。

 俺は急いで河原に戻り、巾着袋を拾い上げる。そこから魔石を1粒摘みして…食べずに手鏡を凝視する。MPがジワジワ減っていき、徐々に頭が痛くなってきた。

 今のMPは22。約2割で頭痛が始まった。そして、1割を下回ると…。


【ぐぅっ(クゥッ)!】


 頭痛が激しくなり、目が霞んできた。寒気で毛が逆立ち、徐々に力が抜けていくのが分かる。

 退化だ。1割以下で、進化は強制解除されるらしい。

 MP0でどうなるのか、知りたくもある。でもここは過酷な大自然のど真ん中。そんな事をして気絶なんてしたら大変だ。

 俺は用意していた魔石を幾つか平らげる。すると、一気に症状は改善する。MPも50まで回復していた。

 

【さて(ウゥ)、大体確認したかな(ワフ)】


 MPと進化、それにMP残量による体調の変化を把握することが出来た。

 残るはやっぱり、進化のトリガー。

 ワーウルフより先に、進化があるのかの検証だ。

 

 俺は下流に向って駆け出す。次の進化に適した、魅力的な魔物と出会う為に。

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― 新着の感想 ―
うはw アイテムボックスとか無くても、犬が荷袋を使うという概念を持ってるだけでも十分チートだわ^^; 柏ダンジョン研究者とか居たらダーウィンフィンチ(道具を使う種も居る鳥。賢いかは知らんw)並みの衝撃…
まさかの時間制、と言うかMP依存。燃費は悪いのにMP低下で体調不良のテンプレ付き。 う~ん、つくづくクソゲーですなぁ。 MPの回復量が消費量を上回れば解決するとは思いますが、そんな日は来るんですかねぇ…
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