表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は神になれない  作者: ふたり旅団
ガロード編
44/50

ガロード編エピローグ 少年の決意

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



オルグラードは、報告を静かに聞いていた。


語り終えたレックスの前で。


一瞬の沈黙。


両眼を閉じ。


ただ一言。


「……そうか」


それだけを口にした。


魔王国を実質支配する覇王ディアボロス。


比類なき強さを誇るその男ですら。


どうすることも出来ないものがある。


その事実だけが、静かに場に落ちた。


やがて覇王は命じる。


名を伏せたまま。


『僭王』討伐完了の報を、魔王国全土へと。


歓声が上がることも。


称賛が響くこともない。


ただ。


一つの時代が、終わったという事実だけが広がっていく。


その裏で。


誰にも知られないまま。


一つの“異質”が残されていた。


ディグレイすら操った『悪意』。


力ではない。


暴力でもない。


それでいて。


すべてを狂わせる何か。


「……なんなんだよ、あれは」


レックスは、小さく呟いた。


見えないものに。


確かに、恐怖していた。


 


墓所は静かだった。


風が通り抜けるだけの、穏やかな場所。


ガロードたちは、兵士に案内されてそこへ辿り着く。


「こちらでございます」


一つの墓の前で、足が止まる。


「牙王様と麗王様の墓所です」


簡素な墓だった。


華美な装飾はない。


ただ、石があるだけ。


その奥に。


さらに並ぶ墓標。


「そして、あちらが人狼族の共同墓所です」


無数の名。


無数の命。


ここに眠っている。


ガロードは静かに歩み寄る。


そして、墓石を見る。


刻まれた文字。


「ロウガ、レイラ」


その名を、口にする。


初めて呼ぶ名前だった。


だが。


不思議と、遠くは感じなかった。


さらに目を落とす。


刻まれた碑文。


「我が弟、そして、弟の最愛の妻」


短い言葉。


だが。


そこに込められたものは、重い。


オルグラードが刻んだのだろう。


言葉は少ない。


だが。


揺るがない事実だけが、そこにある。


ガロードは、静かに頭を下げた。


会ったことはない。


それでも。


確かに繋がっている。


その証の前で。


一礼した。


ディグレイの遺体は、見つからなかった。


だが。


その妻の遺骨は、ここに眠る。


穏やかな場所に。


彼の願い通りに。


「……守ったぞ」


小さく呟く。


「ディグレイ……兄さん」


風が吹く。


まるで。


その言葉を、どこかへ運ぶように。


ガロードは視線を移す。


並ぶ墓。


人狼族の名。


その中に。


見つける。


「ダルグレイ……ルシェナ」


父と母の名。


ゆっくりと、口にする。


胸の奥が、静かに痛んだ。


「終わったよ」


言葉は、自然とこぼれた。


「俺の復讐の旅」


長かった。


ただ前だけを見て。


進み続けた日々。


終わった時には。


思っていた景色とは、違っていた。


だが。


これでいいと。


どこかで、思っていた。


「父さん、母さん」


静かに言う。


「俺は、繰り返さない」


拳が、わずかに握られる。


憎しみは消えない。


忘れることもできない。


それでも。


選ぶことはできる。


「……だけど」


顔を上げる。


その目には、もう迷いはなかった。


「『悪意』は、俺が斃す」


静かに。


だが、確かに。


言い切る。


「徹底的にだ」


風が強く吹いた。


木々が揺れる。


まるで。


その決意を試すように。


人の心を弄び。


運命を歪め。


破滅へと導くもの。


それが存在するなら。


見過ごすことはできない。


ガロードは、背を向ける。


もう、立ち止まらない。


「終わったら」


小さく言う。


「また来るよ」


その声は。


どこか穏やかだった。


歩き出す。


一歩。


また一歩。


迷いのない足取りで。


獣人の少年は。


“悪意”と対峙することを選んだ。


たとえ。


その先に何が待っていようと。


守るべきもののためなら。


自分が燃え尽きても構わない。


その覚悟と共に。


物語は、静かに次へと進む。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ