運命の出会い
◇◇◇ ◇◇◇
「お言葉ですが、先生」
僕は思わず口を開いていた。
オルグラードは机の向こうで腕を組んだまま、静かにこちらを見ている。
その視線を受けながら、僕は机の上に広げられた地図を見た。
セルディア。
そして王国。
その境目。
そこにある名前。
――ヴァルディア男爵領。
僕は地図を見るのが好きだ。
鍛冶場の休憩時間にも、よく眺めている。
だから分かる。
その場所は――
遠い。
「ここまで、徒歩で一週間はかかります」
僕は言った。
「その距離を……」
一度、ガロードを見る。
「僕と兄貴の二人だけで護衛するのは、さすがに無理があります」
正直な意見だった。
護衛というのは人数が要る。
道中の警戒。
夜の見張り。
交代要員。
普通なら、最低でも十人は欲しい。
「当然、他にも護衛の人がいるんですよね」
そう聞いた。
すると。
「おらん」
オルグラードが即答した。
……え?
一瞬、言葉が止まる。
横を見る。
ガロードも目を丸くしていた。
さすがに予想外だったらしい。
「そもそもだ」
先生は淡々と続ける。
「儂の自由が利く手勢がおらん」
そして、はっきり言った。
「だから、お前らを手配した」
衝撃の事実だった。
つまり――
人手不足。
ただ、それだけの理由。
僕たちが選ばれた理由。
それが、これだった。
「……師匠」
ガロードが眉をひそめた。
「手勢は他にもいるだろ」
確かにいる。
オルグラードの配下には、腕の立つ連中が何人もいるはずだ。
だが。
先生は首を横に振った。
「別件で動かしておる」
短い答え。
「帝國方面」
「魔王国方面」
それだけ言う。
つまり。
セルディアは今、三方向に人を出している。
余力がない。
……なるほど。
僕は少しだけ背筋が寒くなった。
それって。
かなり危ない状況じゃないのか。
そんな空気を感じ取ったのか。
オルグラードは軽く息を吐いた。
「安心しろ」
そして言う。
「幸い、良い話もある」
良い話?
僕とガロードは顔を見合わせた。
先生は地図を指で軽く叩く。
「今回の継承の儀式」
「これまでの功績が認められ」
「ヴァルディア男爵は昇爵する」
昇爵。
つまり。
「子爵になる」
それはかなりの出世だ。
王国貴族の中でも、立場が一段上がる。
「その祝いも兼ねた儀式だ」
先生は続けた。
「そして」
少し間を置く。
「現在、セルディアに留学している」
「ヴァルディア家の孫娘」
「その令嬢も儀式に参加する」
……令嬢。
貴族のお嬢様。
なんとなく場違いな響きがした。
「当然、護衛が付く」
オルグラードは言う。
「だが」
少しだけ口元が動いた。
「向こうも人数不足らしい」
ガロードがニヤッと笑う。
「なるほどな」
先生は頷いた。
「セルディアの特使は、その護衛隊に便乗する」
「足りぬ戦力を補う」
「無償でな」
……無償。
僕はゆっくり理解した。
つまり。
その無償戦力。
それが――
僕と兄貴。
「つまり」
ガロードが肩をすくめた。
「無料で護衛をしろってことか」
「そうじゃ」
オルグラードは迷いなく頷く。
そして付け加えた。
「向こうで飯でも食える程度の小遣いはやる」
……小遣い。
それだけ。
僕はガロードを見る。
ガロードは僕を見る。
数秒。
沈黙。
そして。
二人同時に、ため息をついた。
ここまで話を聞いたら。
もう断れる空気じゃない。
それに。
オルグラードの目を見れば分かる。
最初から。
僕たちに拒否権はない。
僕は小さく頷いた。
ガロードも肩をすくめる。
「分かりました」
それを確認すると。
オルグラードは小さく鈴を鳴らした。
チリン。
澄んだ音が部屋に響く。
隣の部屋で待機していたのだろう。
すぐに足音が近づいた。
コン。
軽いノック。
「失礼します」
女性の声だった。
扉が開く。
僕は振り向く。
そして――
扉が開いた瞬間、部屋の空気が少し変わった。
彼女と出会った。
◇◇◇ ◇◇◇
僕は思わず扉の方を見た。
その瞬間だった。
扉が、ゆっくりと開く。
軋む音はほとんどない。
静かな動きだった。
そして――
一人の女性が入ってきた。
……あれ?
僕は一瞬、目を瞬かせた。
令嬢と聞いていたからだ。
王国の貴族の娘。
そういう人は、もっと華やかなドレスを着ているものだと思っていた。
だが。
彼女は違った。
淡い金糸色の髪。
光を受けて柔らかく輝く。
肩のあたりで整えられた髪が、すっと揺れる。
瞳は青。
澄んだ湖のような色だった。
そして服装。
ドレスではない。
軽めの軍服だった。
装飾はほとんどない。
だが、仕立ては上等だ。
身体にぴったり合っている。
動きやすそうな作り。
腰には細身の剣。
レイピア。
……戦える人だ。
それは一目で分かった。
背筋が伸びている。
歩き方が静かで、無駄がない。
まるで訓練された騎士みたいだ。
その女性は、まっすぐこちらを見ていた。
青い瞳。
逃げない視線。
そして――
僕たちの前で立ち止まった。
一礼する。
動きが美しい。
優雅。
だけど、作り物の優雅さじゃない。
訓練された人の動きだ。
……なんというか。
絵画みたいだった。
整っている。
オルグラードが口を開いた。
「紹介しておく」
低い声。
「ヴァルディア男爵家の孫娘」
「エルディナ・ヴァルディア嬢だ」
女性はもう一度、軽く頭を下げた。
「初めまして」
落ち着いた声。
きれいな発音だった。
「エルディナ・ヴァルディアと申します」
丁寧。
でも硬すぎない。
不思議と聞きやすい声だった。
オルグラードが僕たちを顎で示す。
「これがガロード」
「こっちがレックス」
「儂の弟子だ」
……雑だ。
あまりにも雑な紹介だった。
僕は慌てて姿勢を正す。
エルディナの方を向く。
「は、はじめまして」
……噛むな、僕。
「レックスです」
声が少し裏返った。
顔が熱い。
横でガロードが肩をすくめる。
「ガロードだ」
気楽な調子だった。
「よろしくな」
エルディナは軽く目を瞬かせる。
そしてオルグラードを見る。
「こちらのお二人が」
「先ほどオルグラード様が話されていた」
「護衛に参加する方ですか」
丁寧な口調だった。
だが、その目はしっかりしている。
ただの令嬢じゃない。
そう感じた。
オルグラードは短く答える。
「鍛えてある」
「そこらの兵士より使えるぞ」
……相変わらず言い方が乱暴だ。
でも嘘ではない。
たぶん。
僕は慌てて頭を下げた。
「は、はい!」
そして言った。
「一生懸命尽くします!」
……言ったあとで気づいた。
言い方、ちょっと重かったかもしれない。
エルディナは一瞬、目を丸くした。
そして。
くすっ。
小さく笑った。
口元を軽く押さえる。
「まあ」
少し楽しそうだった。
「真面目なお弟子様なのですね」
僕はさらに顔が熱くなる。
ガロードが横でニヤニヤしていた。
部屋の空気が、少し和らぐ。
さっきまでの緊張が、ほんの少しだけ軽くなる。
……良かった。
怖い人じゃなさそうだ。
そう思った瞬間だった。
「お待ちください、エルディナ様」
後ろから声がした。
僕は振り返る。
そういえば。
エルディナは一人で入ってきたわけじゃなかった。
扉の近く。
もう一人の人物が立っていた。
その人物が、一歩前に出る。
「その話」
低い声だった。
「少々、確認させていただきたい」
◇◇◇ ◇◇◇
さっきの声は、エルディナだけが気づいていたらしい。
僕は今になって気づいた。
エルディナの後ろに――もう二人いた。
扉の近く。
壁際に控えるように立っている。
そのうちの一人が、一歩前に出た。
背が高い。
僕よりも頭一つ分は高いだろう。
黒髪の短髪。
顔立ちは整っている。
だけど、柔らかさはない。
硬い。
騎士の顔だ。
全身を覆う鉄の鎧。
肩には青いマント。
そこには、ヴァルディア家の紋章が縫い込まれている。
腰には長い剣。
バスタードソード。
片手でも両手でも扱える騎士剣だ。
立ち方だけで分かる。
……強い。
かなり鍛えられている。
男は僕たちを見た。
そして、はっきりと言った。
「やはり私は反対です」
静かな声だった。
だが、迷いはない。
「若すぎます」
視線が動く。
ガロードを見た。
「それに……素性も知れない若者を護衛に加えるのは危険でしょう」
空気が少し冷える。
僕は横を見る。
ガロードは肩をすくめていた。
怒っている様子はない。
むしろ、慣れている顔だ。
……そうか。
王国の人間は。
基本的に、獣人を嫌う。
ガロードは魔王国の出身だ。
だからだろう。
エルディナが口を開いた。
「ルシアン、無礼な言い方を――」
だが、その言葉は途中で止まる。
「儂の推薦する二人では不服かね」
オルグラードだった。
声は低い。
だが、それだけ。
それだけなのに。
空気が変わった。
さっきまで堂々としていた騎士が、わずかに言葉を詰まらせる。
……格の違い。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
騎士は数秒黙った。
エルディナが静かに言った。
「その話は先ほど終わったはずです」
視線が鋭い。
「謝罪なさい」
騎士は完全に押されていた。
少しだけ悔しそうな顔をする。
その時。
もう一人の人物が口を開いた。
「謝罪をお勧めします、隊長」
女性だった。
冷ややかな声。
僕はそちらを見る。
彼女は軽騎士の装備だった。
鉄鎧より軽い装備。
動きやすそうだ。
髪は薄い灰色。
銀にも見える。
肩までのボブ。
整った顔立ち。
緑色の瞳。
クールな印象の美人だった。
だが、その目には少しだけ呆れた色がある。
「これ以上は」
淡々と言う。
「恥の上塗りでしょう」
……容赦ない。
騎士――ルシアンと呼ばれた男は、小さく息を吐いた。
「分かっている」
そして改めてこちらを見た。
「先ほどの発言は撤回します」
短い。
だが、はっきりしている。
オルグラードは、ふっと笑った。
楽しそうだった。
「よかろう、若いの」
そして僕を見る。
嫌な予感がした。
「儂の弟子が役に立つと証明しよう」
……やっぱり。
嫌な予感は当たる。
「レックス」
指を壁に向けた。
「壁の剣を持ってこい」
そこには装飾用の剣が飾られている。
僕は一瞬固まる。
「お前の力を見せる」
……え?
ちょっと待ってほしい。
突然すぎる。
僕はガロードを見る。
ガロードはニヤニヤしていた。
助ける気はないらしい。
オルグラードが続ける。
「簡単な話だ」
そう言ってルシアンを見る。
「お互い剣を構える」
「そして一撃」
「相手の剣を受ける」
それだけ。
……それだけ?
ルシアンが眉をひそめる。
「受けるだけですか」
「そうじゃ」
オルグラードは笑う。
「それで分かる」
僕は壁の剣を見る。
そして、自分の手を見る。
……やるしかない。
証明しろ。
そう言われた気がした。
◇◇◇ ◇◇◇
「レックス、剣は二本持ってこい」
オルグラードの声が飛ぶ。
僕は壁際に向かった。
装飾として掛けられている剣が二本。
どちらも見た目は立派だが、鍛冶屋の見習いとして分かる。
これは実戦用じゃない。
刃は丸められている。
装飾兼、稽古用だ。
「一本は、ルシアン殿に渡してこい」
僕は頷き、剣を手に取った。
そして歩いていく。
「どうぞ」
ルシアンに差し出す。
彼は無言で受け取った。
オルグラードが補足する。
「装飾用だ。刃は潰してある」
それから、ゆっくり言った。
「とはいえ」
「ここを血で汚すな」
軽い言葉。
だが冗談ではない。
僕は唾を飲み込んだ。
ルシアンが口を開く。
「条件を確認します」
落ち着いた声だった。
「互いに一撃」
「相手の剣を受ける」
「それで力量を見る」
彼はオルグラードを見る。
「そういう話でしたね」
オルグラードは椅子に座ったまま頷いた。
ルシアンは鞘から剣を抜いた。
シャリン。
金属音が響く。
そして数度、剣を振る。
空気が裂ける音。
ヒュン。
ヒュン。
……重い。
振り方が違う。
僕も剣を構えた。
いつもの棍棒と違う。
軽い。
軽すぎる。
手に馴染まない。
だが、今さら言っても仕方ない。
「まずは」
オルグラードが言う。
「ルシアン殿の打ち込みを、レックスが受ける」
ルシアンが僕を見る。
黒い瞳。
まっすぐだった。
「加減はしません」
淡々と言う。
「構いませんか」
……普通に考えれば。
答えは決まっている。
体格差。
筋力差。
僕は細い。
ルシアンは騎士だ。
同じ剣をぶつければどうなるか。
火を見るより明らかだ。
オルグラードは何も言わない。
ただ頷いた。
それだけ。
横を見る。
ガロードはニヤニヤしている。
楽しそうだ。
エルディナは心配そうだった。
青い瞳がこちらを見ている。
ミレーネは違う。
冷静な顔でルシアンを見ていた。
その視線は言っている。
――余計なことをするな。
――オルグラードを怒らせるな。
そんな感じだ。
僕は剣を構えた。
足を開く。
膝を少し曲げる。
呼吸を整える。
いつもの感じ。
兄貴とやる時と同じ。
集中。
ヒュン。
空気が鳴る。
ルシアンが剣を構えた。
「いくぞ」
一歩。
踏み込んだ。
速い。
床板が鳴る。
ドン。
そして剣が振り下ろされる。
重い。
速い。
真っ直ぐ。
騎士の斬撃。
僕は剣を出した。
受ける。
瞬間。
ガンッ!
金属音が響いた。
剣と剣がぶつかる。
……来た。
重い。
腕に衝撃が走る。
だが。
僕は体を少しだけずらす。
腰を落とす。
衝撃を逃がす。
流す。
そして。
止まった。
ルシアンの剣が。
僕の剣に受け止められていた。
部屋が一瞬、静かになる。
「……何?」
ルシアンが驚いた。
僕も驚いていた。
いや。
受けられるとは思っていた。
でも。
こんなに綺麗に止まるとは思わなかった。
ルシアンの顔が近い。
黒い目が見開かれている。
彼の腕に伝わっているはずだ。
力が。
殺されている。
押し切れない。
そんな感触。
……だろうな。
ガロードが後ろでニヤリとした。
(そりゃそうだ)
ガロードは心の中で思う。
(普段から俺の蹴りを受けてるんだからな)
レックスは細い。
だが。
弱くない。
棍棒で、ガロードの蹴りを受け続けている。
普通なら腕が折れる。
だがレックスは違う。
柔らかい。
足腰が。
そして目がいい。
受けているように見えて。
本当は違う。
力が乗り切らない位置を見切っている。
今もそうだ。
真正面で受けていない。
少しだけズラしている。
だから止まる。
ガロードはゾクゾクした。
面白い。
本当に面白い。
今まで誰も気づかなかった。
レックスの才能。
それを、今。
初めて他人が見ている。
剣が離れる。
ルシアンは一歩下がった。
僕を見る。
さっきとは違う目。
完全に、試す目だった。
「……なるほど」
小さく言う。
そして剣を構え直した。
「次は」
僕を見る。
「君の番だ」
◇◇◇ ◇◇◇
ルシアンの黒い瞳が、まっすぐ僕を見ていた。
さっきの防御。
あれが偶然かどうか。
確かめるつもりなのだろう。
ルシアンは剣を構え直した。
姿勢が変わる。
今度は受ける側。
騎士らしい、正統派の構えだった。
重心が低い。
剣は身体の前。
隙がない。
……やっぱり、強い人だ。
一方の僕。
剣を軽く振る。
やっぱり軽い。
いつもの棍棒とは全然違う。
どう扱えばいいのか、まだよく分からない。
それでも、呼吸を整える。
さっきは止めるだけだった。
今度は――攻撃する番。
……まあ。
奥の手はある。
あるけど。
僕は内心で苦笑した。
あれを使ったら、たぶん怒られる。
先生も見てるし。
今日はやめておこう。
封印だ。
僕は剣を構える。
やや右斜め下。
自然に体が動いた。
奥では、エルディナとミレーネがこちらを見ている。
二人とも真剣な顔だった。
……緊張するな。
でも。
今はそれどころじゃない。
集中する。
余計なことは考えない。
兄貴と戦う時と同じだ。
ただ一つだけ。
今出せる。
最大の一撃。
それを出す。
難しく考えない。
踏み込む。
床が鳴る。
ルシアンの剣が動く。
受ける体勢。
僕はその剣に――打ち込んだ。
ガンッ!!
重い金属音が部屋に響いた。
空気が震える。
衝撃が腕を通る。
そして。
ルシアンの体が、わずかに後ろへ下がった。
一歩。
床板が軋む。
それを見ていたエルディナが、目を見開く。
ミレーネも驚いていた。
普通ならあり得ない。
軽い方が。
重い方を。
正面から押し返した。
「……ぬぅ」
ルシアンが声を漏らした。
剣から衝撃が腕に伝わる。
痺れる。
手の感覚が一瞬鈍る。
(何だ……これは)
彼は内心で驚いていた。
剣の重さは同じ。
体格は自分が上。
筋力も上。
それなのに。
押し負けた。
(オルグラード卿の教え……か?)
ルシアンはレックスを見る。
細い。
鍛えてはいるが、騎士の体ではない。
だが。
今の一撃。
ただの力ではない。
その様子を見ていたガロードは、目を輝かせていた。
……なるほど。
そういうことか。
ガロードは理解した。
レックスの攻撃の秘密。
ルシアンの剣は腕の剣だ。
腕力。
肩。
体重。
そこに剣の重さが加わる。
騎士の剣。
だが。
レックスは違う。
足。
腰。
背中。
それら全部が、バネみたいに連動している。
さらに体幹。
全身の力が一つにまとまり。
剣の重さと速さを作る。
だから。
同じ剣なら。
レックスの方が重い。
ガロードの口元が、ゆっくり歪んだ。
牙が少し覗く。
……面白い。
本当に面白い。
あいつはまだ気づいてない。
自分がどれだけ変な戦い方をしているのか。
そして。
それがどれだけ強いのかを。
部屋の奥。
椅子に座るオルグラードが、小さく笑った。
「ほう」
低い声だった。
そして言う。
「もう一度やるか?」
ルシアンは剣を握り直した。
腕の痺れが少し残る。
だが。
目はさっきより鋭い。
「……いいえ」
ゆっくり言う。
「十分でしょう」
それから剣を下ろした。
僕を見る。
さっきとは違う目だった。
騎士が、戦士を見る目。
「レックス君」
低い声で言う。
「先ほどの非礼、改めて謝罪する」
僕は慌てた。
「い、いえ!そんな!」
ルシアンは小さく笑った。
ほんの少しだけ。
硬い顔が緩む。
「なるほど」
小さく言う。
「確かに……そこらの兵士より使える」
オルグラードが鼻で笑った。
「だから言ったじゃろう」
◇◇◇ ◇◇◇
少年レックスと少女エルディナとの出会い。
これは、レックスの未来を変えていくのか




