女子校に入学しました(バレたら即終わりです)
第九章 帰り道
放課後になった。
私は今日何度目か分からないため息を吐いていた。
理由はもちろん。
一ノ瀬理央である。
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「あなた、本当に女子なの?」
あの言葉が頭から離れない。
離れてくれない。
本当に。
勘弁してほしい。
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結局。
理央はそれ以上追及してこなかった。
証拠がないから。
そう言って引き下がった。
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だが。
安心はできない。
絶対に。
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(完全に疑われてるよな……)
私は机へ突っ伏した。
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「どうしたの?」
美月が聞いてくる。
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「ちょっと疲れたかな」
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「分かるー」
ひまりが頷く。
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「学校って疲れるよね!」
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「それはそう」
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初日からこんなにイベントが起きるとは思わなかった。
普通はもっと平和なものじゃないだろうか。
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いや。
女子校だからなのか。
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分からない。
私には比較対象がなかった。
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「帰ろ?」
美月が言った。
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「うん」
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「今日はみんな一緒!」
ひまりが宣言する。
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また勝手に決まった。
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しかし。
もう慣れつつある自分がいた。
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数分後。
私たちは校門を出ていた。
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メンバーは五人。
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朝倉美月。
小鳥遊ひまり。
九条綾乃。
一ノ瀬理央。
そして私。
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改めて考えてもすごい顔ぶれだった。
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特に九条綾乃。
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学校中の人気者が普通に隣を歩いている。
いまだに慣れない。
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「そういえば」
ひまりが言う。
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「悠って家どっち?」
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「駅の方かな」
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「あっ、一緒!」
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元気よく手を上げる。
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「私も」
美月も言う。
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「私も途中まで同じね」
綾乃も続く。
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「えっ」
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全員同じ方向だった。
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偶然ってすごい。
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「理央は?」
ひまりが聞く。
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すると。
理央は少しだけ考えた後。
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「私も同じ」
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そう答えた。
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全員同じだった。
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怖い。
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運命か何かだろうか。
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「じゃあ一緒に帰ろう!」
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ひまりがまとめる。
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異論は存在しなかった。
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存在できなかった。
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帰り道。
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他愛もない会話が続く。
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好きなアニメ。
好きな食べ物。
授業の感想。
先生の話。
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驚くほど普通だった。
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そして。
楽しかった。
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気付けば。
私は自然に笑っていた。
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女装生活。
女子校。
秘密。
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不安ばかりだったはずなのに。
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こうして歩いている時間は嫌じゃなかった。
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むしろ。
悪くないと思ってしまう。
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その時。
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「柏木さん」
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綾乃が声をかけてくる。
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「なに?」
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「さっき笑っていたでしょう」
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「え?」
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突然の話題変更だった。
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「楽しそうだったから」
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綾乃は微笑む。
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「よかったわ」
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不意打ちだった。
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私は少しだけ言葉に詰まる。
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「ありがとう」
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なんとかそう返す。
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「顔赤い!」
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ひまりが叫んだ。
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「赤くない!」
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「赤い!」
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「赤くないよ!」
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「赤いよ!」
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小学生か。
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私は思わず笑ってしまう。
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すると。
美月まで笑い出した。
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綾乃も少し笑う。
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そして。
意外なことに。
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理央も。
ほんの少しだけ笑っていた。
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その瞬間。
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私は思った。
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理央は怖い。
確かに怖い。
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でも。
悪い人じゃない。
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たぶん。
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本当にたぶんだけど。
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その時だった。
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「そうだ!」
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ひまりが突然立ち止まる。
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嫌な予感。
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最近この勘はよく当たる。
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そして。
今回も当たった。
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「今度みんなで遊ぼう!」
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始まった。
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ひまりの思いつきタイムである。
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「いいね」
美月が頷く。
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「楽しそうね」
綾乃も言う。
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「私は別に構わないわ」
理央まで賛成した。
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早い。
決定まで早すぎる。
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だが。
私はまだ知らなかった。
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この提案が。
数日後。
私の人生最大級の危機へ発展することを。
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そして。
全ての始まりとなる言葉が。
次の瞬間。
ひまりの口から飛び出した。
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「じゃあお泊まり会しよう!」
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沈黙。
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私だけが固まった。
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人生終了の音が聞こえた気がした。
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第九章 帰り道 完




