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女子校に入学しました(バレたら即終わりです)

第四章 小鳥遊ひまり襲来


「転校生だーーー!」


教室のドアが勢いよく開いた。


その瞬間。


私の背筋に嫌な予感が走る。


隣では美月が苦笑していた。


「来たね」


「誰が?」


「ひまり」


嫌な予感しかしない。


その反応だけで十分だった。


そして。


次の瞬間。


その予感は見事に的中する。


「どこだー!」


元気な声が教室中に響いた。


廊下から飛び込んできたのは短い茶髪の少女だった。


小柄。


元気。


笑顔。


エネルギーの塊。


そんな印象。


少女は教室を見渡した。


そして。


私を発見する。


目が合った。


まずい。


そう思った時には遅かった。


「いたーーー!」


全力でこっちへ向かってくる。


速い。


驚くほど速い。


避ける暇もなかった。


「よろしくー!」


どんっ。


肩に衝撃。


反射的に身体が揺れる。


「うわっ!?」


危なかった。


もう少しで椅子ごと倒れるところだった。


少女はまったく気にした様子もなく笑っている。


「小鳥遊ひまり!」


「近い!」


思わず言ってしまった。


男子口調ではない。


ぎりぎり女子モードだ。


だが本音だった。


本当に近い。


近すぎる。


ひまりは首を傾げる。


「そう?」


「そうだよ」


「普通じゃない?」


「普通かなぁ……」


普通ではない。


絶対に。


だが今は女子として生きている。


その辺りを強く主張するのも不自然だ。


難しい。


本当に難しい。


女子高生という生き物。


思った以上に奥が深かった。


---


「ひまりはこうなの」


美月が笑う。


「いつもこんな感じ」


「そうなんだ」


「うん!」


ひまり本人が元気よく頷く。


自覚はあるらしい。


改善する気はなさそうだが。


---


「転校生!」


ひまりが身を乗り出してくる。


「なに?」


「可愛い!」


またそれか。


今日は何回聞いただろう。


数える気もなくなってきた。


「ありがとう」


「背高い!」


「そうかな」


「髪きれい!」


「ありがとう」


「肌白い!」


「ありがとう」


完全に褒め殺しだった。


なんなんだこの子。


---


ひまりは突然真剣な顔になった。


「決めた」


「え?」


「私たち友達!」


即決だった。


恐ろしいほど即決だった。


美月が横で笑う。


「あはは」


「美月もそうだったよね」


「そうだっけ?」


「そうだよ」


数十分前のことだ。


忘れるな。


---


「じゃあ決定!」


ひまりが勝手に頷く。


「これからよろしく!」


「よろしくね」


私も苦笑しながら答えた。


すると。


ひまりは満足そうに笑う。


太陽みたいな笑顔だった。


本当に。


少し眩しく感じるくらいに。


---


「そういえば」


ひまりが突然言う。


「なに?」


「緊張してる?」


ぎくりとした。


核心を突かれた気がした。


「どうして?」


「顔」


怖い。


女子怖い。


顔だけでそこまで分かるのか。


---


「少しだけかな」


私は笑ってみせる。


できるだけ自然に。


できるだけ女子らしく。


「そりゃそうだよね」


ひまりはあっさり納得した。


「転校初日だもん!」


助かった。


本当に助かった。


---


すると。


ひまりはにやっと笑った。


嫌な予感。


さっきからそればかりだ。


そして大体当たる。


「じゃあさ」


「うん?」


「放課後遊ぼう!」


「えっ」


早い。


展開が早い。


知り合って十分くらいだぞ。


---


「だめ?」


美月とは違う意味で破壊力がある。


どうしてここの人たちはすぐそうなるんだ。


友達作りが積極的すぎる。


---


「今日はちょっと……」


さすがに断ろうとした。


その時。


担任の先生が入ってきた。


「はーい席着いてー」


タイミングが良すぎた。


救世主だった。


今日は救世主が多い日である。


---


「続きは後で!」


ひまりが指を差す。


「逃げちゃダメだからね!」


「逃げる気はないよ」


(たぶん)


(できれば逃げたいけど)


---


ひまりは席へ戻っていった。


ようやく静かになる。


私は大きく息を吐いた。


---


「疲れた?」


美月が聞いてくる。


「ちょっとだけ」


「分かる」


「分かる?」


「ひまりの相手すると疲れるもん」


本人に聞かれたら怒りそうだ。


いや。


たぶん笑いそうだ。


---


授業が始まる。


先生の声が響く。


みんな教科書を開く。


ようやく普通の学校らしい空気になった。


私はほっと息を吐いた。


窓の外を見る。


春の空。


穏やかな風。


普通の授業。


普通の教室。


・・・


いや普通じゃない。


女装して女子校に潜入している時点で普通じゃなかった。


---


それでも。


私は少しだけ思った。


美月も。


ひまりも。


思っていたより良い人かもしれない。


もちろん秘密は秘密だ。


絶対にバレるわけにはいかない。


けれど。


この人たちとなら。


案外やっていけるのかもしれない。


そんなことを考えていた。


その時だった。


教室の前方が少しざわつく。


誰かが言った。


「九条さんだ」


空気が変わる。


女子たちの視線が一か所へ集まる。


私はまだ知らない。


次に出会う少女が。


学校中の憧れの的であり。


私の女子校生活をさらにややこしくする存在だということを。


第四章 小鳥遊ひまり襲来 完


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