平均的な女子を目指します
第二十二章 作戦会議
火曜日。
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体力測定再実施のお知らせから一日。
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状況は何一つ改善していなかった。
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むしろ悪化していた。
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朝。
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目が覚めた瞬間。
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「あ」
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思い出した。
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金曜日。
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体力測定。
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終わった。
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俺は布団の中で現実逃避した。
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五分ほど。
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だが。
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現実は逃げない。
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残酷だった。
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◇◇◇
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放課後。
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教室。
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帰る準備をする生徒たちの声が響く。
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俺は机に座ったまま。
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スマホを見ていた。
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検索画面。
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そこには。
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『高校女子 体力測定 平均』
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という文字。
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人生で検索するとは思わなかった。
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「何見てるの?」
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突然。
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声がした。
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俺は慌てて画面を伏せる。
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「うわっ」
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「そんな驚く?」
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ひまりだった。
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後ろには。
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美月と綾乃もいる。
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完全包囲だった。
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「いや、別に」
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「怪しい」
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「怪しいね」
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「怪しいわね」
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三対一だった。
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勝てる気がしない。
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「で、何見てたの?」
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ひまりが覗き込もうとする。
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俺は慌ててスマホを胸元へ引き寄せた。
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危ない。
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非常に危ない。
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「ちょっと体力測定のこと」
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「そんなに嫌なんだ」
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美月が苦笑した。
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嫌とかいうレベルではない。
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命がかかっている。
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正確には。
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正体が。
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◇◇◇
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結局。
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四人で残る流れになった。
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窓から夕陽が差し込む。
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雑談混じりの作戦会議。
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議題は当然。
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体力測定だった。
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「私さー」
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ひまりが机に突っ伏す。
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「シャトルラン嫌だー」
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「また始まった」
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美月が呆れた。
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「だって辛いじゃん」
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「それは分かる」
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綾乃が頷く。
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俺も心の中で全力で頷いた。
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シャトルラン。
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極めて危険な種目だった。
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「悠は?」
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ひまりが聞く。
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「何が?」
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「一番嫌なやつ」
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俺は考える。
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考えるまでもない。
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「シャトルラン」
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即答だった。
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三人が少し驚く。
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「意外」
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綾乃が言った。
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「悠って走るの得意そうなのに」
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心臓が跳ねる。
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危ない。
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「そんなことないよ」
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「そう?」
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「普通」
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全力で普通を主張した。
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すると。
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ひまりが笑う。
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「前に男子と走って勝ったとか言ってなかった?」
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しまった。
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昔。
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適当に誤魔化した話だった。
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俺は一瞬固まる。
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「たまたま」
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「へえ」
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理央なら食いついていた。
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幸い。
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ここに理央はいなかった。
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まだ。
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◇◇◇
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「ねえ」
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綾乃がスマホを取り出す。
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「平均ってどれくらいなんだろう」
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その言葉に。
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俺は反応してしまった。
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「知りたい」
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即答だった。
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三人がこちらを見る。
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少し食い気味だったかもしれない。
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「そんな気になる?」
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「参考までに」
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俺は平静を装った。
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危うい。
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かなり危うい。
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綾乃が検索する。
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そして。
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画面を見せた。
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そこには。
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女子高校生の平均記録一覧。
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俺は思わず凝視する。
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握力。
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反復横跳び。
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立ち幅跳び。
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シャトルラン。
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様々な数字が並んでいる。
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そして。
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「え」
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思わず声が出た。
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「どうしたの?」
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美月が聞く。
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「いや」
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危なかった。
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本当に危なかった。
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今。
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『女子ってそんなに弱いの?』
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と言いかけた。
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危機一髪で飲み込む。
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「思ったより低いなって」
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「そう?」
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綾乃は首を傾げる。
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普通の女子なら。
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そう思うのかもしれない。
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だが。
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俺の基準はまだ。
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完全には修正されていなかった。
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◇◇◇
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「でもさ」
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ひまりが言う。
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「悠は無理しちゃ駄目だよ」
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俺は顔を上げる。
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「前回倒れたんだから」
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その言葉に。
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一瞬だけ。
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胸が痛んだ。
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「そうね」
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綾乃も頷く。
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「今度はちゃんと休みなさいよ」
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「記録なんてどうでもいいんだから」
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美月も珍しく真面目な顔だった。
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三人とも。
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本気で心配してくれている。
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前回。
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倒れた俺を見ているから。
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だけど。
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俺が心配している理由は違う。
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記録が悪いことじゃない。
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良すぎても駄目なのだ。
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それを言えるわけもない。
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「ありがとう」
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だから。
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俺はそう答えるしかなかった。
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◇◇◇
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その時だった。
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教室の前を誰かが通る。
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理央だった。
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忘れ物でも取りに来たらしい。
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理央は歩きながら。
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こちらを見る。
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そして。
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ふと。
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机の上に置かれていた綾乃のスマホへ視線を向けた。
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画面には。
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まだ検索結果が表示されたままだった。
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『女子高校生 体力測定 平均記録』
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一秒。
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二秒。
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理央の動きが止まる。
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「何してるの?」
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自然な質問。
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だが。
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俺の背中を冷たい汗が流れた。
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「体力測定対策」
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ひまりが元気よく答える。
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「なるほど」
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理央は頷く。
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しかし。
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視線は。
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ほんの少しだけ。
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俺に向いていた。
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「そこまでするんだ」
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その言葉。
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なぜか引っかかった。
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「まあね」
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俺は笑う。
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理央も笑う。
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だが。
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お互い。
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少しだけ。
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探り合っている気がした。
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気のせいではなかった。
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たぶん。
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◇◇◇
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帰り道。
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俺は一人で考える。
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金曜日まで。
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あと三日。
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体重。
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握力。
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反復横跳び。
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立ち幅跳び。
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そして。
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シャトルラン。
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乗り切る方法を見つけなければならない。
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理央の視線も。
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気になる。
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だが。
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まず優先すべきは一つ。
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体力測定だ。
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俺は小さく拳を握った。
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逃げ続けるわけにはいかない。
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作戦を立てよう。
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全部。
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自然に。
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女子らしく。
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乗り切るための作戦を。
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第二十二章 作戦会議 完




