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お泊り会は危険がいっぱい

第十六章 夜の探索者


夜は静かだった。


---


時計の針は午前二時を回っている。


---


規則正しい寝息。


---


時折聞こえる寝返りの音。


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暗い部屋。


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みんな眠っている。


---


そう。


---


眠っているはずだった。


---


◇◇◇


---


一ノ瀬理央は目を開いた。


---


眠れなかった。


---


正確には。


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途中で目が覚めた。


---


何となく。


---


胸の奥に引っかかりが残っていたからだ。


---


柏木悠。


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考えれば考えるほど不思議だった。


---


女子の話題に弱い。


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恋愛の話をすると反応がおかしい。


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男子の考え方に妙に詳しい。


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更衣室を避ける。


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お風呂も避ける。


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偶然。


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そう言われればそれまでだった。


---


でも。


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「何か変なんだよね……」


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理央は小さく呟いた。


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誰も答えない。


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当然だった。


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みんな眠っている。


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理央はゆっくり上半身を起こした。


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薄暗い部屋を見回す。


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ひまり。


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大の字。


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美月。


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クッションを抱えている。


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綾乃。


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綺麗な寝相だった。


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そして。


---


悠。


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静かに眠っている。


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理央は少しだけ眺めた。


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本当に眠っている。


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嘘をついているようには見えない。


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けれど。


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違和感は消えなかった。


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◇◇◇


---


理央は立ち上がった。


---


喉が渇いた。


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そのついで。


---


本当にそのついでだった。


---


そう自分に言い聞かせる。


---


部屋を出る。


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廊下は静かだった。


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階段を降りる。


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冷蔵庫から麦茶を取り出す。


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コップに注ぐ。


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一口飲む。


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冷たい。


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少しだけ頭が冴えた。


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その時だった。


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ふと。


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視線が止まる。


---


玄関付近。


---


悠のバッグ。


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昼間から置いてあったものだ。


---


理央は数秒見つめる。


---


別に。


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何かあるとは思っていない。


---


思っていないはずだった。


---


でも。


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「……」


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気になった。


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ほんの少しだけ。


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◇◇◇


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駄目だと思った。


---


人の荷物を見るなんて。


---


良くない。


---


当たり前だ。


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そんなことは分かっている。


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理央は視線をそらした。


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そして。


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三歩歩いた。


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止まった。


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振り返る。


---


もう一度バッグを見る。


---


「少しくらい……」


---


誰にも聞こえない声だった。


---


理央自身。


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半分呆れていた。


---


それでも。


---


気になってしまった。


---


◇◇◇


---


恐る恐る近付く。


---


バッグを見る。


---


普通のバッグ。


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特に変わったところはない。


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ファスナーに手を伸ばす。


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少しだけ。


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少しだけ見る。


---


それだけ。


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その瞬間だった。


---


ガタッ。


---


大きな音。


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理央は飛び上がった。


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心臓が跳ねる。


---


振り返る。


---


誰もいない。


---


風だった。


---


窓が少し開いていたらしい。


---


「びっくりした……」


---


理央は胸を押さえた。


---


緊張し過ぎている。


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少し笑えてきた。


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◇◇◇


---


だが。


---


次の瞬間。


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背後から声がした。


---


「何してるの?」


---


理央は固まった。


---


ゆっくり振り返る。


---


そこにいたのは。


---


九条綾乃だった。


---


「っ!?」


---


理央は珍しく大きな声を出した。


---


綾乃が目を瞬く。


---


「そんなに驚かなくても」


---


「起きてたの?」


---


「喉が渇いたの」


---


綾乃はそう言った。


---


そして。


---


視線がバッグへ移る。


---


理央は一瞬で理解した。


---


見られた。


---


状況的に完全に見られた。


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「違うの」


---


反射的に言う。


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「何が?」


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「これは……」


---


説明に困る。


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どう説明しても怪しい。


---


非常に怪しい。


---


綾乃は少し考え。


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やがて苦笑した。


---


「悠の荷物が気になったの?」


---


図星だった。


---


理央は黙る。


---


それが答えになった。


---


◇◇◇


---


綾乃は怒らなかった。


---


呆れた顔をしただけだった。


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「駄目でしょう」


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「分かってる」


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「じゃあ戻りましょう」


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理央は俯いた。


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少し恥ずかしい。


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少し情けない。


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でも。


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口から本音が出た。


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「だって変なんだもの」


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綾乃が足を止める。


---


「変?」


---


「悠」


---


短い言葉。


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それだけで通じた。


---


綾乃は少し考える。


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そして。


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「そんな風には思わないけれど」


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静かに答えた。


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「でも」


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理央は言う。


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「何か隠してる気がする」


---


沈黙。


---


数秒。


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綾乃は窓の外を見た。


---


そして。


---


小さく笑った。


---


「誰だって秘密くらいあるわ」


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理央は返事をしなかった。


---


納得しているわけではない。


---


けれど。


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今はそれ以上言えなかった。


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◇◇◇


---


二人は部屋へ戻る。


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誰も起きていない。


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静かな空間。


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理央は自分の布団へ戻った。


---


目を閉じる。


---


だが。


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すぐには眠れなかった。


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柏木悠。


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変な人。


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優しい人。


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少し不器用な人。


---


そして。


---


何かを隠している人。


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証拠はない。


---


何もない。


---


でも。


---


確かに違和感はある。


---


理央はそう思った。


---


そして。


---


その違和感の正体を。


---


いつか確かめたいとも思っていた。


---


知らず知らずのうちに。


---


調査は始まっていた。


---


第十六章 夜の探索者 完

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