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お泊り会は危険がいっぱい

第十四章 お風呂という最終試練(後編)


「じゃあ一緒に入ろう!」


ひまりが満面の笑みで言った。


---


終わった。


---


本当に終わった。


---


「え?」


---


「みんなでもう一回入ろうよ!」


---


「なんで!?」


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思わず声が裏返った。


---


「楽しいじゃん!」


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楽しくない。


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少なくとも私には。


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命がかかっている。


---


「ほらほら!」


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ひまりが腕を引っ張る。


---


まずい。


---


非常にまずい。


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ここで断れなければ終わる。


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私は必死に頭を回転させた。


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何か。


---


何か理由を。


---


使える理由を。


---


その時だった。


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ふと叔母の言葉を思い出す。


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以前。


学校で聞かれた時に使った設定。


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肌が弱い。


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これだ。


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たぶん。


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「実は」


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私は言った。


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「肌が少し弱くて」


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全員がこちらを見る。


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「え?」


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美月が首を傾げた。


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「そうなの?」


---


「うん」


---


私は頷く。


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「入浴剤とか合わないことがあるから」


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「だから最後にシャワーだけ使いたいかなって」


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沈黙。


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数秒。


---


永遠みたいに長かった。


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すると。


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「あー」


---


美月が頷いた。


---


「そういうことか」


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助かった。


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まだ油断はできない。


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「大丈夫なの?」


---


綾乃が聞いてくる。


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「そんなに酷くはないけど」


---


「念のため」


---


「なるほどね」


---


綾乃も納得してくれた。


---


残るは一人。


---


理央だった。


---


理央だけが黙っている。


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眼鏡の奥の視線が向く。


---


観察されている。


---


そんな気がした。


---


「理央?」


---


ひまりが呼ぶ。


---


「どうしたの?」


---


「別に」


---


理央は小さく首を振る。


---


「何でもない」


---


それだけだった。


---


だが。


---


なぜだろう。


---


納得した顔には見えなかった。


---


◇◇◇


---


結局。


---


私は単独でシャワーを使うことになった。


---


みんなが部屋にいるのを確認する。


---


廊下を見る。


---


誰もいない。


---


よし。


---


脱衣所を見る。


---


誰もいない。


---


よし。


---


浴室を見る。


---


誰もいない。


---


よし。


---


鍵を確認する。


---


よし。


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私は一つ確信した。


---


(スパイ映画か私は)


---


普通の高校生がやる確認ではない。


---


絶対に違う。


---


だが。


---


確認しなければ生き残れない。


---


私は過去最速でシャワーを浴び始めた。


---


一秒でも早く。


---


とにかく早く。


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その時。


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ガタッ。


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物音。


---


「!?」


---


私は飛び上がった。


---


心臓が止まりかける。


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誰か来たのか。


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終わったのか。


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そう思った。


---


しかし。


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よく聞くと。


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ただの風の音だった。


---


「……びっくりした」


---


本当に寿命が縮んだ。


---


◇◇◇


---


数分後。


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私は急いで部屋へ戻った。


---


扉を開ける。


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すると。


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「おかえりー!」


---


ひまりだった。


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相変わらず元気だった。


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「遅かったね」


---


「普通だと思う」


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「十分くらいだったよ」


---


美月が笑う。


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「早くない?」


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「早いわね」


---


綾乃まで言う。


---


まずい。


---


普通より短かったらしい。


---


「お風呂好きじゃないから」


---


誤魔化す。


---


「へぇ」


---


ひまりは納得した。


---


単純で助かる。


---


本当に。


---


助かる。


---


◇◇◇


---


その後。


---


みんなはクッションを抱えたり。


---


ジュースを飲んだり。


---


思い思いにくつろぎ始めた。


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完全な夜更かしモードだった。


---


「次は何する?」


---


美月が聞く。


---


「まだ遊ぶ!」


---


ひまりが即答した。


---


どこにそんな体力があるのだろう。


---


「もう十時過ぎてるよ」


---


私が言う。


---


「まだ十時だよ!」


---


感覚がおかしい。


---


「その元気は見習いたいわ」


---


綾乃が苦笑した。


---


みんなが笑う。


---


平和だった。


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本当に平和に見えた。


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けれど。


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その中で一人だけ。


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理央は少し静かだった。


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何かを考えているような。


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そんな顔。


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そして。


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不意に。


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こちらを見る。


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ほんの一瞬だけ。


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私は気付かなかった。


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でも。


---


理央の中には確かに残っていた。


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小さな違和感。


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恋バナ。


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男子の話。


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体育の着替え。


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更衣室を避ける行動。


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そして今回のお風呂。


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全部偶然なのだろうか。


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証拠はない。


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何もない。


---


けれど。


---


柏木悠には。


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何か秘密がある。


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そんな予感だけが。


---


少しずつ大きくなっていた。


---


一方の私は。


---


そんなことなど知らず。


---


ようやく危機を乗り越えた安心感に浸っていた。


---


だから気付かなかった。


---


本当の危機は。


---


まだ始まったばかりだということに。


---


第十四章 お風呂という最終試練(後編) 完


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