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お泊り会は危険がいっぱい

第十二章 お泊まり会当日(前編)


土曜日。


ついにその日がやってきた。


私は駅前の時計を見上げながら、人生で何度目か分からないため息を吐く。


女子だけのお泊まり会。


そこへ男である私が参加する。


改めて考えてもおかしい。


本当に。


---


(帰りたい……)


---


まだ家を出て三十分しか経っていない。


それなのに帰りたい。


---


「おはよう!」


---


聞き慣れた声がした。


振り向く。


美月だった。


---


白いパーカー。


ロングスカート。


柔らかい笑顔。


休日だからか、学校とは少し雰囲気が違う。


---


「おはよう」


---


「待った?」


---


「今来たところ」


---


「それ絶対嘘だよね」


---


「なんで」


---


「十分くらい前からいる顔してる」


---


鋭い。


---


思わず目を逸らした。


---


「やっぱり」


---


美月は笑った。


---


「緊張してる?」


---


「少しだけ」


---


「少しどころじゃないでしょ」


---


図星だった。


---


その時。


---


「悠ーーーーーっ!!」


---


大声。


---


振り返る。


---


小鳥遊ひまりだった。


---


全力疾走だった。


---


危ない。


本当に危ない。


---


「おはよー!」


---


「おはよう」


---


「楽しみだね!」


---


「そうだね」


---


「棒読みだ!」


---


即バレした。


---


ひまりは大きなバッグを抱えていた。


---


「それ何?」


---


「お菓子!」


---


「全部?」


---


「全部!」


---


誇らしげだった。


---


食欲の化身である。


---


すると。


---


「あれ?」


---


美月が言った。


---


「そのバッグ新しい?」


---


「そう!」


---


ひまりが嬉しそうに回る。


---


「お母さんと買った!」


---


「可愛い!」


---


「でしょ!」


---


女子たちが盛り上がる。


---


私はバッグを見る。


---


普通のバッグだった。


---


(何が違うんだ?)


---


全然分からない。


---


その時。


---


「悠はどう思う?」


---


突然話を振られた。


---


「えっ」


---


困る。


非常に困る。


---


バッグなんて物を入れる道具ではないのか。


---


私は数秒悩み。


---


「可愛いと思う」


---


無難な回答を選んだ。


---


すると。


---


「えへへ」


---


ひまりが嬉しそうに笑う。


---


どうやら正解だったらしい。


---


助かった。


---


数分後。


---


綾乃が現れた。


---


私は固まった。


---


綺麗だった。


---


白いワンピース。


小さなショルダーバッグ。


長い黒髪。


---


周囲の視線を集めるくらいには綺麗だった。


---


「待たせたかしら」


---


「全然」


---


美月が答える。


---


私は答えられなかった。


---


普通に見とれていたからである。


---


「どうしたの?」


---


綾乃が首を傾げる。


---


「いや、その……」


---


まずい。


---


「綺麗だなって」


---


口から出た。


---


終わった。


---


そう思った時には遅かった。


---


綾乃は少し驚き。


そして控えめに笑った。


---


「ありがとう」


---


顔が熱い。


---


「赤い!」


---


ひまりが叫ぶ。


---


「赤くない!」


---


「赤い!」


---


「赤くない!」


---


「赤い!」


---


小学生か。


私たちは。


---


その時。


---


「おはよう」


---


静かな声。


---


理央だった。


---


落ち着いた服装。


シンプルなカーディガン。


眼鏡。


---


相変わらず理央らしい。


---


「おはよう」


---


短いやり取り。


---


だが。


---


以前ほど警戒はしていなかった。


---


理央は怖い。


---


でも。


悪い人じゃない。


---


たぶん。


---


「全員集合!」


---


ひまりが叫ぶ。


---


「出発だー!」


---


こうして。


私たちは小鳥遊家へ向かった。


---


住宅街の奥。


---


ひまりの家は大きな一軒家だった。


---


「ただいまー!」


---


玄関が開く。


---


次の瞬間。


---


「いらっしゃーい!」


---


元気な女性が現れる。


---


ひまりのお母さんだった。


---


似ている。


---


ものすごく似ている。


---


顔も。


声も。


テンションも。


---


遺伝ってすごい。


---


「いつも娘がお世話になってます!」


---


「こちらこそお世話になってます」


---


美月が笑う。


---


「悠ちゃんよね?」


---


ぎくり。


---


「えっ」


---


「ひまりが毎日のように話してるわよー!」


---


「そうなの?」


---


私が聞く。


---


「うん!」


---


ひまりが元気よく頷く。


---


「優しいし!」


---


「可愛いし!」


---


「面白いし!」


---


やめてほしい。


---


非常に恥ずかしい。


---


私たちは二階へ案内された。


---


ひまりの部屋。


---


広かった。


---


テーブルには大量のお菓子。


ジュース。


ゲーム。


トランプ。


---


完全に準備万端だった。


---


「すごーい!」


---


美月が歓声を上げる。


---


「頑張ったから!」


---


ひまりが胸を張る。


---


その後。


しばらくはお菓子を食べながら雑談になった。


---


「綾乃のネイル綺麗じゃない?」


---


美月が言った。


---


「本当だ」


---


ひまりが手を取る。


---


「可愛い!」


---


女子たちの視線が集まる。


---


私は便乗して見る。


---


確かに綺麗だった。


---


だが。


---


どこがどう凄いのかは分からない。


---


完全に分からない。


---


「悠はやらないの?」


---


美月が聞いてくる。


---


終わった。


---


知らない。


---


全然知らない。


---


「学校あるしあんまり……」


---


無難に答える。


---


「分かる」


---


綾乃が頷いてくれた。


---


助かった。


---


本当に助かった。


---


しかし。


危機は続く。


---


「そういえば悠って肌綺麗だよね」


---


美月が言った。


---


嫌な予感。


---


非常に嫌な予感。


---


「何使ってるの?」


---


終わった。


---


知らない。


---


本当に知らない。


---


化粧品なんて見たこともない。


---


頭の中に叔母の顔が浮かぶ。


---


「えっと……」


---


全員の視線が集まる。


---


まずい。


---


非常にまずい。


---


「化粧水……?」


---


疑問形になった。


---


「何それ!」


---


ひまりが笑う。


---


「化粧水くらい分かるでしょ!」


---


「叔母が買ってくるから」


---


私は必死に答える。


---


すると。


---


「あーなるほど」


---


美月が納得した。


---


助かった。


---


ギリギリだった。


---


その時。


---


「写真撮ろう!」


---


ひまりがスマホを取り出す。


---


「賛成!」


---


「撮りましょう」


---


女子たちが集まる。


---


私は中央へ引っ張られた。


---


「ほら悠!」


---


「近い近い!」


---


「いいから!」


---


肩が触れる。


---


腕が当たる。


---


距離感が近い。


---


女子同士ってこんなものなのだろうか。


---


心臓に悪い。


---


「はいチーズ!」


---


パシャッ。


---


写真が撮られる。


---


「盛れてる!」


---


「本当だ!」


---


「可愛い!」


---


「待ち受けにしようかな」


---


全員でスマホを覗き込む。


---


私は分からない。


---


正直全部同じに見える。


---


だが。


---


「綺麗に撮れてると思う」


---


そう言うと。


---


「分かってるじゃん」


---


美月が笑った。


---


適当だった。


本当に。


---


そんな平和な時間が続いた。


---


そして。


---


まだ誰も知らない。


---


この後始まる質問大会が。


---


私にとって新たな試練になることを。


---


第十二章 お泊まり会当日(前編) 完


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