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レベル0の雷帝  作者: ゆき
崩壊と再生

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7/30

6 議会

「今、気にすることじゃないって。まずは、帝国の復興だ」


 ダナフォルトが頭を掻いた。

 隣でベルフェゴールが少し呆れたような表情で周りを見渡している。


「いえ、ま、待ってください・・・」


 議会にはラグナディア帝国をまとめる者たち、帝国騎士団長3名、アステリア魔法学校の校長、フォルトゥナ魔法学校の校長、ヘカテー魔法学校の校長、ダナフォルトの屋敷の者数名、ラグナディア雷帝国の司祭3名が出席していた。


「ダナフォルト様・・・すみません、もう一度お願いします。えっと、ど、どうゆうことですか?」


「上位魔族の復活だ。俺が戦ってたのが暴食のベルゼブブという上位魔族。112年前、エレナが石化させたんだけどな。どうやって解いたのか知らないが・・・」


「じゃ・・・じゃあ・・・・」


「おそらく他の上位魔族も復活した、魔王も復活が近いんだろう。魔王の気配は現時点では、まだ感じていないけど、魔王の力失くして上位魔族の復活はあり得ない」


 ダナフォルトが椅子を揺らしながら言う。


「はっきりと言えるのはここまでだ。あとは、アルバスの言う通り、ラグナディア雷帝国の復興後に戦力の話をしていこう」


「はい! そのために、ラグナディア雷帝国では魔法学校を増設してきまいりました! 今や魔法に関してはトップレベル、平均値はどの国にも負けないでしょう」


 司祭長であり、ラグナディア雷帝国をまとめてきたアルバスが自信満々に言う。


 ラグナディア雷帝国で唯一のレベル96の賢者だ。

 高齢ではあるものの、あらゆる魔法に精通していて、魔力も判断力も衰えず、民の尊敬を集めていた。

 

「でも・・・・子供たちは・・・・」

 ヘカテー魔法学校の校長がハンカチで顔を覆って泣き出した。


「レベルを上げても、戦闘に慣れてないと勝てないんだ。帝国騎士団長のお前らもな」


「はい・・・重々承知しております」

「こんなに自分が無力だったとは・・・」


「僕は魔法学校を首席で卒業したのに、民を・・・目の前で・・くっ・・・」

 最年少の帝国騎士団長、ハリスツイードが奥歯を噛んで、テーブルの上に拳を握り締めていた。


「でも、確かにラグナディア雷帝国は昔よりもずっと教育が行き届き、強い国に・・・」


「アルバス、お前が赤ちゃんの頃から知ってるけど、状況を冷静に分析できない癖は直っていないみたいだな。そろそろ直せって。よく師匠にも怒られていただろう?」

 ダナフォルトが笑いながら言う。


 アルバスが顔を真っ赤にした。


「し・・・失礼しました」

 アルバスが白い髭を触りながら肩を丸める。


 隣の司祭が目を丸くしてアルバスとダナフォルトのやり取りを見つめていた。


「ラグナディア雷帝国の者は戦闘経験がほとんどない。これは俺が反省しなきゃいけないんだ。自分が歳をとらない分、自分が全てを守ればいいと思ってたんだよ」

 ダナフォルトが目線を下げる。


「エレナもガードグも、ドルゴールも、弟子をとったり、軍を鍛えたりして、自分亡き後の戦力の育成に力を入れてきた。俺の場合は112年間何もしていない。まぁ・・・」

 頭を掻いて、自虐的に笑う。


「正直、レベル0だから、どう教えればいいかわからないのもあったんだ。そもそもレベルアップしないし、ずっと0だしな」

「あの・・・」

 ヘカテー魔法学校の若い校長が小さく手を上げる。


「ダナフォルト・・・様はどうしてレベル0なのでしょうか?」


「校長アイリス・・・・」


「だって・・・魔王を倒したんですよね? 強いのにレベル0なんて、おかしいじゃないですか・・・本当に雷帝・・・といえるのでしょうか?」

 声を微かに震わせている。

 隣に座っていたフォルトゥナ魔法学校の校長がため息交じりに頭を抱えた。


「何を言っている。ダナフォルト様は紛れもない雷帝だ!」

 アルバスが声を荒げる。

 ヘカテー魔法学校の校長アイリスが、びくっとしていた。


「いいって、新しく来た者が知らないのは当然だからね。こうやって、みんなで集まるのは久しぶりだしね。ま、全員ではないけど・・・」


 ダナフォルトが誰もいない椅子を見ながら言う。

 来るはずだったヘスティア魔法学校、ペルセポネ魔法学校、アステリア魔法学校の校長と、教会のシスターだった。


「俺はとある契約をしてるんだ。契約の詳細は言えない。ただ、自分の瞳を渡す代わりに、ここに漂っている全ての魔力を使用できる」

 ダナフォルトが瞳を赤くする。

 

「例えば・・・」


 シュンッ


「!?」

 ダナフォルトがヘカテー魔法学校の校長アイリスの頭に、魔力で生成した剣を突き付ける。


「み、見えなかった・・・」

「こうやって、全身を魔力でコントロールすることも、魔力で武器を作ることもできる。レベル0でも魔力さえあれば問題ない」


「速い・・・どうやって移動したのかも追えなかった」


「何度見ても、神の技に見えるな。美しい、人間の入れない領域にいるような感覚だ」

 アルバスが少年のように瞳をキラキラさせながら言った。


「そんな神々しいモノじゃないって」

 ダナフォルトが魔法を解くと、赤かった瞳が通常に戻った。


「もちろん、今見たことを他の誰かに言ってはいけません。ダナフォルト様の能力の詳細は秘匿とされています。もし言ったら、私が直々に殺しにいきますので」

 ベルフェゴールが笑顔で胸を手に当てる。


「殺しに!?」


「というか、このことを契約者である俺以外が誰かに言えば、言った奴が死ぬんだよ。呪いの類だ。絶対に言うなよ」


「はい・・・」

「承知しました」


「・・・・・」

 ダナフォルトが目で黙るように、ベルフェゴールに圧をかけた。

 ベルフェゴールが軽く頷くと、ゆっくり歩いて席に戻っていく。


「このやり方は誰もできない。ドルゴールたちのように育成するのは無理だ。何か考えなきゃな」

 頬杖をついた。


「とりあえず、今は俺がいる、ラグナディア雷帝国から出ることもない。民の傷が癒えて復興するまでは、上位魔族も魔族のことも気にしないで普通の生活に戻ることが優先だ」

「・・・はい」


「国を復興してから、戦力について考えればいい。まずは、みんな、自分を労われ」


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


 部屋が静まり返った。

 会議にいた者たちが、俯いて涙を流していた。


 亡くなった親族、友人、守れなかった自分を責めていた。

 アルバスが深い息をついて、髭を触っている。



 ダナフォルトがすたすたと歩いて扉の取っ手を掴む。

 何か言おうとして止まったが、すぐにドアを開けて出ていった。






「明日は俺もアステリア魔法学校に行ってみないとな。なんかクラスメイトの反応が面倒臭そうでうんざりするけど」

 ダナフォルトが金色の髪をなびかせて、屋敷のほうへ向かう。

 あえて人通りの少ない、遠回りの道を歩いていた。


「いいのですか?」

「何がだよ」

 ベルフェゴールがダナフォルトに問いかけると、ダナフォルトが機嫌悪そうに振り返った。


「本来はゼウシティア王国に行き、ラグナディア帝国の状況を伝える義務があります」

「風のうわさで向こうから誰か来るの待つしかないだろ」


「それに、ダナフォルト様はもう一度魔王討伐のパーティーに・・・」

「行けないだろうが。この国を離れられない。魔族がどこまで強くなっているかも未知数だし、世界平和より自国だろ」

 ダナフォルトが手をひらひらさせた。


「それに・・・もう、一緒に旅をしたい仲間もいないしな」

 腕を伸ばしてから、石を蹴った。

 ころころと転がって、小さな川へ落ちていく。


「ベルフェゴールだってそうだろ?」


「そうですね。賭け事で怒られるガードグも、ご飯が足りなくて泣くエレナも、なかなか起きずに崖から突き落とされるドルゴールも、方向音痴でからかわれるダナフォルト様も見ることができませんし・・・」


「悪魔ってよくそんな詳細覚えてるよな」

「はい、大好物でございますので」

 ベルフェゴールが言うと、ダナフォルトが少し笑みを浮かべてから、ため息をついていた。

 

「ダナフォルト様!!」


 角を曲がると、屋敷の門でダナフォルトの帰りを待っていた、ミュゼリアとベアルリア声が響いた。

 ダナフォルトがいつも通り変わらないのを見てほっとしているようだった。 

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