↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル0の雷帝  作者: ゆき
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/30

2 英雄の最期の言葉

 ヴェルガルド炎帝国は賑やかに活気づいていた。

 魔道具も豊富で、魔法石を叩き売りしている商人のおばさんまでいた。


 ダナフォルトは真っすぐ、ドルゴールのいる屋敷に入っていった。

 

「ダナフォルト様、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」

「あぁ、ありがとな」


「っ・・・・」

 ダナフォルトがフードを取る。

 ドラゴン族の兵士が涙をこらえながら、ダナフォルトを案内していた。


「ドルゴール」

 簡素な創りの木のベッドに、もうすぐ死を迎えるドルゴールが横になっていた。

 かつて、英雄として称えられた右腕は弱弱しかった。


「ダナフォルト・・・・」

「久しぶりだな、死に際に会えてよかったよ。俺が到着する前にくたばるかと思ってたからさ」


「フン、相変わらず、口の悪い奴だ」


 ダナフォルトが軽く笑って、ドルゴールの傍にある椅子に座った。

 兵士がそっと扉を閉める。


「ドラゴン族も老けるんだな」

「ガキにはこの渋いかっこよさがわからないのか」


「ガキじゃないって。もう100年以上生きてるんだから」


「ダナフォルト」

「・・・・・」

 ドルゴールがダナフォルトの頬に手を伸ばす。


「結局、悪魔と契約したお前だけが残ってしまったな」

「・・・別にいい。契約したときに覚悟していた。見送るのは慣れてる」

 ダナフォルトが悲しそうに笑いかける。


「エレナはお前のこと好きだたんだぞ」

「は?」

「ガードグは賭け事が好きで、装備を全部取られた時があったなぁ。あの時は俺が殴り掛かって、エレナが止めて・・・ダナフォルトはただ爆笑してるだけだったなぁ」


「はは、走馬灯でも見てるのかよ。とっとと休めって」

 ドラゴンの鱗が浮き出た、ドルゴールの手を握り締めた。


「あとは、俺に・・・」

「雷帝ダナフォルト、パーティーで一番年下だった、お前を一人残していくのは心配だな。他の2人に怒られそうだ」


「もうどれだけ生きてると思ってるんだよ。心配するなって」


「お前はいつまでも、最年少の、俺たちのリーダーだ」


「!!」

 ダナフォルトが目を丸くする。


「・・・無理はするな。シンプルに生きろ。深く考える必要はない。目の前のことだけでいい。お前の力は、まだこの世に必要だから、生き残るんだ」

「・・・・・・」


「ただ、目の前の守るべきものを・・・」


 ― 守れ ―


「ドルゴール」

 ドルゴールの手の力が抜けて、息を引き取った。

 ダナフォルトは無言のまま、しばらく椅子に座って窓の外を眺めていた。


「・・・じゃあな、親友」

 立ち上がる。

 光が差し込み、鳥がじゃれあいながら飛んでいくのが見えた。





「ドルゴール様・・・・」

 炎帝ドルゴールの周りにいた、ほんの数人だけが集まり、小さな葬式を開いた。

 英雄が静かに送り出されるのは、魔族に炎帝がいなくなったと気づかなくするためだった。


 ダナフォルトが白い花を棺に置いて、軽く飛ぶ。

 帝国軍の指揮官らしき男に声をかけた。


「ヴェルガルド炎帝国の軍はすぐに動ける状態にあるよね? エレナのときも、ガードグのときも、死んでから数日から数週間、魔族の攻撃が止まらなかったんだ」


「はい、炎帝ドルゴール様から指示を受けています。軍は既に配置しており、24時間体制をとっています」

「さすが、ドルゴール。ぬかりがないな」


「我々、帝国軍はドルゴール様に鍛えられた力があります。必ず民を守ります。でも・・・・・」

 男が堪えきれず涙を流す。


「ドルゴール様がいらっしゃらなくなるのは寂しいですね。自分が幼き頃から指導を受けていたので・・・」

「そうだよな」


 あちらこちらですすり泣く声が聞こえていた。

 ドルゴールは一般人として暮らしていたが、多くの民から愛されていた。


 英雄だったということを隠しても・・・。


 ダナフォルトが長い溜息をついた。

 棺に向かって一礼してからフードを押さえながらヴェルガルド炎帝国から出ていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。