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レベル0の雷帝  作者: ゆき
魔導闘技大会

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26/31

25 失格者

 オオォオオオオ


 観客席が沸き立っていた。


「やけに騒がしいと思ったら、次の試合は帝国騎士団長ガルハルト率いる4人と魔導ギルド・アルカナムの魔導士4人か」

「3人も強くはありますが・・・あの、ノエルという少女、一人だけ飛び抜けてますね」


「あぁ。魔導ギルド、アルカナムは他国のクエストも受けている。魔法学校には通っていないね。正直、かなり強いと思うよ」


 ベルフェゴールが声を低くして、ツインテールの16歳くらいの少女に目を向ける。


「契約者です。何者かと契約していますね・・・?」

「神秘罰騎士団(ジャッジメント)ではないな。でも、いい勝負になりそうだ」

 ダナフォルトが座り直して、足を組んだ。


「ダナフォルト様はどちらが勝つと思いますか?」

「僅差でガルハルトだな。何か賭けるか?」


「私は、アルカナムの魔導士4人かと思いますよ」

「理由は?」


「ダナフォルト様は賭けに弱いからです」

「ふん・・・・」

 ベルフェゴールがニコニコしながら、ダナフォルトを見下ろした。




 パンッ


 司祭がバトルスタートの炎を上げた。


「子供相手だとしても、勝者はしない」

「ガルハルト!」

「おう」

 帝国騎士団の2人が魔法陣を展開する。

 ガルハルトが勢いよく地面を蹴った。


 ― 合技 トルディア・ストライク ―


 2人の魔導士が向かい合って風と水を合わせて嵐を起こし、真ん中から現れたガルハルトの剣が会心の一撃を放つ。

 

 キィンッ


 アルカナムの魔導士アルヴェインが六角形のシールドを張って、ガルハルトの一撃を止めていた。


「すごいな。でも、まだまだだ」

 ガルハルトがにっと笑って、飛び上がった。


「ノエル」

「了解」


 ― エギリル スタイン ―


 ノエルが杖を頭上に掲げて詠唱した。


 シュウウウウウウウ


 魔法陣から氷の渦が現れた。

 意志を持っているかのように、うねりながらガルハルトたちに襲い掛かる。


 パン パン パン


 後方にいたメシェトがいくつか魔法を打って下がっていく。


「ガルハルトさん! 今のうちに」

「あぁ、ありがとな! メシェト!」

 ガルハルトがすぐに回復して、アルカナムの魔導士に剣を向ける。

 氷の渦は少し離れて、会場を包むように回りだした。




 ダナフォルトがバトルを見ながら、口に手をあてる。


「ベルフェゴール、ノエルが召喚した、あれは悪魔か?」

「違いますねぇ・・・普通の人には見えていないみたいですが・・・」


「まぁ、少なくともガルハルトは気づいていないようだ」


 ノエルが出したのは攻撃魔法ではなく、召喚魔法だった。

 青い聖霊のような女性のような体つきをした何かが、氷の渦を操っている。


 明らかに異質な者だった。


「ギルドにも強い奴らはいるんだな」

「当然ですよ。ダナフォルト様から見れば全員弱く見えてしまうだけで、個々の能力は高い国かと存じております。ま・・・」


 ベルフェゴールが目を細める。


「上位魔族の足元にも及ばないでしょうけど」

 

 アルカナムが軍の者の攻撃を避けた。

 ふわっと飛んで、杖を銃のように構えた。


 パリンッ


 ガルハルトがシールドを割って、アルカナムの魔導士に剣を振り下ろす。


「うああぁぁぁああああ」

「大丈夫か!?」

「うぐっ・・・・・悪い」

 逃げ遅れたアルカナムの魔導士は血が噴き出していた。

 もう一人の魔導士がすぐに治癒に回る。


「悪いな。致命傷は避けてあるから死なない」


「降参するまで、治癒はさせない。ごめんね」

 メシェトが治癒をしようとした魔導士に、光線のような魔法を打つ。

 魔導士の杖がくるくる回って地面に落ちた。 


「さぁ! 降参してくれ!! 早く!!」


「・・・・・・」

 ノエルとアルヴェインは表情一つ変えない。


「アルヴェイン、アレを使うから」

「わかった。頼む」

 アルヴェインのノエルの肩を叩いた。


「?」

 ノエルが杖から手を離した。 

 青い女の聖霊がふらふらしながら、ガルハルトたちに接近する。


 大きく口を開ける。真っ黒な口の中から手が現れた。


 ― Lux, Exsting… ― 


 ザッ


 ダナフォルトが瞬時に移動して、杖でノエルの魔法を弾いた。

 ノエルの持っていた杖を奪う。


「お前・・・」

 青い女の聖霊を睨みつけると、ゆらゆらしながら下がっていった。


「?」

 ノエルが目を丸くした。

 アルヴェインがノエルの前に割り込む。


「な、何するの?」


「今、殺そうとしたな?」


「してない。ほら、何もないでしょ? たまたまよ」

「嘘だ。俺がその得体のしれない聖霊が見えていないと思って言ってるのか」


「!?」


「奴は今、魂を吸って砕こうとしていた」

 ダナフォルトが低い声で言う。


 観客にダナフォルトの言葉は聞こえず、何が起こったかわからないようだった。

 アルバスが宥めようとしていたが、どんどんざわめきが静かになっていく。


「ルールを聞いてなかったのか? 殺すのはナシだ」

「・・・だって・・・」


「そんな甘いこと言ってるから弱いんだよ! この国は!!」

 アルヴェインが声を大きくした。


「アルヴェイン・・・」


「雷帝がレベル0だから、わからないんだ。この国は圧倒的に弱い・・・弱いから、俺たちの両親も死んだんだよ。みんなおかしいよ。レベル0の奴を英雄として見ろなんて、狂ってる」

 腹の怒りを吐き出すように言っていた。


 ガッ


 ダナフォルトがアルヴェインの胸倉を掴んだ。


「言いたいことは、それだけか?」


「なんだよ、その目だって・・・ダナフォルト、お前だって何かと契約してるんだろ? じゃなきゃ、レベル0の理由がつか・・・」


「無駄な時間は使いたくない。次口を開いたら殺す。魔法を使おうとしても殺す。周りが何かしようとしても殺す」

 ダナフォルトが言葉を遮る。


「!?」


「ルールはルールなんだよ。どんなに俺を見下そうと、恨んでいようと、覆らない。こいつらは、明らかに帝国騎士団長ガルハルトたちを殺す目的で動いた」


 ダナフォルトが周囲に視線を向けながら淡々と言う。

 ガルハルトが何か言おうとしたが、口をつぐんだ。


「ハハ、俺が甘い? 魔王を殺した俺が甘いわけないだろうが」

 ダナフォルトが笑みを浮かべる。


「っ・・・・」

「殺す奴は殺される覚悟を持った奴なんだよ。今後このようなチームが出ないように、魔導ギルド、アルカナム、アルヴェインを殺・・・」

 

「お、お願い! お兄ちゃんに何もしないで!!」

 ノエルが涙目で懇願する。


「殺そうとしたのは私の独断だから、私を殺して」

「・・・違う、俺が指示した・・・・」

 アルヴェインが声を震わせる。


「ごめんなさい。ほら、召喚いていた子はもういない。お兄ちゃんに何もしないで・・・ください・・・私のたった一人のお兄ちゃんなんです・・・」


「・・・・・・」


 ダナフォルトが視線をずらして、アルヴェインの胸倉から手を離した。

 左手に練っていた魔力を飽和させる。


「魔導ギルド、アルカナム。お前ら4人は失格だ」

 

「お兄ちゃん・・・あ、アルヴェイン!」

 ノエルがアルヴェインのほうへ駆け寄っていった。

 

 ダナフォルトが司祭に目で伝える。


「えー・・・今の試合、帝国騎士団の勝利とします」

 司祭が右手を挙げた。


 多くの民衆は何が起こっているかわからなかったらしく、近くの者に聞いたりしていた。

 リハーナは何かを理解したようで、ダナフォルトから視線を外さなかった。 



「おい、ダナフォルト」

 ガルハルトが声をかける。


「こんなので勝てても、トーナメント上がれるって言えないだろ。引き分けで負けにしてくれ」

「ガルハルト様」


「あの少女が放った何かに気づけなかった時点で負けだ」

 ガルハルトが悔しそうに剣をしまう。


「自虐する暇があるなら、次のバトルで勝ってくれ。この大会の目的は全体の戦闘能力の底上げだ」


「でも・・・・」

「ガルハルトが自分の実力を客観視できただけでいいんだよ。次につなげてくれ」


 ダナフォルトがひらひら手を振って、軽く飛ぶ。

 涼しげな顔で、自分のいた席に戻っていった。

 

 魔導士ギルド、アルカナムの魔導士は司祭から応急処置を受けて運ばれていった。

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