↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル0の雷帝  作者: ゆき
アステリア魔法学校

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/30

17 英雄は・・・

 ― Östèndè vèräm nätÅ«räm tūäm ―

  

 ダナフォルトがクラウドの腕に手を翳して唱える。


 ナターシャとヌヌが心配そうに、のぞき込んでいた。


 ― ディズ・ランディア ―

 

 シュウウゥウウウウウ


 『魔族の刻印』が消えていった。


「会長! 大丈夫ですか?」

「あぁ、何ともない。少し頭痛がするくらいだな。さっきも確認したけど、他の先生や生徒の中に『魔族の刻印』が残ってる者はいないんだよな?」


「あぁ、何度も確認した」

 クラウドが片膝を立てて、ダナフォルトの目を見る。


「クラウドが最後だよ。ありがとな、生徒会が動いてくれたおかげだ」


「よかった・・・ほんの少しでも会長としての役目を果たせたかな・・・」

 クラウドが安堵の表情を浮かべる。


「クラウド、少し魔力を練ってくれ」

「あぁ・・・」 

 ダナフォルトが、クラウドに魔族化の痕跡が残っていないか確認しながら言う。


 アステリア魔法学校の1階ホールと、地下の結界に分かれて避難していた。


 ダナフォルトたちがいるのは生徒会室だ。

 逃げる際に怪我したり、具合が悪くなった生徒たちを連れてきていた。

 先生たちが後ろで治療にあたっている。 


 全員軽傷だ。


 『魔族の刻印』があった者は、生徒52名、先生5名だった。

 最後にクラウドの刻印を解除するまでにかかった時間はわずか15分。

 

「魔族化の兆候はない。でも、あと1分遅ければ魔族化が始まっていたな。今日は魔力は練らないようにしたほうがいい」

「あぁ、ありがとう。助かったよ」


「ありがとうございます!!! 本当に・・・」

 ナターシャが涙ながらに頭を下げていた。


「・・・その・・・こんなことになるなんて・・・」

「ダナフォルト・・・ごめん、俺ら・・・」

「本当に英雄だったなんて・・・」


 周囲にいた生徒たちが、ぼそぼそと謝っていた。


「この時間を稼いでくれているのは、リハーナだ。リハーナがいなければ、動けなかった。英雄だったらこんなことになる前に、どうにかできただろうな・・・」


 エレナ、ドルゴール、ガードグのことを思い浮かべながら言う。


「まぁ、感傷に浸ってる場合じゃない」


 ダナフォルトが空中から杖を出す。


 ヌヌが前に出る。


「ダナフォルト、ルシファーと戦うんだよね? 僕も・・・」

「いや、ここにいろ」

「僕も戦いたい。ほんの少しでも!」


「・・・・・」

 ヌヌがついていこうとしたが、ダナフォルトが一気に飛び上がって、天窓から外へ出ていった。

 ダナフォルトが行った後、ヌヌがクラウドに止められていた。 




 ザアアァアアア


 1体のドラゴンとリハーナがルシファーに体を貫かれていた。

 血しぶきが飛ぶ。


 リハーナの体は気を失ったまま、再生していった。



「・・・フォルティナ・・・?」



 ダナフォルトが一瞬固まった。

 ルシファーが苛立ちながら唾を吐くと、リハーナがふらつきながら剣を持ち直した。


『申し訳ない』

 ドラゴンが消えていく。


「俺とダナフォルトの邪魔をしやがって、弱っちい癖によくこんなことするな」

「・・ごほっ・・・弱くても戦わなきゃいけない時がありますから」


 ルシファーがリハーナの目を見て、


「視点も定まらないくせによく言うよ。ん・・・? お前みたいなやつを見たことがある・・・あれは・・・」


 ダナフォルトが杖を向ける。


 ― リディト・グルシャ ―


 魔法陣を展開して、ルシファーの頭上に巨大な剣を出現させる。

 リハーナがダナフォルトを見つけて、ほっとしたようにドーム型の結界を解いた。


 ― オン ― 


 ドーンッ


「!?」

 ルシファーの翼を焼き切った。

 ダナフォルトがリハーナを抱えて、杖を空中で操っていた。


「っ・・・これはダナフォルトの・・・・」

 ルシファーが片足をついて自己回復を始める。

 切れた翼と右腕が消えていった。


「・・・すごいです、師匠様。こんなに早いと・・・思いませんでした」

「リハーナ、何回死んだんだ?」


「・・・教えません・・・」


 リハーナが血だらけになりながらほほ笑んで見せた。


「・・・・・・」

 ダナフォルトが浅く呼吸をして、リハーナを抱えたまま、ルシファーの前に立つ。


 ― オン ―


 空中に浮かぶ巨大な剣をもう一度、ルシファーに振り下ろす。

 

 ドンッ ジジジジジジ


「ガハッ・・・」

 大量に血を吐いて、背中に突き刺さったまま倒れた。

 電流がルシファーの肉体を駆け巡る。


「ぐああぁぁっ」

「おい、よくも俺のいるラグナディア帝国のアステリア魔法学校の者に危害を加えたな。いい度胸だよ」


「こ・・・こうだよな・・・ダナフォルトは・・・魔王様・・・を打ち破った者・・・だ」

 ダナフォルトが冷めた目で、ルシファーを見下ろす。


「ダナ・・・フォルト・・・」

 ルシファーが薄ら笑いを浮かべる。


「お前は・・・・この場所・・・でいつも・・・一人だった。かつて・・・の英雄も・・・時が経てば、無残なものだ・・・」

 息も絶え絶えに言う。


「・・・・身をもって、経験してきただろう? 人間の醜さ・・・愚かさ・・・お前は元々人間を恨んでた・・・唯一の仲間が死んで、あの時を思い出さないか・・・・?」


「・・・・・」

 ルシファーが這いつくばって、ダナフォルトを見上げる。


 ダナフォルトの目は怒りで血走っていた。


「黙れ。クズが」


「!!」

 浮いていた杖がルシファーのほうを向いた。


 ― C̷l̷a̷d̷e̷s̷ ̷s̷c̷i̷n̷d̷i̷t̷;̷ ̷t̷o̷n̷i̷t̷r̷u̷a̷,̷ ̷i̷n̷t̷o̷n̷ā̷t̷e̷!̷ ― 


 カッ

 

 バリバリバリバリバリバリバリバリッ・・・


 ぐああぁぁあぁぁぁあああ


 四方八方から放たれる黒い雷が、ルシファーを切り裂いた。

 跡形もなく消えていく。


「師匠様、もう大丈夫ですよ」

「あ? あぁ・・・」

 ダナフォルトがはっとして、リハーナを降ろした。

 空中に浮かんだ杖を掴む。


「さすが師匠様ですね。私なんか、攻撃一つできなかったのに」

「怪我、大丈夫なのか?」


 リハーナの出血量は普通の人間から見るとと即死レベルだった。

 血の量から想定して、7回は死んでいるはずだ。


「はい。自動回復するので、少し眩暈があるくらいです」

「・・・何回死んだんだ?」


「内緒です」

 リハーナが額から血を流しながらほほ笑んだ。


「ダナフォルト様の召喚獣も一緒に戦ってくれたんです。でも、私を庇って消滅して・・・・」

「奴らはやわじゃない。休息すれば元の強さに戻る」

「そうですよね」

 リハーナが胸に手をあてて、ほっと息をついていた。


「・・・・・・」

 ダナフォルトが複雑そうな顔をする。


「どうしたんですか?」

「・・・悪い、俺が早くに気づけていれば・・・」

「何も謝ることはないですよ。ルシファーをすぐに倒してしまうなんて、師匠様はやっぱり英雄ですね。あ、でも、上位魔族は心臓が別のところにあるんですよね?」


「・・・・・・・」

「師匠様?」


 ダナフォルトが俯いて沈黙していると、校門前から猛スピードでミュゼリアとベアルリアが走ってきた。


 ドドドドドドドドドドド


 砂埃が立てて、ダナフォルトの前で止まる。


「え・・・?」


「ダナフォルト様!!!大丈夫ですか!?」

「ベルフェゴールから聞いて・・・まさか、ルシファーがいるなんて」

「どこかお怪我は!? 私たちもお役に立てればと思います。ダナフォルト様の屋敷のメイドとして!」

 ミュゼリアとベアルリアが半泣きでダナフォルトを囲んだ。


「なんともないって。それに・・・もう終わったよ」

 ダナフォルトがひらひらと手を振る。


「ベルフェゴール・・・」

 木の陰や校舎の屋根に視線を向ける。


 どこかでこの様子を見て楽しんでいるだろうと思っていた。


「ダナフォルト様、私も役に立ちたいんです」

「私も私も!」

「屋敷のことだけで十分だよ。2人もよくやってくれてるし」

 ダナフォルトが一歩下がって、頭を掻いた。


 リハーナが2人に囲まれるダナフォルトを見て、ため息をつくと、一人でアステリア学校の校舎に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。