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レベル0の雷帝  作者: ゆき
アステリア魔法学校

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17/30

16 傲慢の選択

 ルシファーが魔法陣から大剣を出す。

 地面に突き刺して、黒い魔法陣を展開した。


 ― 煉獄の業火(ディラスグディア) ―


 ゴオオオオオォォォォ


 ダナフォルトが軽く飛んで離れる。

 黒い炎が現れて柱のように空高く上がっていった。


 ルシファーが炎の中から、一気に距離を詰めてダナフォルトに襲い掛かる。


 ガンッ


「!?」

 ダナフォルトが簡易シールドだけで、ルシファーの攻撃を止めた。


「はは、随分弱くなったな? お前」

 ダナフォルトが煽るように笑った。


「一回、俺の攻撃を止めたくらいで、随分でかい口を叩くな」

「事実を言っただけだよ。だって、バフをかけたのにこんなに弱いんだから」


「・・・・・」


 ダナフォルトが高い位置から、ルシファーを見下ろした。

 杖を下に向ける。



 ― ディズ・ランディア ―


 しゅううぅうううううう

 

「なっ・・・・」

 ダナフォルトが唱えると、ルシファーの炎はすぐに煙となって消えていった。

 ルシファーにかかっていたバフも無くなった。


「どうせ、煉獄の業火を出してこのあたりの魔力を燃やそうとしたんだろう。でも、無理だ。ラグナディア帝国は無限に魔力が流れてる」


「クククククク」

 ルシファーが肩を震わせて、天を仰いで笑い出した。


「最高だ! ダナフォルト! やっぱりダナフォルトだ! ダナフォルトはこうじゃなきゃな!」


「・・・・俺の名前を呼ぶな。気分が悪い」

 ダナフォルトが呟く。



 ― リジュア・オン・ルドゥ・・・ ―


 ダナフォルトが平然と歩いて、魔法陣を展開していく。

 ルシファーが空高く飛び上がった。


「でも、上位魔族である俺を舐めるなよ」


 一気に降りてきて、ダナフォルトが展開した魔法陣を裂いた。

 ダナフォルトがふらっと避けて、杖を剣に変える。


「っ!?」

 

 ― ディグド・グルシャ ― 


 ザッ 


 雷を纏う剣がルシファーの翼を切り裂いた。

 青い血が噴き出す。


「っと」

 ダナフォルトがすぐに体勢を変えて、ルシファーのカウンター攻撃を避けた。


 杖を向けて、裂かれた魔法陣をもう一度浮き上がらせる。

 赤い瞳をルシファーの頭に向けた。


 ― ガリディア・ウル ー


 ドーン



「ぐあっ・・・・」

 魔法陣が発動して、ルシファーに雷が落ちる。

 地面に亀裂が走り、砂埃が舞った。

 

 砂埃の中から片足をついたルシファーが現れる。

 頭からは青い血が流れていた。


「な・・・なるほど・・・112年前、俺と戦ったときよりも強いってわけか・・・・」

 ルシファーが息を切らして、後ろに下がりながら言う。


「どうだろ、強くなったのかはわからないよ」

 ダナフォルトの剣がバチバチと音を立てていた。


「俺より強い奴に会ったことないからさ」

「・・・傲慢だな」


「そうだよ。傲慢のお前を倒した俺は、お前より傲慢なんだよ。上位魔族は自己回復能力が高い。これで死ぬわけないだろうが、何度・・・」


 ダナフォルトが飛び上がろうとして、固まる。


「!!!!」

 周囲の動きに目を向けた。



「ハハハハハハハハハ、気づいたか」

 ルシファーが片方の翼を復活させながら高笑いする。


「『魔族の刻印』だ。俺たちが戦ってる間に、刻印を押した者は全員魔族化するだろうな」

「いや、アレは複数の人間に同時にかけられないはず。『魔族の刻印』を使った魔族の、肉体のどこか一部を使うから・・・」


 ダナフォルトがエレナが残した文書を思い出しながら言う。


「112年前とは、仕様がだいぶ変わったんだよな」


「!?」


「ハハハハ、水帝エレナの研究は無駄だったってことだ。安心しろ。一応魔族になる者は選んでおいたんだ。全員魔族化したら、恐怖が無いもんな」


「・・・・・・・」


 ダナフォルトが浅く呼吸をして、青ざめていった。


「どうせ、解除魔法だってお前しか使えないんだろ? ここで、俺と互角に戦えるのもお前だけ。どうする? 俺はどっちでもいいぜ」


「クソが・・・」


 ルシファーを倒しても、『魔族の刻印』は無効化されない。

 発動の合図から刻印が浮き上がり、徐々に魔族になっていく。


 長期戦になれば、アステリア魔法学校の者たちが魔族化して、人間を食らう。

 誰も助けることができない。


 ダナフォルトの額に汗が滲んだ。




 ― 氷絶対血界(ルシュール・ウィルオル) ―


 冷たい空気があたりを包む。

 はっとして、ダナフォルトが顔を上げた。


「リハーナ!?」


「・・・・・・」

 杖を持ったリハーナが、空から降りてくる。

 薄い氷のようなドーム型の結界がリハーナとルシファーを囲んだ。


「どうして・・・」

 外に出されたダナフォルトが呆然とする。


「ダナフォルト様、申し訳ありません。やっぱり、私、戦います」


「んあ?」

 ルシファーが耳を掻いて、唾を吐いた。


「『魔族の刻印』がクラウドの腕に現れました。ここは私が時間稼ぎをします」

「でも・・・・」

「大丈夫です」

 リハーナが両手で杖を握り締める。


「この結界は私が自分が解除するか、死後3秒以降でなければ解除されないんです。この意味、わかりますよね?」


 リハーナがダナフォルトを見て、ほほ笑んでみせる。



「っ・・・駄目だ! ルシファーは上位魔族だ。普通の魔族とは違う。リハーナが太刀打ちできるような相手じゃない。アンデッドとはいえ、何をするか・・・」


「でも、『魔族の刻印』はダナフォルト様でなければ解除できないんです!」

 リハーナが必死に訴える。


「お願いです! ダナフォルト様! 今はまだ刻印が現れたばかり、間に合います!」

「・・・・・・」


 ダナフォルトが奥歯を噛んだ。


「ダナフォルト様、お願いします。もうあんな光景見たくないんです!」


「・・・悪い、リハーナ。じゃあ、こいつらを入れてくれ」


「え・・・・?」


 ダナフォルトがリハーナのいる結界の中へ、杖を向ける。 


― 七つの月は沈み、八つ目の影が天へと昇る。

  その刻、我は古き門の前に立つ。

  封印されし石門よ、永き眠りより目覚めよ・・・・


  ˆx Nihilø ad Nihiløm,äb Initîo äd Fînem.

  ˆx Nihilø ad Nihiløm,äb Initîo äd Fînem.

  ˆx Nihilø ad Nihiløm,äb Initîo äd Fînem -


 ダナフォルトがリハーナの結界内に魔法陣を展開した。



 ズズズズズ・・・ 


「!」

 7体の召喚獣が魔法陣から飛び出して、リハーナを囲む。


『魔族の匂いが濃いと思ったら、上位魔族ルシファーか』

『封印が解けたってのは本当だったんだな。相変わらず醜い奴だ』

 白い大蛇がとぐろを巻いていた。


「リハーナを援護しろ」


『かしこまりました。ご主人様』


 大きな獅子のような獣がリハーナに近づく。


「ふふ・・・3回も殺されたけど、味方になると心強いですね」

 リハーナが7体の召喚獣を見上げて笑った。


『わかっているとは思うが、我々は召喚獣。倒されれば消えるからな』

 獅子が鬣をなびかせながら言う。


「私のことは大丈夫です。死ぬのは慣れていますから」


 7体の召喚獣は、リハーナが思っている以上に、リハーナを快く受け入れていた。



「俺とダナフォルトの間に入ろうとするとはいい度胸だな」


 ルシファーが怒りに満ちた表情で、リハーナを睨みつける。



「では、いきます」


 ― 氷雫力昇(ルシュール・スヴォール)―

 

 氷の結晶が舞いながら、7体の召喚獣を包んだ。

 各々のステータスが上がっていく。


『清々しい、いい魔法だ』

 ドラゴンが地面に爪を立てながら言った。


「ガキが! 邪魔だ! どけろ!!!!」


 ルシファーが大剣を持ち直して、リハーナ目掛けて突っ込んでいく。 

 獅子がルシファーの後ろに回った。



 ゴオォォォォオオオオオ


 勢いよく聖なる炎を吐く。



 ダナフォルトが決意したような表情で、杖を持ち直した。

 真っすぐ混乱し始めた校舎の中へ、飛んでいった。

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