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レベル0の雷帝  作者: ゆき
アステリア魔法学校

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16/30

15 ルシファー

「今日はこちらでお休みになっていたのですか」

「よく見つけてくるよな」


「ダナフォルト様の執事を100年以上勤めているので」


 ダナフォルトが屋敷の屋根で横になっていると、ベルフェゴールが歩いてきた。


「リハーナ様はダナフォルト様を学校中探していたようですよ」

「あ、一緒に帰るとか言ってたな」


「そんなこと言ってると、女性にモテませんよ?」

「別にモテなくたっていいよ。どんなに美人で巨乳な女だって、俺より老けて先に死ぬだけだしな」

 笑い交じりに言う。

 

「根暗ですね」

「はいはい、なんとでも言ってくれ」

「まったく・・・・・・」

 ダナフォルトが適当に返すと、ベルフェゴールが複雑な笑みを浮かべていた。


「ルシファーを見つけたことが、そんなにショックですか。ダナフォルト様なら、ある程度予想はついていたのではないですか? だから・・・」

「ショックというよりキモいんだよ。復活してすぐに攻撃せず、アステリア魔法学校に、1年も潜伏してたのかよ」

 ダナフォルトが心底嫌そうな顔をする。


「封印が完全に解けていなかったので、力が無く、行動に起こせなかったのもあるでしょう」

 ベルフェゴールが目を細めた。


「よりによって俺のいるアステリア魔法学校に来るか?」

「上位魔族は根に持つタイプが多いので。ダナフォルト様が八つ裂きにした恨みを、ずーっと抱えていたんでしょうね。彼はダナフォルト様が大好きでしたから」


「はぁ・・・この、気持ち悪さを共有できる奴がいないのがもどかしいよ。今頃、天国でガードグとドルゴールが爆笑してるだろうな」


 ダナフォルトが腕を摩った。


「・・・なぁ、ハーネスは・・・」

「とっくに死んでますよ。弱みに付け込まれたんですよね」


「そうだよな・・・ハーネスの記憶を知っているようだった。奴は俺とハーネスとの会話も覚えているような口ぶりだったんだ」


 ダナフォルトが怒りを抑えながら、傍にあった小石を拾った。


「そうですね。だから、体を乗っ取られてすぐにハーネスの愛するレティアを食ったのです。そこで、ハーネスは自分の制限を解いて、記憶も全てを奪うことを許してしまったのでしょうね」


「クソが・・・・・」

 ダナフォルトが小石を遠くに投げた。

 遠くまで行かずに、すぐそばで落ちる。


 周囲の魔力を集めなければ、ダナフォルトの力は幼子に等しい。

 自分の手のひらを見つめながら黙っていた。


「はい、苦い話はここまでです。ダナフォルト様、明日は学校ですから、もう部屋でお休みください」


「わかったよ。明日は重い一日になる。ふかふかのベッドで熟睡してやる」


 ダナフォルトが瞳を赤くして、ふわっと飛びながら下の階へ降りていく。


 ― 氷雫力昇(ルシュール・スヴォール) ―


「!」

 氷の結晶がふわっと広がっていく。

 心地いい冷たい風が吹く。


 リハーナが庭でステータス上昇の魔法を試していた。

 杖に埋め込む宝石を変えながら、魔力の微調整をしている。


 ダナフォルトがふっと笑って、自分の部屋に戻っていった。

  




 アステリア魔法学校はいつもの朝を迎えていた。

 ダナフォルトの瞳が赤くなる。

 杖に魔力を溜めながら、アステリア魔法学校までの道を歩き始めた。


「あ! 師匠様! また私を・・・」

「リハーナ、これから戦闘になる」


 ダナフォルトがリハーナを見ずに言う。

 リハーナが一瞬で、ダナフォルトがこれからしようとしていることを察知した。


「わ、わかりました。私は・・・師匠様の足手まといになりますから・・・」


「集中したい。生徒たちはうまく誘導してくれ。もし、怪我人が出るようであれば、手当ても」

「はい、自分にできることをします」

 リハーナが杖を出す。


「ご安心ください」


「・・・・・・」

 ダナフォルトの急激な魔力の高まりに、周囲の者たちがどよめいていた。

 杖を中心として渦ののように、ダナフォルトの体の中に入っていく。


「ダナフォルト!」

 アステリア魔法学校に入ると、すぐにクラウドが駆け寄ってきた。


「どうした? この魔力・・・何するつもりだ?」

「傲慢のルシファーが見つかったんだよ。これで、照準を合わせることができる。ヌヌに礼を言っておいてくれ」


「え?」

「離れてろ」


「お願い! 危ないから離れて!」

 リハーナがクラウドを引っ張って、ダナフォルトから離す。


 ダナフォルトの持っている杖が黄金に輝いた。


 ― R̷̛e̶͝v̴e̷l̸a̶̕ ̸v̴e̷r̶a̸m̷ ̴n̸a̶t̷u̶r̸a̷m̵ ̷t̸u̶a̷m̸. ― 

 ― R̷̛e̶͝v̴e̷l̸a̶̕ ̸v̴e̷r̶a̸m̷ ̴n̸a̶t̷u̶r̸a̷m̵ ̷t̸u̶a̷m̸. ― 

 ― R̷̛e̶͝v̴e̷l̸a̶̕ ̸v̴e̷r̶a̸m̷ ̴n̸a̶t̷u̶r̸a̷m̵ ̷t̸u̶a̷m̸. ― 


 ブワッ


 アステリア魔法学校の校舎全体に雷が走った。

 突然の風と電流に、壁と窓が揺れている。



「!?」

 生徒たちが窓からこちらを覗き込み、先生たちが杖や剣を握り締めて外に出てきた。


「ダナフォルト・・・いったい何を・・・・」

 

 ザワ・・・


「!!」

 上位魔族の魔力に、その場にいた者全員が硬直した。


「なるほどなるほど。やっと気づいたのか」


「ハーネス校長先生・・・?」


「クククククク・・・・まだ、このまま行けると思ったんだけどなぁ。正体ばれたからには、手始めにこいつでも食べておくか」


「!!!」

 ルシファーが隣にいた魔法薬学レイシア先生を見て、手を伸ばそうとした。


 ― ラグナ・ドゥラグ ― 


 バチンッ


 ダナフォルトが雷の弾を放って、ルシファーの指を吹っ飛ばした。

 ルシファーがダナフォルトを見ながら、指を元に戻す。


「強制的に姿を戻されるとは。ベルゼブブが負けるのも無理ないか。あいつは我慢が効かないんだよな」


 ハーネスの体がどんどん変化していき、2メートル以上あるルシファーへと姿を変えていった。

 背中には漆黒の翼があり、妖精や人間を好む、鋭い牙が生えていた。


「ベルゼブブとの戦闘も楽しそうだったな」

「まぁ、人間の皮を被って潜伏してたお前よりは楽しかったよ」」


「そうだな。ハーネスに、亡くなった仲間を重ねようとするお前は、最っっっっっっっっっ高に面白かったよ! ハハ、傑作だったね! 噴き出さずにいられた自分を褒めたいよ」

 両手を広げて高らかに笑う。


「・・・・・・・・」

「いいねぇ、その表情・・・・・」


「しゃべるな。気持ち悪い」

 ダナフォルトが目つきを鋭くする。


「そんなに嫌うなよ。俺は強い人間を食うのが好きだからね。レベル0の雷帝は大好物だ。俺はベルゼブブと違って、ダナフォルトの強さは認めてるんだ」


 ルシファーが腕を組んでダナフォルトを見ながらにやにやしていた。

 ダナフォルトが杖を持ち直して、深呼吸をする。




「そんな・・・ハーネス校長がルシファー・・・? 信じられな・・・」

「悲しむのは後です。今は生徒を安全なところへ避難させましょう」


 レイシア先生が、呆然とした他の先生たちを引っ張り上げて鼓舞した。


「我々はどうしたら・・・」

「これから生徒は一人も死なせない。話し合って決めました。まずは生徒の安全を最優先に」

「そうですね」


 先生たちが素早く校内に入っていき、生徒に学校から離れるよう促していた。


「リハーナ・・・」

「会長、私も師匠様の言う通り、生徒の保護に回るから」

 リハーナが簡易結界を張りながら言う。


「師匠の戦闘を見ていなくていいのかい?」

「師匠様は英雄よ。私がいても、ただ戦闘の邪魔になるだけだから」

 力なく笑って、ダナフォルトのほうを見る。


「師匠様の怒り・・・魔力が刺さってるみたい、痛いほどの・・・」

 リハーナが震える手を隠した。


「リハーナ、西側を頼む」

「わかったわ」

 すぐに前を向いて、クラウドと魔法学校に登校している子たちを、学校外へ誘導していた。

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